第44話 「悪意は突然襲いかかる」

 

「それでは、これが今回のクエストの報酬となります。本来はこんな反則みたいなやり方、認められないんですからね!」

 メリーダが若干怒っていたが、狩りまくったモルモ、モルモンの素材も焼かれてダメになったもの以外は買い取って貰えて、計金貨九十四枚、銀貨七十八枚となった。


 一日の稼ぎとしてはかなりのものだ。更にギルドポイントが2484ポイント入り、早々にDランクへと最速記録を叩き出して昇格する。


 酒場ではアズラが他の冒険者達と酒を飲み交わしているが、女性陣は疲れたので早々に宿へ戻っていた。きっとこの場に残ってしまったら、厄介ごとに巻き込まれるという予感がしたのだ。


「ナナ、ステータスを頼む。今の内に更新と確認を」

「了解しました」


 __________



【名前】

 紅姫 レイア

【年齢】

 17歳

【職業】

 女神

【レベル】

 59

【ステータス】

 HP 2743

 MP 2360(2560)

 力 5310(10620)

 体力 1282

 知力 1386(1686)

 精神力 1115

 器用さ 1243

 運 75/100


 残りSTポイント5700


【スキル】

 女神の眼Lv8

 女神の腕Lv3

 女神の翼Lv5

 ナナLv7

 狩人の鼻Lv4

 身体強化Lv6

 念話Lv1


【リミットスキル】

 限界突破

 女神の微笑み

 セーブセーフ

 天使召喚

 闇夜一世(現在使用不可)

 女神の騎士

 ゾーン

 剣王の覇気

 黒炎球

 心眼

 幸運と不幸の天秤

 一部身体変化

 聖絶


【魔法】

 フレイム、フレイムウォール、シンフレイム

 アクア

 ヒール、ヒールアス

 ワールドポケット


【称号補正】

「騙されたボール」知力-10

「1人ツッコミ」精神力+5

「泣き虫」精神力+10体力-5

「失った相棒」HP-50

「耐え忍ぶと書いて忍耐」体力+15精神力+10

「食いしん坊」力+10体力+10

「欲望の敗北者」精神力-20

「狙われた幼女」知力-10精神力-20

「慈愛の女神」全ステータス+50

「剣術のライバル」力、体力+20

「竜を喰らいし者」HP+500 力、体力+100

「奪われ続けた唇」知力、精神−50

「力を極める者」力+100 知力-50

「悪魔の所業」運−5


【装備】

「深淵の魔剣」ランクS

「朱雀の神剣」ランクS

「深淵の女王のネックレス」ランクB

「名も無き剣豪のガントレット」ランクA 力2倍

「フェンリルの胸当て」ランクS

「ヴァルキリースカート」ランクB

「生命の指輪」ランクS

「黒炎の髪飾り」ランクB MP+200 知力+300


 __________



「やっぱり凄い嫌な称号ついてた……ナナ、気になったんだけど、リミットスキルの『幸福と不幸の天秤』ってどんなスキルなんだ?」

「はい。善行と悪行により運が傾くスキルです。さらに称号が付きやすくなり、善行にはいい補正、悪行には悪い補正が付きます。今回は敵を倒した事よりも、倒し方に問題があったのだと推測致します。運の最大値は100で、0になりますと中々大変な事柄が起こりますからお気をつけください」


「そんなスキル欲しくなかったかな……」

「そういえば、結局『聖絶』を覚えて『結界』の消失を選んだ理由をお聞かせ頂けますか?」


「『結界』事態に需要が無くなって来たからだよ。以前と違い遠距離攻撃も手に入れたし、自慢の双剣で大抵のモノは切れるしね。何より『結界』を張っている最中攻撃も回復も出来ないという制約は、今後強者との戦いで隙を生む。『聖絶』もディーナに習いながら、少しずつ継続時間を延ばすつもりだよ」


「成る程。そう言えば主人格から伝言があります。『あと数日よ?』だそうです」

「うん……それに対しては手を打ってある。まだ命は失いたくないからね」

 俺はやはり忘れていなかったかと溜息を吐いた。天使との聖戦が近い。

 ステータスの確認を終えると、女将さんにお願いして冒険者登録と初クエスト完了のお祝いをする事にした。

 また、新しい仲間であるコヒナタの歓迎会も含めている。


 テーブルにはいつもより豪華な食事が並び、女性陣だけならいいかと、女将さんも交えてワインを嗜んでいた。


「はああああああ〜〜! 幸せぇ〜!」

 身体中に染み渡るアルコールの美味さに思わず甘い吐息が溢れる。みんなも同様に頷くが、コヒナタは既に顔を真っ赤にしていた。

 頬にリンゴがくっついてるみたいで可愛い。


 念願の酒。何だかんだで飲めなかった酒が飲める。こちらの世界では十五歳が成人の為、法律的にも何も問題はなかった。

 その後、最初にコヒナタが潰れ、ディーナが満腹になって眠くなっている所をベッドに運んだ後、俺は窓から月夜を眺めて飲み続けた。


 思い出すのはアリアの事だ。今はどうなっているのか。寂しがってはいないだろうか。成長した自分を見てどう思うだろう。

 心に隙間が出来た様に、寂しかったんだ。

 ディーナと毎日一緒に寝ていても、本当の意味で通じ合わないのはアリアの事があるからだと内心じゃ分かってた。


 きっとこれがナナの言っていた『真の意味で想いが通じ合う』ーーそういう事なんだろう。


 もう一つ気になる事があった。あの日、記憶を失って暴走する直前にフラッシュバックした光景は、一体何だろう。男が慟哭と絶叫に喘ぎ、黒く染まる世界。


「あれが、前の世界の俺なのか……?」

 ワインをグラスに注いで一気に飲み干すと、そのまま階下に降りてテーブルで眠りについた。


 __________



 眼が覚めると辺りは真っ暗で、まだ夜中なのだと思い目を擦る。ローブが羽織らされており、きっとアズラが気を使ってくれたのだと思った。


 ーーキィン! ギィィン! ギャリッ!


「外から金属音が聞こえる……こんな時間に戦闘?」

 俺が急いで音が鳴る方へ駆け付けると、アズラが一人で複数人の黒衣を纏った者と対峙していた。


「アズラ! 一体どうしたんだ⁉︎」

「わりぃな姫! 起こしちまったか⁉︎ こいつらが姫達を襲撃しようと宿の周囲をこそこそ動き回ってたからよ! 撃退してんだわ!」

 咄嗟にアズラの側へ駆け出寄ると激痛がはしり、俺は思わず顔を歪める。


「ぐあぁ! これは一体何だよ⁉︎」

「首だ! 首を見ろ!」

 アズラの忠告そのままに首を触ると、よくわからない首輪の様なアイテムが装着されていた。


「な、なんだこれ⁉︎」

隷属レイゾクの首輪だろう。多分こいつら奴隷商の雇った暗殺者だ! スキルを封じられているぞ! それにこいつらに攻撃の意思を示すと激痛が起こる!」


「はぁ⁉︎ ま、まじかよ……一体何時こんなモノを?」

 侮っていたわけでも、油断してたわけでもない。ただ何の気配も感じさせず、こんなモノを俺の首につけられる実力者がいるということへの認識が甘かった。


 ーーまだまだ異世界の事を知らなすぎたんだ。


「アズラ! ここは一人で大丈夫なのか?」

「ちっと人数的には厳しいが、負ける事はない! ディーナとコヒナタは平気か?」

「まだ確認してないんだ! 急いで見てくる!」

 スキルを発動出来ない事から、ステータスのみの力で宿の部屋へ向かうと、そこは既にもぬけの殻だった。


 俺は強く拳を握りしめ、震える程の怒りに身を任せて床を叩きつけると、破壊した板と共に階下へと飛び降りる。


 __________


 地震の様な宿全体のグラつきに、目を覚ました女将さんが一体何の音だと現場へ走った。

 そこでみた光景は、怒りが限界を超え、獣の様に雄叫びを上げるレイアの姿。


 異世界に来て『闇夜一世オワラセルセカイ』を発動させていない、意識ある状態の女神がキレた瞬間だった。

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