reset~命の砂~

福山直木

0.プロローグ

ここに半分が欠けた砂時計がある。

運命計と呼ばれるそれは、人の一生を管理する媒体。


少年の必死な叫びが暗闇の向こうから聞こえてくる。


「やれやれ…禁忌を犯せと言うのですか…」

「こいつ、面白そうだな。聞いてやろうぜ」

「私は知りません。勝手になさい」


誰かの一生を大きく変えてしまう。そんな選択肢を私たちは選ぼうとしている―


私たちはただ行く末を見守り、間違った方向へ向かわせないようにすることしかできない。


それが私たちの役割―


ーーー


僕の名前はひろし。この春から高校生だ。


中学時代から続ける陸上の部活動は順風満帆。卒業前に挑んだ県大会で上位入賞は叶わなかったものの、自己ベストは伸びつつある。

高校生活も新天地での寮暮らしも慣れてきた。そんな、気がかりなどひとつもない僕にも、悩み事はある。


「お兄ちゃんなんて知らない!」


そんな言葉を僕に浴びせたまま、ほぼ音信不通状態の妹がいる。


それは、高校進学を決めた初秋のことだった。

何の前ぶれもなく、約束と違うじゃないかと言い出した。何のことか分からず、機嫌を損ねた理由を追及しようとするものの「そんなことも忘れたのか」と怒鳴られ、火に油を注ぐだけだった。

その後、怒りは収まったものの、ぎくしゃくしたまま春を迎えてしまった。


春からは寮に入ったため、仲直りどころか会話すらまともにしていない。


妹が言う“約束”とは何だったのか。今も思い出せずにいる。

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