第226話 レイア、キレる 3

 

『時は遡る』


 マッスルインパクトと合流を果たしたレイアは、酒を片手に美酒を堪能していた。両サイドにはガジーとソフィアがハラハラとした様子で落ち着けずにいる。


「どうした? お前達も飲めよ!」

「で、ですが……正直ビビるっす。なぁ、ソフィア?」

「そうですよ! いきなり何の連絡も無く軍曹が来るなんて心の準備があぁ〜〜!」

 いつもの様に狼の鎧も装備しておらず、戦闘の雰囲気を微塵も発していない女神は、容赦なく己の艶かしい肢体を見つめた者達を魅了した。

 ほろ酔い気分で肩口がはだけたワンピース姿に団員達は興奮し、欲望を悟られまいと自然と酒が進む。


「ガジー、あいつとあいつにビンタ。俺の太股を十秒以上エロい目で見やがった」

「イエッサー!」

「「「ーーーーッ⁉︎」」」

『理不尽が全て許される』それでこそ軍曹なのだと教え込まれたガジーは、同じ男として気持ちは分かると一瞬アイコンタクトを送った後に、団員達を全力でビンタした。

(すまない……お前達)

(気にしないで下さい……正直良いもん見れました……)

 漢同士は通じ合い、命令は果たしたとレイアの元に戻ろうと振り返ったガジーを待ち受けていたのは、拳を鳴らすソフィアだ。


「ガジー? その茶番……次は無いわよ?」

「も、勿論分かってる! ん?」

 焦って返事をしつつ、視線を落とした先には副団長の太ももを撫でながら、気持ち良さそうに眠っている美姫の姿があった。


「ねぇ? あんた気付いた?」

「……何の事だ?」

「今の軍曹の様子がおかしい事よ」

「当たり前だろうが。他の団員だって、レベルが高い奴らは既に勘付いてる」

「いつもの肌がひりつく様なプレッシャーが無いわよね」

「あと、ステータスに何か起きてるな。抑え込んでるとは思えない」

 スヤスヤと無防備な姿を晒す女神の銀髪を、ソフィアは恐る恐る撫でた。何かしらの反応を見せるかと思ったのだがーー

「ムニャムニャ……駄目だよビナス〜〜、チビリーの躾用のロウソクはそれじゃないんだよ〜」

 ーー家族の恥を寝言で漏らしてしまう程に爆睡している。


 レイアはステータスを封印された事により、立て続けに起きた出来事や、酷使された身体の疲労から限界を迎えていたのだ。

 見知った顔に会えた安堵と飲酒から、緊張の糸が切れてしまった。


「「…………」」

 マッスルインパクトの幹部二人は、無言のままにぐっすりと眠る身体をお姫様抱っこしてベッドへ運ぶ。見張りにソフィアが残り、ガジーはここまで行動を共にしていたであろうドルビーの元へ向かった。


 __________


「そ、それじゃあ、軍曹は今何の力も持たない唯の女だって事か?」

「あぁ、間違いなく唯の美女だな。……唯のではねぇか」

「その気持ちは分かるが、軍曹は力あってこその軍曹はだ……こりゃあちょっと拙いな」

 顎髭を撫でるドワーフと魔人の二人は、互いに視線を交わすと、これから予想される部下達の非礼に溜息を吐いた。


「既にリベルアのメンバーにも不満を言う者が出てるぞ。このままレイアの態度が変わらねーなら、俺達が組む事は出来ねぇかもな」

「マッスルインパクト全員が動くのは、『仲間の命の危機』、『レイアちゃん人形関係』、『軍曹の命令』という鉄の掟がある。このままじゃ俺達幹部はともかく、新人は離心するかもなぁ」

 ガジーは様々な事柄を懸念しながらも静かに闘志を燃やしている。正直に言ってこれ程自分がレイアの役に立てる機会など、二度と無いと胸を踊らす程に高揚していた。


「昂ぶってるとこ悪いが、お前さんなら何とか出来ねぇか?」

「何とかどころか、さっきの宴の様子じゃ軍曹を舐めた団員達が暴走しかねねぇぞ? 力という強制力を奪ったら、正直俺でさえ魅了されちまいそうになる」

「俺達ドワーフは性欲に疎いから、そういう所は理解出来ん」

「マッスルインパクトは人族、獣人族、魔人の混成だからな。更にこのゼンガ支部のメンバーは一番新しい新人ばかりだ……余計な事を考えなきゃ良いが」

 ソフィアに護衛を任せている限り安心だろうとガジーは不安を振り払ったが、ーー甘かった。


 ーーここは既にドワーフの国ゼンガの城下町、即ち共通の敵の陣地内である事を失念していたのだ。


 __________


「あぁ〜! ちょっと添い寝する位なら良いかしら? でも、起こしちゃったらどうしよう! こんなチャンス二度と無いのに……」

 ソフィアはベッドでスヤスヤと眠るレイアの横顔を凝視しながら、次々と湧く煩悩と戦っていた。だが、頭を抱えて悶えていた様相は瞬時に変貌する。

(やれやれ……最悪の考えの方が当たったわね。ガジーの戻りが遅いのも関係してる?)


 アダマンチウムで作られた騎士剣の柄に手を掛けると、静かに瞼を閉じた。

 ソフィアは『女神式ワークアウト』、別名『三回味わえる地獄』の試練を乗り越えた先で、リミットスキルに目覚めている。


 ーー『倍加』、自らの意志で指定した肉体の部位の重さを、二倍に増加することが出来るのだ。

 触れた物にも反映する為、時に剣を斬撃の最中に重くしてダメージを高め、時に攻撃を食らった際に自らの肉体を重くして反動を抑える事が可能となる。


 ソフィアは元々帝国アロにおいて数本の指に入る程に、剣の腕は達人の域まで研鑽を積んでいた。

 ゆっくりと腰を落として『倍加』を発動すると、自らの筋肉で隆起した二の腕に更に負担をかけて力を溜める。

(来る!)


 ーーヒュッ!

 闇に紛れ、屋根、窓、床下から三方向に及ぶ見えざる敵の同時攻撃を、焦る事なく一閃した。だがーー

(浅い! こいつら……唯の賊じゃ無い!)

 ーー剣撃を見切られて躱された事実に動揺を見せぬまま、再び正眼の構えをとって瞼を開く。


「軍曹に手を出したら……殺す」

「…………」

 黒ずくめの装束に身を纏った六名の敵は、警告と発せられる殺気を受けても退く事なく構えた。

 ソフィアは無言のプレッシャーから額に汗を滲ませ、一瞬だけチラリとレイアを意識した瞬間ーー

(ごめんなさい……ぐ、んそう……でも……)

 ーーグラグラと歪む視界、弛緩する身体の異常に襲われ、心中で詫びる。


 最後の意地を見せるように自らの身体をレイアに覆い被せ、『倍加』を発動させて肉体を盾に時間を稼ごうとしたのだがーー

「う〜〜ん……お、重い〜〜!」

 ーーソフィアが倒れた直後に、圧迫される重さから眠っていた美姫は目を覚ましてしまった。


「あれ、ここ何処だ? んで……お前ら誰よ?」

「…………」

「その格好からして、コヒナタを攫った奴等の関係者だろ? 大方繋がってるっていうギルドに依頼された冒険者か?」

「…………」

 暗殺者達は何も語らず、ナイフを構えてプレッシャーを放っている。


「ん〜? 無口なのは構わないけどさ。お前ら、うちの団員に何してくれてんだよ」

「ぐ、ん、そう、に、げ、て……」

「麻痺かぁ、こんなの避けろよ。ソフィアもまだまだ甘いな」

「…………」

 和らげな視線を向け、レイアは倒れた団員の頭を撫でる。だが、ーー副団長はこの瞬間に絶望した。

 まるで力を失った存在が、自ら自害するのでは無いかと思ってしまったのだ。


「さて、お前らの様子だと……寝てた俺……にも……」

 突如予想通りに視界が歪む。頭が振り子の様に揺れ、レイアはそのままベッドに倒れた。

 ターゲットには念入りに麻痺毒だけではなく、睡眠毒まで含んだ極細の毒矢が首元に刺さっていたのだ。


「任務完了、対象を城まで運ぶぞ」

「了解、GSランク冒険者だって言うから慎重に行動してたのに、なんだこの呆気なさは!」

「……どうやら今はステータスを封じられてるらしいからな」


 ーーゴクリッ!


「じゃ、じゃあ! 一度ホームに連れ帰ってから、送り届けても問題は無いと?」

「ははっ! まぁ皆のストレスの捌け口に丁度いいか……いいだろう。依頼の内容に反してはいないからな」

「そんなお頭に俺達は一生ついていくぜ!」

「急げ、気付かれる前に撤収だ! そっちの騎士はどうする?」

「連れてくに決まってんだろ! 途中、もう一度毒を撃ち込んでおけば問題ない」

「上玉だからな……こっちは用が済んだら売り払うとするか」

 饒舌に語る暗殺者ギルドのメンバーは、意識を失ったレイアとソフィアの身体を抱えると、部屋の窓から飛び去った。

 この事態に気付けた者がいない程の力量に、見合わぬ下卑た欲望を曝け出したままに……


 __________


「さて、どうする気だレイア?」

『封印の間』とは違う意識の深層で、レイアは自らの闇と向き合うと決め、求めていた声を聞く。

「漸く会えたか……それじゃあ早速お前の力を寄越せ。ステータスで確認した通り、俺の今の状態は十柱の神の封印に何ら影響を与えてないんだろ?」

 無数の鎖に縛られた男は、呆れた表情のまま言葉を続けた。


「当たり前だ馬鹿が。あんな小細工で『闇夜一世』が封じられるなら、俺はこんなとこにいねぇ」

「核である、おっさんの意見を聞かせてくれよ。今の俺のステータスでスキルを操れるのか?」

「はははっ! 俺が初めて世界を喰らった時は唯の飲食店の店長だったぞ? これが答えにはならねぇかな?」

「やっぱり、ステータスはこのスキルに関係ないんだな」

「でなきゃ、俺はこんなとこにいねぇよ……」

 レイアは先程と同じ台詞を吐きながら、哀しげに俯いた男を見つめて思案する。


「うん、やっぱり今はお前の事なんてどうでもいい! さっさと力の操り方を教えろや!」

「…………お前、本当にいい性格してるな」

 奈々の気持ちが痛い程に理解出来た夫は、苦笑いして己の分身とも言うべき美姫の言葉を受け止めた。


「女神様が言うには、おっさんは沢山の世界を喰って消滅させたから罰を受けてんだろ? 大人しく反省しろ! 俺はコヒナタを、ーー嫁さんを救うんじゃい!」

「たかが盗賊とも変わらねぇ、暗殺者の雑魚如きに後れをとるお前が本当に救えんのか?」

 仄暗い双眸を下方向から挑発混じりに向ける男へ、レイアはあっけらかんと宣言する。


「む、り、だ!!」

「はぁっ⁉︎」

「ステータスもスキルも封じられて、大口叩ける訳が無いだろ! だから戦える力を貸せこの野郎!」

「くっ! あはははははっははあはははははははははっはははははははははははは!」

 突然大爆笑する男に向けて、レイアは土下座した。


「嫁達に頼んでこの事態を解決するのは簡単かもしれない。でも……許せない奴がいる」

「あぁ……しっかり伝わってるさ。お前が土下座すると、自分がしてるみたいで怒りが爆発しそうだ」

「なら最初に願った時に出て来ればいいだろうが!」

「俺をお助けマン扱いすんじゃねぇよ! どんだけの封印されてると思ってんだこの野郎!」

「……でも、イザヨイの時はすぐ出てきたじゃん!」


 ーー男は愉快そうに、自慢しながら答えた。


「あれは奈々の力があったからだ。お前は気づいて無いかもしれんが、俺の嫁は死んでからも凄かったんだぞ」

「それは重々承知してるっつーの! 俺がどれだけ助けられてると思ってんだ! 酷い目にもあってるけどな!」

「……本題に入るか」

「……うん」

 互いに思い出したく無い嫁の記憶が過ぎった二人は、その後喧嘩をする事も無く話を進めた。


「お前と俺の感覚は一方的にリンクしてるんだ。それを理解してみろ」

「普段は俺からおっさんに流れてるとイメージして、逆に掴めばいいって事?」

「『女神の神体』を持ってないお前に神の封印は解除出来ねぇ。掴めても些細なもんだろうがな」

「良いさ、あとは実戦で試すわ!」

「あぁ、いい鴨がいるしな……」

「おっ? 分かってくれる? さすが俺の核だな!」

 核の表情が変貌する様を見つめながら、レイアは舌舐めずりする。

 怒りが限界に達しようとしていた二人は、欲望に塗れた男達に向けられた視線に苛まれ、這いずる悪寒からーー遂にキレたのだ。


 ___________


「ひゃははははっ! こんな上玉を抱ける機会なんて一生に一度しかねぇぜ」

「おい、見ろよこの肌!」

「やべえ……我慢出来ね〜!」

「こいつは元々GSランク冒険者らしいが、今は唯の女同然にステータスを封じられてるらしいぜ!」

「……首を絞めて、足掻き狂う姿が見てぇ」

「壊してもいいが、殺すなって頭の命令だ。それだけ守れば明日昼迄は好きにしていいってよ〜〜!」

「もう一人の女の方は既に始まってるってさ!」

「麻痺で動けねぇ女を抱いてもつまらねぇと思ってたが、今回はやべぇな〜〜!」


 鬱陶しく、煩わしい声と共に耳へ情報が流れ込む。

 あぁ、やっぱり俺と核が抱いた感情は間違ってなかった。

 それにソフィアがどうやら拙い状況らしいな。敵のアジトか、逆に好都合だ。

 喰らってやろう。狂ってやろう。下衆を殺せ。愚か者を消滅させろ。

 俺の幸せを壊す存在に、死を与えてやろう。


「……喰らえ」

 ぼんやりとした視界の中、右手から生えた黒手が俺の肩口に齧り付き、体内の毒のみを消滅させる。

「さて、おはよう。お前達に五秒だけ時間をあげるから、ソフィアのいる場所を吐け」

「「「「「ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははぁっ!!」」」」」

「ひ、ひっく、お前何言ってんだ? 自分の置かれた状況がわかっーー」


 ーーバクンッ!


「えっ?」

「ーーっ⁉︎」

「ひ、ひぃい⁉︎」

「な、何が起こった⁉︎」

 今の俺には何のオーラも無い、威圧感も無い、華奢な右腕を何もない空中へ伸ばしただけだ。

 だが、会話の最中に言葉を途切れせた男の頭部は、ーー首を残して消滅した。

「これが操るってことね……」

 ーー確信する。今の俺には右手と左手から一本ずつしか『全てを喰らう黒手』を出せない。

 ただ、以前の様に神々の封印を引き千切り暴走させるのでは無く、『操っている』感覚が確かにある。


「なぁ……あと一秒だぞ?」

「「「ひ、ひいいいいいっ!!」」」

 一斉に逃げ出そうとした男達の足首から下を、右の黒手が凄まじい速さで喰った。血を浴びたく無いと念じた直後、左の黒手がカーテンの様な膜を張り敵の傷口を塞ぎ、消失させる。


 ーーウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーッ!!


「うるせぇ……少し黙れ」

 右手の人差し指を立てると、最も騒いでいる男の喉元を瞬時に伸びた黒爪で貫いた。

「か、ひゃ、ふくふっ」

「喉もどうせ喰ったから喋れはしねぇよ……死ね」

 冷酷に、冷淡に、冷静に告げた死の宣告を聞いた直後に男は力尽き、他のメンバー達は戦慄し、表情を凍り付かせる。

 だが、俺はもう止まれなかった。


「何でだよ! お前は封印されたって聞いたぞ!」

「ふざけんなクソアマがああああああああああああーー!」

「殺してやる! 絶対にこの報いは受けさせてやるぞ!」

「四肢を切り落として、泣き叫びながら許しを請え!」


「はい、タイムアウトだねぇ〜〜? あっちに隠れてる一人を残して喰らえ」

 ーー左右から伸びた黒手は、躊躇いなく男達の顔面を削ぎ取った。きっと最後の記憶は、微笑み浮かべながら手を振る俺の姿だろう。


「良かったね? お前達はまだいい方だ……」


 __________


「いや、や、めて、て」

 麻痺から舌の呂律が回らず、服を破かれて霰もない姿になったソフィアを、男達の舐め回す様な視線が囲む。

 己を唯の性の捌け口としか見ていない感情の圧迫は、マッスルインパクト内でのし上がった副団長の誇りを容易に打ち砕いた。


「た、すけ、て……」

「ごめん、待たせたな」

「「「「ーーーーッ⁉︎」」」」

 ソフィアの耳に朧げながら聞き覚えのある声が届いた直後、賊達の背筋に悪寒が迸る。お楽しみの最中に邪魔が入らない様に、堅牢な扉に錠はした筈だーー

 ーーならば、何故こいつがいる?

「驚いてるみたいだが、もうお前らが理由を気にする必要は無いよ」

 笑顔で手を振っているターゲットの言葉を聞いた直後に、暗殺者ギルドのメンバーは理解してしまった。

(俺達は……失敗したんだな……)


「ソフィア、命令だ。俺が『いい』と言うまで、絶対に瞼を開けずにそのまま閉じていろ。少し痛いかもしれないが、一時的に聴覚も奪わせてもらう」

「い、イエッサー!」

 例えるならば、蛇が耳から侵入する様な奇妙な感覚に苛まれたが、ソフィアは無言を貫いて目を瞑り地面に丸まっていた。


 ーー「良い子だね」

 和らげな言葉を最後に、牢から敵の気配は消え失せる。

(何? 一体何が起こってるの?)

 両手から伸びた黒手が、敵を喰らう。魔術を喰らう。無機物を喰らう。

「お前らが、コヒナタを攫う手助けをしたんだろう?」


「ぎゃああああああああああっ!」

「やめて、もうやめてくれえぇ」

「俺は何も知らねええええええええ!」

「俺たちは命令されただけだあぁっ!」

 断末魔が轟く中で、微笑みを浮かべた女神はゆっくりと歩きながら全てを喰らう。


 スプラッタのさながらに血が噴き出す事もない。まるで元から存在しなかったかの様に、再生不可能だと瞬時に敵に理解させた。あっさりと消失する四肢が余計に恐怖を増長させる。

「やり過ぎだ! 俺達はとっくに降参して依頼主も吐いただろうがあぁぁぁぁっ!」

「えっ? そうだっけかぁ?」

「依頼主はドルビーだ! あいつはリベルアにのリーダーだが、ネイスット神官の子飼いなんだよぉおおおおおおおーー!」

「ほうほう、なるほど!」

「わ、分かってくれたか⁉︎」

「うんうん、だからってお前らの罪は消えないだろ?」

「ーーーーッ⁉︎」

「お前で最後だから、安心して死ね」


 ーーバクンッ!


 _________


「もういいよ、帰ろっか。悪いんだけど疲れたから背負ってくれる? 俺のステータスの事は察しがついてるんだろう?」

「…………」

 ソフィアは口を開けず、無言のままレイアを背負う。方向もわからないが、まずはこの場所を離れたかったのだ。

(軍曹を舐めていた……反省しなきゃ)

 勝手に守らなければならないと決意していた。そんな想いすら不要なのだと思わせる出来事に、心底恐怖する。

「ねぇ、怖がらないでくれよ。今の俺はただの『か弱い』女なんだからさ」

 レイアは皮肉混じりに耳元で呟くと、怯える副団長の頭を優しく撫でた。

 こうしてドワーフの国攻略の障害の一つ、『ギルド』は完全に沈黙する事になる。


 ーー無力化されたレイアは新たな力を手に入れ、着実に復讐への力を磨き上げていた。

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