空飛ぶ剣士と魔王の子供達

人見守

本編

第1話 プロローグ

 飛んでる!

 空、飛んでる!


「うぉぉぉぉぉぉぉおおおお!マジ飛んでる!俺、空、飛んでるーーーー!!!」


 瞳に飛び込んでくるのは、観たこともない世界。

 高々とそびえる荒く削られたような山々。

 地上に広がる鮮やかな緑一色の森。

 まるで大きな鏡のような湖。

 そして、突き抜けるような蒼さの空。


 天空を舞っていた円城寺空えんじょうじそらは、『初空中体験』に心躍らせていた。

 ソラの真横を見たこともない鳥が一緒に飛ぶ。


 初めての感覚に突き抜けるような爽快感が駆け抜けてゆく。

 初めて新幹線が目の前を通り過ぎるのを見た時とも違う。

 初めて自転車に乗れた時とも違う。

 全てから解放された圧倒的な自由!


「シルファ、これ、めっちゃ楽しいーーー!!!」

「ソラ様!いきなり飛ばし過ぎです!」


 シルファと呼ばれた金髪碧眼の美少女は、猪のモンスター『ボアガ』を切り倒しながら、クルクルと回転しながら、飛び回るソラへと心配の眼差しを向ける。


「はははっ!シルファ、うまいやん!『飛ぶ』と『飛ばす』をかけてんのーーー?」


 ソラはケタケタ笑いながら、自分の右手にある『武器』に目を向けた。


『空剣エアリアル』


 それが、ソラに『飛空能力』を与えている神秘の武器だった。刀剣は透明で、視覚で認識することはできない。そして、この剣には重さという概念も存在しなかった。

 しかし、ソラには、この神秘の武器が放つ朧朧とした蒼き輝きを感じることができた。この蒼き剣が自分の身体の一部に感じられた。


―――この蒼き剣が自分に、力を与えてくれている。重力という鎖を断ち切る力を!


「ヒャッホー!ヒアウィーゴー!」

「ソラ様、風が!」

「へっ?えっーーーーーーー?!うおぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 一陣の風が吹いた。一気に態勢が崩すソラ。試行錯誤、身体を動かすが、真っ逆さまに地上へ落ちていく。シルファは『ボアガ』の突進を避けながら、『魔法』を詠唱する。


「数多の敵よりその身を守れ。『蒼き玉アスラ』!」


 ソラの身体を蒼い光が包み込んだ直後、まるで隕石が落ちたような衝撃とともに地上へ大激突した。


「ソラ様?!ご無事ですか?!」

「・・・いったっっ・・・ヤバ、死んだかも」

「・・・生きてます、ソラ様。防御魔法もかけたので」

「うそ?!死ぬほど痛いんですけど!いっってっーーーー?!?!?!」


 円城寺空、本日、生まれて初めて空を飛ぶ。そして、落ちる。

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