第95話 カルバン冒険者ギルドにて
「「いやぁぁぁぁぁぁあ!!」」
ビナスとメムルの絶叫が家中に響き渡る。
「な、何なのさ! 二人ともどうしたの⁉︎」
「マスター、御自分の姿を鏡で見た方が分かりやすいかと……」
俺はナナに即され風呂場に走ると、鏡を見て溢れる涙を流した。
「おっさん……帰って来てくれたんだね! 俺、おっさんが居なくなってから寂しくてさ……また会えて嬉しいよ! って、何で鏡におっさんが? あれ?」
「マスター、一人芝居みたいになってますよ。それが『幻華水晶の仮面』の変身能力です。御自分の胸を触って見て下さい」
ナビナナの言う通りに自分で胸を揉みしだく。我ながら柔らかいぜ。
「いつもの胸だな。柔らかいだけで、筋肉なぞカケラもありゃしないね」
「触られない限り、どんな眼やスキルを持ってしても見破れません。マスターが『女神の眼』で鏡を見ても変わらないでしょう」
「確かに自分の姿はそのまま見えるのに、鏡を通して見ると懐かしいおっさんにしか見えないな。触られなければバレない、か……」
直後、俺は新しい玩具を見つけた子供の様に無邪気に笑う。急いでリビングに戻ると、困惑している二人に一旦仮面を外して、事情を説明した。
納得してもらう為に二人にも仮面を着けてもらうと、ビナスはミナリスに、メムルはマムルにそれぞれ変わり驚いている。
メムルが双子に変わった所で俺達からは変化が感じられず、驚いているのは本人だけだったけど。
「はぁ〜凄いアイテムを手に入れたねぇ。旦那様」
「こんなアイテムがあるなんて、噂ですら聞いた事がありません。情報だけでも大儲け出来ますよ?」
「ふっふっふー! もう使い道は考えてあるんだ! 『魔竜の巣穴』ってダンジョンをクリアするのに、俺はもう一人の俺。即ち『アズオッサン』として活動するのだ!」
俺は胸を張り自信満々に宣言する。対してメイド姿のビナスとメムルは首を傾げてつつ質問をしてきた。
「わざわざ変身する意味は?」
「面白そうだからだ!」
「冒険者プレートは如何するのですか?」
「実力行使でギルド以外にはバレないダミーを作らせる! ギルマスにバレるのは元々しょうがないからね。クルフィオラとヨナハ村の魔獣狩りの換金で、どうしても事情は話さなきゃだろ?」
どこのギルドだろうが、実力さえ見せればある程度の優遇はしてくれるだろうしね。
「成る程。Sランク以上の冒険者は普段素性を隠す為にダミープレートを貰えると聞いた事があります。有名になるのはいい事ばかりではありませんから」
「でも旦那様、本気であのむさ苦しかった頃のアズラの姿でいくの? ディーナとかでもいいんじゃない?」
「たまにはね……男として生きたいんだよ……あと敬われ、崇め奉られる事なく気軽に冒険者がしたい」
遠い憧憬を見つめている俺の様子を見て、二人は苦笑いしていた。
(確かに女神にも休息は必要かもね)
「私も魔王の仕事が面倒くさい時はよく変装してシュバンに逃げていたしね。少しは気持ちもわかるかな」
ビナスからさらっと告げられた事実を受けて、メムルは突然目を丸くして立ち上がった。
「ビナス様……今なんて言いました? 私の耳がおかしく無ければ、魔王って聞こえたんですが……」
「あぁ、言ったぞ? なんか文句あるかこの泥棒メイド!」
俺はそういえば詳しい事情を話してなかったと思い出し、メムルに説明する。
「まだ言ってなかったね。俺が女神なのと同じ様に、ビナスは元魔王なんだよ。レグルスの先代魔王って言えば分かりやすい?」
「はぁ〜〜っ⁉︎ ビナスってご主人様の愛人か何かじゃなかったんですか? そりゃあ凄まじい魔力をもっているし、封印されているから何かしら事情があるとは思っていましたが、魔王っていったら超有名人ですよ? 私だって顔くらい知ってます! でも、綺麗な男の方だったとしか……あれ? 女、男?」
口調が乱れる位に動揺している様子のメムルはどこか可愛かった。
「俺の『一部身体変化』のスキルを教えてくれた人から、ビナスも『身体変化』を教えてもらってるんだよ」
「ふんっ。見せてやりたい所だが、旦那様の前では二度と男にはならんと決めておるからやらんぞ! この淫乱メイド!」
「はぁっ……つくづくご主人様の周りには、凄い人が集まるのですねぇ」
(こんな事くらいで驚いてたら、ディーナやコヒナタや天使を見たら、一体どうなることやら)
遠くない未来、俺はメムルは気絶するだろうと予測して軽くため息を吐いた。
「とりあえず、今日はもう遅いから明日今まで通りの皮装備とボロローブでギルドに向かおう。メムルがいれば話くらいは聞いてもらえるよね? この仮面のお陰で計画が前倒し出来る」
「はい。既に手紙で話は通してありますから、ギルマスに会うまではスムーズに進むと思いますよ。そこからはご主人様に任せます」
「考えがあるから任せて。まぁ、その前にSランク魔獣を見てくれれば納得してくれると思うけどね。さ、今日はみんな寝よう! 明日は朝から忙しくなるよ!」
「ラジャー!」
「はい、おやすみなさいませ」
俺はいつも通りベッドに横になるが、楽しみながら興奮してなかなか寝付けないでいた。
それを敏感に感じ取ったビナスに思う存分絞りつくされる事になったが、おかげでぐっすり眠ることが出来たし、気持ちよかったのは言うまでもない。
__________
翌朝朝食を食べると、俺達はそのままカルバン冒険者ギルドへと向かう。変な連中に絡まれないよう、一層フードを深く被っていた。
ーーしかし、それは無駄な努力として終わる。扉を開けて中に入ると、ギルド中の冒険者が騒然としだしたからだ。
「一体なに……まさかもう俺の正体がバレてるの?」
「いや、違う見たいだよ旦那様。みんな泥棒メイドの話をしてる」
「私には心当たりが無いんですが……」
俺は疑問に思いながらも胸を張り、堂々と受付に向かって歩き出した。
冒険者たちは邪魔する事なく黙って道を開いていく。どうやらメムルに対して脅えているようだったが、理由が本人にさえわかっていなかった。
「おはようジェーン。この騒ぎは一体何かしら? 手紙の件で来たのだけれど、ギルマスはもう上にいる?」
「おはようっす、メムルさん。自分にもよくわからないっすけど、どうやらメムルさんがとんでもない魔獣をテイムしたって、冒険者や兵士の中で噂になってるみたいっすよ。仲間も魔獣に食わせたとかいう噂になってるっすね。いつからそんな怖い女になっちゃったんすか? そのメイド服に呪いでもあるんすか?」
ジェーンと呼ばれたメムルと同じ年くらいに見える受付嬢は、カラカラと笑いつつこちらをからかっているのが丸分かりだった。
綺麗な人だけど、なんか口調といい残念な感じだ。
「やっぱこうなったか……だから嫌だったのよ。これも全部ご主人様のせいだ」
メムルは深いため息を吐きながら、しょうがないと顔を上げて俺達に向かって手招きした。
「話はついたの?」
「それは後で説明しますが、ギルマスに会ったら誤解を解いてくださいよ。どうやらシルバの飼い主が私だと思われてるんですから……」
「まじかっ! それでこんなに煩かったわけだ。ギルマスには俺から事情を説明する」
俺がごめんっと両手を合わせて謝っている所へ、ジェーンが受付越しに身を乗り出して来た。
「メムルさん、この人誰っすか? 紹介してくださいよ!」
「後々ね。どうせギルマスとの立ち合いに貴女もついて来るんでしょうし」
「バレてたんすねぇ。こんな面白そうな事、見過ごしてらんないっすよ! それじゃあ行きましょうか」
ジェーンは気怠そうに欠伸をしながら椅子から立ち上がり、二階への扉の鍵を開ける。分不相応な輩が勝手にギルマスに会えないよう、簡易結界が扉には張られていた。
ジェーンについて上の階へと上がると、廊下の先に見えた木製の扉は思ったより質素な作りになっている。
俺は結界なんて張るくらいだからもっと高飛車な奴が出てくるんだろうと警戒したが、これなら大丈夫そうだと安心した。
「マイルビルさ~ん。お客様をお連れしましたっす。入るっすよ~?」
「開いとるのわかっとるじゃろうが、勝手に入らんかい」
扉を開けるとそこには『いつ死んでもおかしくないんじゃない?』と、そう思わせる見るからに弱々しい白髪の髭を生やしたお爺さんがいた。
恰好もギルマスというより、家でお茶をすすっている紺のローブを着た唯の老人にしか見えない。
「初めましてじゃなぁ。儂がこのカルバン冒険者ギルドのギルドマスター、マイルビルじゃよ」
「どうも始めまして、紅姫レイアと申します。レイアで構わないです。こっちはビナス、俺の恋人です」
「フードを取ってもらって構わんじゃろうか?」
俺は一礼した後に頷くと、ローブ事脱いでボロい皮鎧姿になる。ビナスは変わらずメイド服だ。
「偽装ですといわんばかりに手を抜いた装備じゃのう。ある程度の実力者なら、そんな装備をしててもすぐに見抜くぞい? よくこれまでばれんかったのう」
マイルビルの言葉を聞いて、メムルは額から汗を流している。
きっとヨナハ村で俺達を見た時に、本当の実力があるなんて思いもしなかったんだろうね。ギルマスから未熟さを責められていると感じているようだった。
「正直バレても蹴散らせばいいと今までは思ってきたんだど、ビナスが『聖女の嘆き』で呪われてる状態だから何かあったら拙いでしょ? できるだけ目立ちたくはないんだよ」
「成る程のう。これは面倒くさい封印が施されておるな。一流の治癒術師や呪術師が一体何人いれば解除する事ができるやら、見当もつかんのう」
ギルマスは一目見ただけで呪いの深さまで見抜いているみたいだ。伊達に歳食っちゃいないか。
「今日はその話も相まってここへ来たんだ。逸れた仲間達に俺達の居場所を知らせる為に、早い所S級冒険者になって名前を広めたい」
「……ふむ」
「だけど、目立つ訳にはいかないから隠れてやるつもりなんだ。昨日いいアイテムを手に入れてね! 別人として行動したいから爺、ダミープレートをおくれ?」
「お主……人にものを頼む態度じゃ無いのう。『礼儀』って言葉を生まれてからどっかに落っことしてきておるじゃろ?」
爺のこめかみに青筋が浮かんでいる。真摯にお願いしたつもりなんだが、やはり年寄りの扱いは難しいなぁ。
「いいじゃないか。ちゃんとお礼もあるんだよ。ちょっとグロいけど、ここで出していい?」
「ほう? 『
ギルマスの命令だと言うのに、ジェーンと呼ばれた受付嬢は物凄く嫌そうな顔をしていた。
「え~自分グロいのあんま得意じゃないんすよ〜。最近人使い荒くないっすか? セクハラする元気がないからって、今度はパワハラっすか? 職権乱用って知ってます?」
「仕事をせい! あと誤解を招くようなことをいうでないわ! 寿命が縮まるじゃろうが!!」
俺は『これはこれで面白い漫才のようだ』と二人のやりとりを眺めていた。止めはしません、絶対に。
「んじゃ、出すよ~? 『夢幻の森』のボスで、『クルフィオラ』とかいう妖精もどきの頭部だ」
「「んなあああああああああああーーッ⁉︎!」」
俺がワールドポケットからクルフィオラの頭部を床に置くと、マイルビルもジェーンも顎が外れそうな位、愕然としだした。
良い反応ご馳走さまです。
「『夢幻の森』のダンジョンがクリアされたのに誰も名乗りを上げないと噂になっておったが、お主がそうじゃったんか⁉︎ 一体どうやって、あの無数の人食い妖精どもを全滅させたんじゃ?」
俺は無意識に遠い目をして、悲痛な表情を浮かべる。
ヤンデレナナの『インフィニットプリズン』によるものがほとんどだが、そのせいで自分がえらい目にあった事は記憶に新しい。
勝手にブルブルと身体が震えた。
「どうやら身体が震えるくらいの死闘だったんじゃのう。しかし、凄まじい力じゃ! メムルからの手紙を読んだ時は正直眉唾だと思っておったが改めよう。すまんかったな」
「うえぇぇ~。グロイっすよ~。これガチな奴じゃないっすかぁ~! 自分虫嫌いなんすよ~! 爺、まじパワハラきついっすわ~!」
鼻を摘んで心底気持ち悪そうにしている受付嬢の暴走は止まらない。本当に残念な人だわ。
「ジェーン。今、儂真面目な話しとるから黙っとれ……後で肉食わせてやるから黙っとれ」
「こんなグロいの見た後に肉食わせるとか、どんだけドSなんすか? 私が可愛くて虐めたいからって、歳考えた方がいいっすよ~!」
この瞬間俺は確実に理解した。とりあえず胸に抱いていた『ギルドの綺麗な受付嬢のお姉さんと仲良くなる』って夢は、粉々に砕けたのだ。
「とりあえず『夢幻の森』ダンジョンクリアにボス討伐。あと討伐個所はないっすけど、妖精が綺麗さっぱり消えている事から判断すれば、合わせて純金貨二百四十枚っすね」
「振り分けは?」
「ボスがSランク魔獣なんですけど、実力が知られていなかった存在なので懸賞金が掛かって無いから純金貨百枚。Bランクダンジョンクリアで純金貨百枚。後は妖精は数百匹いたはずっすから、それを殲滅したと功績から純金貨四十枚っす。討伐部位がしっかりあれば、あと二、三十枚は上乗せされたっすよ」
ジェーンは勿体ないと言った顔をしているが、俺はいやいやと掌を仰いだ。
「あの数の盗伐部位をもって来る面倒くささを考えれば、それくらいでいいや。報酬はすぐに貰えるの? あとプレートのポイントはどれくらいつく?」
「Sランク魔獣討伐は全て五万ポイントが付くっす。あとBランクダンジョンクリアで十万ポイント。妖精は正確な討伐数がわからないので今回報酬は出しますが、ポイントとしては無効っすね」
「おぉ! ダンジョンクリアのポイントってそんなに貰えるの?」
予想外の情報を聞いて俺は瞳を輝かせた。多分、シュバンで説明を受けた時は、俺がダンジョンクリアなんてまだまだ先だと思われたんだろうね。
「ダンジョンのランクをクリアするとそのランクに上がる為に必要なポイントの二倍のポイントが付くっすよ! 今回はBランクダンジョンなので二倍で十万ポイントっすね」
「ついでに教えて欲しいんだけど、AランクになったらSランクになるのにポイントは要らないって言われたんだ。それじゃあ、余ったポイントは如何なるの?」
無駄になるならそれ以上の努力はしません。みんなといちゃいちゃしながらスローライフもありだ。
「Sランクから上は実力主義の世界っすからね。余ったポイントはお金に換金できるっす。まずはAランクになる分の二十万ポイントが溜まったら教えてあげるっすよ!」
「ん? 今のでもう溜まったぞ。だから教えて?」
「えっ? ご主人様、一体何を……?」
メムルとジェーンが呆けており、ギルマスも唖然としながら口を開く。
「お主Dランクじゃろう? 一体どういうことじゃ?」
「だからさぁ〜、三回目の報酬を今受け取って、ポイントをつけて貰えば二十万ポイント溜まったって事だよ!」
「さ、三回目? たったクエスト三回受けただけで二十万ポイント溜めちゃったんすか?」
「うん。何か変なの?」
「……化け物っすよ。最速とかそんなレベルの話じゃないっす。勝てるかな自分……」
「ジェーンよ仕方なかろう、お主が自ら言い出した事じゃ。試験の相手をするとな」
マイルビルの告白を聞いて、俺達は驚きつつ一斉に受付嬢を凝視した。
「そんなに見られると照れるっすよ〜?」
「つまりジェーンさんのランクって……」
「Sランクっすね! 自分に勝つか引き分ければ晴れてSランクの仲間入りっすよ。そっから上は自分もまだ未知っすけどね」
俺の隣に控えていたメムルは一歩前に進み出た。とても信じられ無いといった表情で、ジェーンを問いただし始める。
「ジェーンがSランク⁉︎ 前に戦えないから受付嬢になったって言ってたじゃない!」
「嘘っすよ!」
「病気の弟の為に自分が頑張るんだって泣いてたじゃない!」
「嘘っすよ!!」
「好きな人が出来て最近人生が楽しいって……生きてて幸せだって笑ってたじゃない!」
「嘘っすよ!!!」
「最近アブノーマルもいいかもしれないって……手錠と鞭を買ってしまったって悩んでたじゃない!」
「……う、嘘っすよ?」
ジェーンは最後の質問だけ吃り、何故か滝の様に汗を掻いている。
ーーその場の全員が、可哀想な者を見る憐れみの視線を送った。
「一つ以外嘘だったのね? 私、もう怒ったわよ!」
「ぜ、全部嘘っすからね⁉︎ メムルさんにも資格は一応ありますが、やめといた方がいいっすよ」
「あまり魔術師を舐めないでよね」
メムルの身体から魔力が漏れ出し、部屋に冷気が広まっていく。ギルマスはすかさず間に割り込んだ。俺とビナスは面白そうなので事の成り行きを見守っている。
「やめんか! 戦うなら訓練場を使え馬鹿者! 念の為に貸し切ってあるわい」
「そうだよメムル。部屋で暴れちゃダメ。修理費用とか爺の治療代とか言われたら面倒くさいからね」
俺は説得しただけなのに、ギルマスは鬼の様な形相でガンを飛ばしてくる。何か失礼な事を言っただろうか。
「も、申し訳ありません。興奮して恥ずかしい真似をしてしまいました」
「いいけど、ジェーンさんの挑発に乗っちゃダメ。良いもの貸してあげるから訓練場で叩きのめしちゃえ!」
「はい!」
「……何をする気か知らないっすけど、自分も本気出すっすからね。下手すると怪我じゃ済まないっすよ」
「大丈夫。ご主人様がこう言ってくださるならば、私に負けは御座いません」
メムルは冷静になり、メイドとしての矜持を思い出したみたいだ。
部屋を出ると、俺達はギルドの裏に備え付けられた訓練場に向かった。歩きながらメムルの為に敵の戦力を測ろうと『女神の眼』を発動するが、何故かステータスが見えない。
「レイアさ〜ん。もしかして今自分に『鑑定』か『真贋』使ってステータス見ようとしなかったっすか? 残念ながらSランク以上の冒険者のプレートには阻害機能がついてるんすよ。残念っすね〜?」
「へぇ、それはいい事が聞けたよ。貰うのが少しだけ楽しみになったかな」
「その余裕なんて、すぐに消してやるっすよ」
「無理だよ。お前は俺とやる前にメムルに負けるし」
ジェーンは飄々とした態度だが、目は至って真剣そのものだ。俺を挑発するのも、何か情報を得たいのかもね。無駄だけど。
「ムカッチーン! 今のは中々っすね〜。その台詞、絶対に後で恥ずかしがらせてやるっす!」
俺は正直脳内では全然別の事を考えていた。これで、あのピエロ仮面の男はSランク以上の冒険者でほぼ間違いない、と。
胸中には今もディーナやコヒナタと引き離された怒りの炎が、絶えずに燃え盛っている。
ーー漸く手掛かりを掴んだぞ。
「絶対に見つけ出して殺してやる……」
俺からほんの一瞬だけ漏れ出た殺気を感じたのはジェーンとビナスのみ。中々鋭いと小煩い女の評価を上げた。
ご褒美として、本当に規格外な存在ってものを骨身に教え込んでやろう。
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