TS女神の冒険譚〜チートスキルで異世界無双〜
武士カイト
【第1章 女神の転生と深淵の森】
第1話「女神様に出会った!」
目を覚ますと、俺は光った
「いや、意味不明だよ! 俺の身体一体どうなってるの? ボールなのに何故か浮いてますし⁉︎」
身体が光ってるのは何と無く格好良いから、まぁいいか。
いきなりの展開に一通りツッコミを入れて落ち着いた後、ゆっくり周囲を見渡してみる。
そこは淡白く輝いた空間だ。あまり広いわけではなく、シンプルな作りで何処か落ち着く。
「てゆーか、何も無いな」
「女神の部屋なんてそんなもんよ~。好きに弄れるしね〜」
突如、どこからかおっとりとした柔らかい口調の声が響いた。いきなり何だと驚いていると、眼前に金色の翼を広げ、聖なる輪を頭上に浮かべた女性が舞い降りてくる。
瞳がついていたら目玉が飛び出ていたかも知れないなぁと想像したが、俺は冷静だった。だってまず、自分自身がこんな状況なんだもん。ボールだしね。
「初めまして~! 貴方の女神様ですよ~! よろしくね~」
(何言ってんだこの女? いきなり女神様とか言われても意味が分からんわ。阿保なのかな。夢見る年頃か? 翼とかは確かにそれっぽくて、かっちょいいけど……)
とりあえず脳内で考えるだけにして、ツッコミはいれない。今は状況把握が最優先だ。
目の前に現れた女性を上から下までじっくりと視姦する。
(今、俺ボールですから全然問題は無いよね? うん、無い!)
腰までかかった透き通る銀髪。『魅了』とかスキルを使えそうな金色の双眸。赤いドレスを身に纏った色気のある肢体。
胸は大きすぎず小さすぎず、ベストなDカップくらいか。年齢は二十歳前後かなぁ。綺麗な顔立ちだ。あと、なんか全体的に薄く光ってらっしゃるぞ。
「女神とかはよくわかりませんが、貴女が絶世の美女なのは間違いないですね!」
「あらら~? 褒めてくれてありがとう〜!」
女神様が喜んでいる姿を見て嬉しくなった俺は閃いた新技を見せる。『バウンド』だ。ただ浮いていた先程とは、最早レベルが違うだろう。
「俺の適応能力の高さに驚くがいい!」
必死で跳ね続けてみたが伝わりはしなかった。女神様は優しく見つめてくれてはいるが無反応だ。諦めずに暫く続けてみたが、一向に表情は変わらない。
俺は何を浮かれていたんだと、少し泣きたくなった。
その後、一瞬位驚かせてみせると更に『ローリング』も披露したが、ピクリとも頬は動かずリアクションは貰えなかったね。
ーークールな女神様だぜ。
__________
「女神様への質問タ~イム!」
「は〜い。何でも聞いて~?」
女神様はいつの間にか椅子に座り、紅茶を片手に優雅なティータイムを楽しんでいる。
「いつ出たそれ⁉︎ お菓子まであるし」
「…………」
(ーーあれ? スルー? 何でも聞いてって、言ってましたやん!)
「ま、まぁいいや。ここはどこ? 俺は何?」
「あなたは亡くなった前世の魂だけの存在で~、ここは準備部屋ってとこかしら~!」
「前世とか自分の事を何も思い出せないんですけど、俺は天寿を全うできたんですか? 寧ろ人でしたか?」
そこが疑わしい自分が嘆かわしい。
「人間だったのは間違いないわ~! 天寿は全うできなかったけどね~!」
女神様は楽しげに笑っている。普通そこは悲痛な表情で語る所じゃないのだろうか。
「前世で魂の器が大きかった人は記憶を無くしやすいのよ~。でも、全てを忘れる訳じゃないわ。どんな世界にいたかとか、基本的な文明レベルは覚えているはずよ〜。良かったわね〜」
(うん。この女神様……俺の死に対してえらく軽いな……まるで羽根のようだ。質問は考えてからにしよう。俺のグラスハートが魂ごと砕かれる前に)
「俺はこれからどうなるんですか?」
女神様は一瞬思慮深く、陰りのある表情を見せる。しかし、直ぐ様満面の笑みを浮かべ両手を広げて答えてくれた。
「前世とは違う『異世界』へ転生して貰うわ〜! 貴方は選ばれたのよ。おめでと〜!」
俺に頬っぺたがついていたら、引き千切れる程に抓っているだろうな。
「ま、マジっすか……異世界っすか……」
この瞬間、俺の物語は始まったんだと思う。
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