PROLOGUE
プロローグ
チームワークについての不安? 全くと言っていいほどありませんね。
ロザリー・ド・エムリコート・ド・グリュンネ
(第506統合
* * *
どこまでも続く、
その上空を、およそ生物らしさのない無機質な飛行体がV字の編隊を組んで移動していた。その数、三十から四十といったところ。
今、その飛行体、ネウロイの群れに四つの小さな
「うわ〜っ! 小型がたくさん!
額に手をかざし、目を細めて
「いや、本体は一機だ。残るは
目を細めて不敵に
「じゃあ、全部
那佳は胸の前に
「……てことは、特別手当もなし?」
『
耳のインカムから流れる、
「言ってみただけですよ、隊長」
那佳の顔から
「百回ぐらい続けて言ってたら、
「手当よりも、基本給が上がればいいのでは?」
と、話に入ってきたのは、ベルギカ貴族の血を引くイザベル・デュ・モンソオ・ド・バーガンデール。中性的な
「ここで撃墜されれば、確実に二階級特進。手取りもグンとアップですよ、故黒田少佐?」
ジョークのセンスも、これまた変わっていた。
「アイザック、そのへんにしておけ。
「……いろんな戦線を転々としてきたが、自分が優等生に思えるのはこの部隊が初めてだな」
アドリアーナがそう
そして、その個性派ウィッチの全員が貴族の出身。
そのため、彼女たちはこう呼ばれた。
ノーブル・ウィッチーズと。
「Bの連中が来る前に片づけるぞ!
ハインリーケが高度を上げるように手で那佳に合図をする。
「確かに。あのマスタードたちに
似た性格のせいか、いつもは何かとハインリーケとぶつかるアドリアーナが
二人が口にしたB部隊とは、マスタードで有名なディジョンに基地を持つ506のB部隊。大西洋の向こう、リベリオンから
本来なら各国を代表するウィッチで構成されるべき統合戦闘航空団。B部隊もハインリーケや黒田たちのA部隊とひとつになるはずだったが、そのメンバーのほとんどが貴族ではなかったため、上層部の一部──はっきり言うと、戦後のガリアにおける
『B部隊が来ても
ロザリーはもう一度呼びかける。
だが。
「ヴィスコンティ大尉とバーガンデール
『あの……』
「はいは〜い、
「了解したぞ、大尉」
「こっちも了解」
『こちらはセダン。
みんなロザリーの声が聞こえない訳でもないし、意地悪で
「黒田中尉はわらわの
『あのね、みんな聞いて欲しいんだけど──』
ロザリーの声は
「あのネウロイたち、もうすぐB部隊の受け持ち空域に入っちゃいますよ。B部隊のみんなに任せちゃえば楽じゃないですか?」
那佳は十時の方角にネウロイの編隊を見下ろしながら、ハインリーケに質問する。
『……お〜い、やっほ〜』
ロザリーは半ば捨て
一方。
「黒田中尉、つまらぬ
ハインリーケから那佳に返ってきたのは、
「だって、もう今月はお給料分働きましたよ」
と、
「よいか、黒田中尉! 我らノーブル・ウィッチーズは給料のために戦っておるのではない! そもそも貴族には古来高貴なる義務が──」
ハインリーケはさらに小言を続けようとしたが──。
「くどいぞ、ウィトゲンシュタイン大尉」
アドリアーナが割って入った。
「く、くどい!? このわらわがくどいと?」
アドリアーナをキッと
「ああ。オリーブオイルを入れ過ぎた
「お二人さん、接触しちゃいますよ、ネウロイ」
イザベルがハインリーケとアドリアーナの注意を引いた。確かに、ネウロイは眼前に
『……あの〜?』
インカムから細く流れるロザリーの声。
「隊長、話は帰ってから聞く! よいな!?」
ようやくハインリーケがロザリーに応えた。──これが応えと呼べるのならの話だが。
『はい』
遠く
「戦闘開始!」
ハインリーケの号令で、ウィッチたちはネウロイに
「お仕事お仕事〜」
那佳がトリガーを
アドリアーナとイザベルは、左右後方から一機ずつ
ここまでは、実に順調な展開である。
だが。
小型飛行銃座は
やがて、ネウロイはひとつの輪のような形になる。
「展開! 奴から
と、
ネウロイは高速回転し、ビームを乱射した。
ビームは那佳たちだけでなく、下方の森にも降り注ぎ、
「やるな。高速回転でコアの位置が分からない」
アドリアーナが下がりながらも不敵な笑みを
「橋が」
イザベルが
「この
ビームを
「先月から、民間の被害は
と、イザベル。
「
「黒田中尉! そやつの
ハインリーケは、援護の那佳を
「鼻打った! 鼻!」
那佳は顔の真ん中を押さえて
「大尉、
あまり高いとは言えない鼻を押さえた邦佳は、涙目でハインリーケに
「ええい! 当たり屋か、そなたは!」
ハインリーケはネウロイの輪の中心に
そして、自らの体を回転させながら、本来なら
「どこがコアか分からぬなら、すべて
「
「あわわわわわわっ!」
「うん。いつも通り」
アドリアーナの声で、急いでネウロイから離れる那佳たち。
* * *
扶桑の
黒田那佳
(506JFWに合流するため、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます