おわかれ
ァノレト【ʌnÓlet】
短くも切ない時間
ずっとずっと影を見ていた。
その影もだんだんと伸びてきて、決めなくてはならない時間になっていた。
公園へと向かう道を歩き出す。
ボクの重い足を動かさせるのは、たったひとつの言葉だった。
「お別れしてきなさい。」
影を見ている間も耳の中で響く言葉を消す方法はなかった。
赤い太陽に背中を見られながら、ゆっくりと歩く。
腕にかかえた箱を見ながら、ゆっくりと歩く。
そんなボクの顔を不思議そうに、ハナちゃんは覗き込んでくる。
ボクは笑いかけることもできずに、ハナちゃんの頭を軽くなでた。
なでられたハナちゃんの嬉しげな顔を見て、ふと鼻を啜る。
次第に暗くなってくると、お互いの顔もわからなくなってしまう。
それまでにはどうにかしなくてはならない。
早足になりつつも、ボクはハナちゃんと一緒に公園へと入った。
既に人気のない公園は、ぼんやりとした外灯の光の世界に包まれかけている。
もう明るかった時間は過ぎてしまった。
学校帰りに公園でハナちゃんと出会った時に今までで一番の高鳴りを感じた胸も、静かだった。
もう離れなければならない。
ボクとハナちゃんは一緒に過ごすことはできない。
喜怒哀楽を表現することがもう今日はできそうにない。
それくらいボクの心は揺さぶられたのだ。
ボクは人目につく場所を選んで、箱を置いた。
ハナちゃんが呼ぶ声を聞かずに、ボクは背を向ける
顔を見ることはできないまま、最後に別れの言葉を告げる。
「ボクよりいい人に出会ってね、バイバイ。」
箱の中のハナちゃんはクゥンと鼻を鳴らした。
おわかれ ァノレト【ʌnÓlet】 @anolet
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