最強勇者は幸せになってはいけないので中二病になった
茶湯
第1話「流☆星☆群!!!」
「天地を創造せしむ神々よ、我にその無上の力を差し出し、この邪悪な竜を滅したまえ!『キングギガフレイムアクア最強ビィイイイイイイム!!!!』」
俺は背筋が凍るほど寒くなる中二病と頭の悪さ全開の魔法名を叫んだ。
黄色の六芒星が俺の足元に現れ、前に伸ばした指先から俺の身長の二倍はあるであろう太さのビームが目の前の竜に向かって発射される。
「ワケノワカラヌコトヲサケビオッテ!!!!」
竜はそれを上空にジャンプすることで回避した。
そしてそのまま首を後ろに引き、その反動を使い俺に向かって突進してくる。歯にはその大きな黒い体躯とは対照的な、白い炎が纏われていた。
「はっはっは!愚かなトカゲ、いやイモリよ!自らの無力さを思い知るといいわ!!『絶対無敵俺セカイイチブレェエエエエエド!!!!』!!!
俺はまた一つ人生の黒歴史を増やしながら、自分の持つ剣の刃を50メートルはあろうかという長さに巨大化させた。
そしてそれを大きく振りかぶり、突進してくる竜を横薙ぎにする。
同時に竜は片方の翼に歯に纏わせたものと同じ炎を纏わせ、その翼を俺の剣に対する盾にした。
「ヨワイニンゲンメ、コンナチカラガワレニツウジルカ!!!」
「調子に乗っているのは貴様の方だ、矮小なイモリよ」
巨大化した剣は、炎など全くないかのように竜の大きな翼を切り裂いた。
しかし竜は自らの翼が斬られていることを瞬時に把握したらしく、その刃が胴体に届く前に俺への突進を断念し、斬られていない方の翼を大きく羽ばたかせ場から離脱する。
そしてそのまま片方の翼を器用に使って上空へと舞い上がった。
「ナカナカヤルナ、ニンゲンヨ。ナラバ、ワレノモツサイジョウノチカラヲモッテ、キサマヲコロス」
「まだその態度を改めないか、ならば仕方ない」
竜の周りの空気が大きく渦巻き始め、辺りの小石もその渦に巻き込まれて竜の方へ吸い寄せられていく。
渾身の力を込めた最上魔法を使うつもりらしかった。
文字通りの「竜巻」だな、と思いつつ俺もその魔法に対する魔法を準備するべく、持っていた剣を地面に突き刺した。
「カクゴヲキメタカニンゲン!シヌマエニワレノチカラヲミレルコトニ、カンシャスルガヨイ!!!」
竜の口から石、氷、火などありとあらゆる物質を混ぜた、大竜巻が俺に向かって発射された。
---「おおっ、すごいな」
俺は一瞬素に戻って、今まで見た魔法で一番強力であろう魔法に素直に賞賛の言葉を送ってしまう。
しまった、聞こえたかな?と自分の失念を軽く後悔し後ろを振り向きかけたが、さすがにそんな暇はなかったので、おとなしく地面に刺した自分の剣に意識を集中させた。
刀身が光り輝き、県が突き刺さった場所から地面がひび割れていく。
「黙れ虫ケラ!貴様ごときの力など蝿と大して変わらぬわ!!!」
剣の光は周囲全体をまるで太陽のように照らし、それと同時に俺はこれから崩壊するであろうメンタルのことを思い、覚悟を決める。そして仮面ライダーの変身ポーズのように二つの手を平行に伸ばして、全身全霊を込めて叫んだ。
『スターダスト・ボルケーノレボリューション流☆星☆群!!!!!!」
地面が避けてマグマが吹き出し、竜を魔法ごと下から焼き払う。それと同時に上空から巨大な流星が竜に向かって降り注いでいく。
「グオォォォォォォォ!!!!!」
竜は成す術なく、何も言葉を発する事もなく、消滅した。
残ったのは荒れ果てた大地と、先ほど行いに悶え苦しみながら、それを後ろの群衆に悟られぬよう毅然と立つ一人の少年のみであった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「勇者様、ありがとうございました。これで我々も平和に暮らす事が出来ます。」
村長は俺に向かって感謝の言葉を送る。
それはそれは心から安心した様な様子で、俺への感謝が気持ちを精一杯こもっているとわかる言葉だった。
ただし、顔は若干引きつっていた。
「「「ありがとう勇者様!」」」
村の子供達も今の戦いを制した俺に感謝の気持ちで一杯の様だった。
ただ、子供達にも先ほどの俺の発言やポーズの寒さは伝わっているのがよくわかる。
子供達は全員口元を押さえ、笑いそうになるのを必死で堪えていた。
五百人級の化け物を退治したにしては全く平和な光景だ。
まあ、犠牲者が出ていないし、俺があまりにも早く倒したせいで、あの竜を倒したという事の大きさがいまいち実感しきれていない、ということなのだろう。
さっきの俺の素の言葉も聞かれていなかったらしいし、この状況は俺が望んでいた理想的な一つの形だ。
今回の討伐は上々の成功と言っていいだろう。
あとは仕上げだけである。
「さて、報酬の話だが・・・」
「は、はい、勇者さま!なんとでもお申し付けください!」
「うむ、
-------私が語る武勇伝を、この村全体に聴かせたい。人を集めろ。」
俺は毎度毎度言わねばならないこの言葉を、赤面するのを必死に堪えながら言ったのだった。
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