鳥人仮面タカヒロ
えびあさ
第1話
眠い。
眠いが、軽~くイラついてるので、魅惑のうたた寝の世界へ行けない、おれなのだ。
なぜかと言えば、今は午後イチの歴史の授業だからで、胸をえらそうに反らせ、甲高い声でしゃべる教師、アキモトの話が、眠りの道を行かんとするおれのカンにさわるのだ。
「ぼくはね、きみたちに型破りであってほしい。たとえば織田信長のようなね。彼はぼくの英雄だ。いや、きみたちにそこまで大人物になれと言ってるんじゃない。彼のような面白み、旨みのある人間に、ちぃっとでも近づけるように頑張ってほしいのだよ、ウム」
などと、喜々として話しやがる。
フン。どの口でそれを言うのか、ってなモンだ。
面白みのある人間になれなどと臆面もなく言えるヤツは、たいていそういう本人こそ面白みのない人間だ。自分の無味を内心コンプレックスに感じてるから、他人にその劣等感をなすりつけたくて、そんなことを口走るのさ。
それはまあ、ともかくとして。アキモトのヤツ、授業の始まりのとき、こう言ったんだぜ。
「昨日、かの国でまた戦争が起こったね。なぜ人は人を殺し、暴力をくり返し、憎しみの連鎖をつないでしまうんだろう。世界平和実現という大事業は、若人のきみたちの肩にかかっているよ、ウム」
あのー、戦国時代に生きた信長、チョー人殺して、暴力ふるいまくってたと思うんですけど。
戦争反対と言った舌の根の乾かぬうちに、信長を英雄だとしれっと口にする、ズサンな語り。あー、気に食わん。こんなヤツが古文の新米教師ユリちゃんにヨダレ垂らしてちょっかい出してるのも虫唾が走るぜ。
こんなしょーもない大人なのに、こいつも「教師」って肩書きもって、世間的には「ちゃんとしてる」部類に振り分けられるんだもんな。社会って人が正当に評価されない不条理な場所だとつくづく思うよ。
「んなこと、しがない一高校生が吠えたって、世の中、なぁんも変わらねえって」
と、木陰になった芝生の上で寝そべりながら言うのは、おれの悪友トモキチだ。もうすぐ初夏というこの頃、放課後になるとおれらは裏庭でよくダベってる。トモキチはのんびりした声で、
「なあ、タカヒロ。そんな報われねえことにカッカしてないで、もっと明るい話をしようじゃないか。たとえば、そう、マナミちゃんのこととか」
と言い、ヤツは視線を上げた。その先に見えるのはテニスコートだ。熱心に練習にはげむテニス部の女子らの姿がある。
「ウフ、かわいいなあ、マナミちゃん。皆でおそろいの白のユニフォームを着てたって、どこに彼女がいるのかすぐわかる。だってひとりだけキラキラ輝いてるもん、真珠色に」
デレデレ顔のトモキチにおれは鼻を鳴らした。サル顔のクセに鼻の下伸ばして、ますますサルになりやがって。こんな蚊の出そうな草むらでなぜダベってるのかと言えば、トモキチが女子ウォッチングをしたいからなのだ。おれは菓子パン二個と飲み物を付ける条件で、付き合ってやってる(友情価格で格安にしてやってんだぜ)。
「わかんねー、なんであんな女がいいんだか……」
おれがついぼそっとつぶやくと、とたんにトモキチはガバッと跳ね起き、おれのほお張ってるクリームパンを口から引きはがそうとした。抵抗するおれにトモキチはツバをぺっぺと飛ばし、食ってかかってきた。
「そのクリームまみれの口を慎めぃ! マナミちゃんはわが一年三組の女王様だろうがっ。お前ごときに『あんな女』呼ばわりされるような、卑しい身分のお方じゃねーだろがぁ!」
はいはい失礼しました。面倒くさいから、適当にあしらっとく。どうせ忠告したって恋に狂った愚かなピエロには届きゃしねえ。
マナミという女、見た目はたしかにゴージャスで美しいが、おれにとってはくだんの歴史教師アキモトと同じく、「ズサンな語りをする」部類に入る。少女マンガにはまってるらしい彼女が、主人公の敵役の女について声高に非難してるのを耳にしたことがあるが、そのじつ、実際の彼女は自分以外の女子の恋愛がうまく行くのを許せず、ひそかに横ヤリを入れてはほくそ笑んでるのをおれは知ってる。邪魔される女子にとっては、彼女こそマンガでいうところの意地悪な敵役だろう。
自分の姿を客観的に見られない、そんな洞察力のない女の、一体どこに惹かれるというのか。
ウホッとか、アハンとか、テニスコートに熱い視線を送りながら変な歓声をあげるサルをよそに、おれはパンの最後のひとかけをペットボトルのミルクティーとともに飲みこみ、大きく息をついた。
まあ、たしかに、おれはちょっとばかりカリカリしてるのかもしれん。
高校に入ってから、なんだかますます憂えるようになってるのだ。
ズサンなあり方がまかり通る、不条理なこの世界について。
家に帰ると、おれ宛に、ミョーな小包が届いてた。
天地が葉書を二枚並べたくらいのサイズの箱で、送り主の名を見ると、「㈱マスク・オブ・ジャスティス」とある。品名のところには、社名にもあるが、「マスク」の文字が。
知らない社名。品物も、ものっすごい怪しい感じ。
(エロサイトで変なトコをクリックするようなヘマはしてないはずだが……)
小包を受け取っておいてくれた妹の手前、おれは無表情を装い、頭の中では素早く最近のネットサーフィンの状況をふり返りつつ、二階の自室へと向かった。
制服から部屋着に着替えて、そのうさんくさい小包をあらためて手に取る。今後起こり得るあらゆる可能性――法外な請求額、消費者生活センターへの連絡、父の怒号、母の涙、トモキチの嘲笑など――が一瞬頭をよぎったが、ともかく中身を確認しないことには。おれは潔くビリビリッと包装紙を破った。
英語表記で、マスク何某の社名の入った、白い箱が姿を現した。
ふたを開けると、綿に埋もれるようにして、親指の太さ長さほどの小さな品物が鎮座してる。
何だぁ、コレ。
つまみあげると、なんかブニョブニョしたゴムみたいで、気持ち悪い感触だ。黄や赤や白や黒がマーブル状になった、すこぶる謎の物体。箱の中にメッセージの書かれた紙も入ってたので、読んでみた。
〝曲がったことが嫌いな、真っ直ぐなあなたへ〟
「ウソをつくのも、つかれるのも我慢ならない」
「道理に合わない、筋の通らない物事が許せない」
「タヌキな人の本性を白日のもとにさらしてやりたい」
この品物は、そんな正義の志と熱きハートを持ったあなたにひかれて、あなたのもとへとやってまいりました。
あなたが感じられているとおり、今、この世の中は狂っています。
人は人を信じられず、自己保身に走り、ウソをつきあい傷つけあう。
親は子を殺し、子は親を殺す。
なんとすさんだ時代なのでしょうか。
けれど人々は、何かがおかしいと気づきながらも、問題について真剣に考えようとはしません。誰かが変えてくれる、そんな他力本願な人々があまりにも多い。
そんな社会に、今、このとき、一石を投じる人が必要です。
批判的精神にあふれ、鳥瞰の視点で世界を見つめる目をもったあなたには、この社会に風穴を開ける力がある。
あなたはヒーローになれる。
そんなあなたに、弊社は大いなる期待をもって、これを贈呈するのです。
どうぞこれを使って、存分に世直しして下さいね☆
株式会社マスク・オブ・ジャスティス 社訓
「正義と正論と直情で
曲がったものを真っ直ぐに
ゆがんだものを平らかに」
追伸この品物はプレゼントなので、もちろん無料です。違法な押し売りなんかじゃありませんので、ご安心を。
なんのこっちゃ。
エロサイト関係じゃなかった……という安堵も、ひらりとあったが。しかし、まったくもってわけがわからん。おバカなおれのダチどもが仕掛けたドッキリだろうか。
このグミグミしたモンで世直しって、何をどうしろと。
そこで、おれはふと、ある考えがひらめいた。それはわれながら子供じみた思いつきだったから、フッまさかね、とかつぶやきつつ、実行してみたのである。
――ポン!
と、音がした。
「え」
しばし、あっけに取られてから、
「は、はあ? はあ~~~ん!?」
と、みっともない叫び声をあげてしまった。
一階の居間にいた妹がおれの絶叫を聞きつけ、どうしたのお兄と声をかけてきた。階段に足をかけた気配もして、ヤバイと慌てたおれは、
「い、いやっ、なんっ、何もねーよ! お兄ちゃんは元気だからっ!」
と、半開きのドアから顔をのぞかせ、無事をアピールした。階段の下にいる妹は笑顔の引きつるおれを冷めた目で見、何かを察したような顔つきになって、
「……ま、いいけどさ。ほどほどにね、そーゆうの。早く相手を見つけなよ、ひとりじゃ空しいでしょ」
「おうっ」
おれは元気よく返したが、妹が何を言わんとしていたのかがわかったのは、ドアを閉めたあとだった。怪しげな小包、受け取ったとたん部屋に籠もる兄、そして興奮気味の声とくれば、妹が大人のオモチャを兄が入手したと考えるのも無理はない……が、違う妹よ! おれは声をあげたりしてヒトリ遊びがバレるようなヘマはしないぞ。男のプライドにかけて否定したかったが、じゃ、何やってたのよと聞かれても説明に困るから、濡れ衣着るのをしぶしぶ選ぶしかなく、ああくちおしい。
おれは軽く敗北感に似た思いを抱きつつ、床に転がったマスク何某社製のソレを拾い上げた。
白い箱に入ってた、グミグミした謎の物体。
なんと、品名のところに書いてあった通り、おれが被れるサイズのマスクに変貌したのである。
変な叫び声も出るって話だろ?
いや、じつはマスクになるってことを予想はしてたんだが、んなアホなと思ってたからさ。
おれは、かつて再放送で見たアニメで、ヒーローがやってた変身シーンを思い出したのだ。親指サイズのグミっぽいモンを、グミグミ握ったら、それがたちまちマスクになるってやつ。それを真似したら、こうだ。
(しっかし、この面構えは……)
その面、異様過ぎだった。チョー怒ってるカミナリおやじって感じの顔だ。歌舞伎役者が見得を切ってるようなすごい眼力の強さで、しかも色合いがケバい。顔は蛍光がかった黄色で、目や頬や口のまわりは黒や白で隈取りされてる。でかい鼻はまるでオウムのくちばしみたいに尖ってる。髪は赤くて、怒髪天をつく勢いで逆立ち、その頭のてっぺんにはニワトリみたいな金色の鳥が首だけニョキッと生えるようについてる。
ざっくり言うと、頭で鳥飼ってる鳥っぽい怒れるおやじといったところか。
そういやメッセージにも書いてあったけど、「鳥瞰の視点で世界を見る」という意味をこめての、この造りなのかもしれん。うーむ、どうせだったらもうちょっとヒーローっぽい、見栄えのいいデザインにすりゃいいのにな。
とりあえず、ためしに被ってみた。見た目よりは悪くない、程よいフィット感で、しっとりしつつもムレなさそうなあんばいだ。存外悪くない被り心地にちょっぴり感心しつつ、おれは姿見をのぞこうとして歩きかけた……のだが。
急に、足の裏に床の感触がなくなって、胃がひゅっと縮こまった。ジェットコースターの落下時に感じるあの現象そっくりな。
ギョッとして、下を見たら。なんとなんと……おれ、宙に浮いてるではないか!
「……!」
またもや叫び声が出そうだったところを、マスクの上から手で口を押さえる。おれは床と天井の中間を漂ってる状態で、ジタバタ足を動かした。宙を泳ぎ、鏡のほうに進んでいく。そして、どうにか鏡の前にたどり着いた。
……鏡の中で、鳥面のカミナリおやじがこっちをものすごい眼力で凝視しながら、手足をギクシャク動かして漂ってる。
うわー、トレーナーとスウェットパンツ姿のままだから、異様さ極まりない。しかも何コレ、いつの間にか腕の付け根から手にかけて白い羽が生えてるんですけど。抜こうとしたら、ヒゲを抜くとき並に激しく痛いんですけど。
何だよ、このマスク怪人。
鳥を頭に乗っけて、天使めかして羽生やした、変態おやじじゃねえか!
マスクをはずすと、とたんに重力にとらわれて、どんと床に足がついた(くぅ、また妹に疑惑をもたれたな)。おれは、平凡な日常に突如舞い込んだこの珍妙な面に呆然としてしまい、脱力感にも襲われた。
とにもかくにも。これが魔力的な力をもったマスクだってことはよくわかったよ。
正義のヒーローとして、説得力ある活躍ができるのかどうかは、すこぶる怪しいけどさ。
そのマスクを使う機会は、なかなか訪れなかった。
つーか、実際使おうという気が起きなかった。不平等で人心の荒れたこの世界に、おれはうんざり感を募らせてはいたのだが、だからと言って、このマスクでヒーローやるっても、なあ。あれから色々試してみたのだが、どうやらこのマスク、地上三階建てのビルくらいの高さまで飛べるようなんだが、手からビームとか出たり、強力な召還獣みたいのを呼び出せたりできるような魔術っぽい力はないらしい。
それに、おれのまわりで世直し的な目立った事件など、そうそう起こるはずもなく。
とは言え、なんとなくおれは、小さなグミ状態のマスクをズボンのポケットの中にそっとしまってる。万が一ってときに備えてさ。まあ万が一なんて訪れるわけないんだけど、とは思いつつ。
そんなある日のことだ。マスクデビューのときは突然訪れた。
登校時のことだった。いつものように電車で五駅、いつものコンビニに寄って、二時限目と三時限目の間に食べる用のおにぎりを購入し、おれは自動ドアを出た。すこし歩いた先に横断歩道があり、ちょうど青信号だった。図体のでかいおれの脚の長さならば、余裕で歩いて間に合う距離だ。
悠々と歩いてると、騒がしい一団があちらからバタバタ走ってきて、道を横断せんとしてるのが見えた。朝からなぜにそれほど元気なのか理解不能な、小学生四人だ。ギャハハと大口開けたバカ面で、ふざけておたがい叩いたり蹴ったり、やかましいことこの上ない。おりしも横断歩道上には、その小学生のガキどもとそれほど背丈の変わらないちんまりしたおばあさんが、青の間に渡りきれるか心配な感じの速度でよろよろ歩いてた。着物姿で、大きな風呂敷包みを抱えてる。
そして、枯枝に衣をまとわせたようなか細いおばあさんのそばを、ガキどもがはしゃぎながら通り過ぎんとした、そのときだった。
おばあさんが、道路の真ん中でこけてしまったのである。はしゃいで動き回るガキのランドセルが腕にあたり、風呂敷包みを落とした勢いでだ。
ところがガキども、気づいてないのかふり返りもしない。通勤や通学で慌しく足を運ぶ人々にいたっては、おばあさんの様子が目に入ってるはずなのに、誰も助けようとはしない。
――どくん!
突然、おれのズボンのポケットの中にある、例のモノが鼓動を始めた。
――どくん!
正義の心臓が脈打ち出したみたいに。しかも、熱い。燃えるようにグミが熱くなってる。
――どくん!
おれは無意識のうちに建物の陰に隠れ、ポケットに手を突っ込み、グミ状のアレをグミグミ力いっぱい握ったのである。
そして……
「待て待て、待てえぇーい! そこのガキどもぉ! そして、この場にいる愚か者どもおぉーう!」
大噴火のごとき迫力満点の怒声が、その道路に響きわたった。
道行く人も、車も、ムチで打たれたように「ビクン!」とその場で止まる。
人々の視線が一点に集まった。
その視線を一身に受けてるのは、そう……地面より一メートルほど浮いてる、カミナリ鳥オヤジのマスクを被ったおれだ。
おれは自分の鼓膜もビックリするほどの、ものっすごい大音声で語り出した。
「まず、ガキどもぉ! お前らの傍若無人ぶり、『のびのび』と『野放し』を勘違いした浅はかな親に育てられたことが手に取るようにわかる。幼く無知なお前らだけを責めるつもりはないが、ここでおれが教えてやろう。道路は社会の皆が共有している公共の場所だ。はしゃいで動き回るのは公園や広場だけにしろ。これをTPOをわきまえろと言う。あるいはオンオフを使い分けよう、だ!」
言いながらおれは羽のついた腕を組み、小学生どものそばにすうっと浮遊して近づいた。ガキたちはアゴをはずしそうに口をぱかっと開いてる。
「無知だったとはいえ、お前らのせいで荷物を抱えたご婦人が転倒した。知らぬ存ぜぬでは許されない。さあ、おばあさんに謝り、横断歩道を渡るのを手伝いなさい!」
ガキどもはクモの子を散らしたように駆け出し、ある者はおばあさんの手を引き、ある者は風呂敷包みを抱えた。おれは威厳たっぷりに、
「誰しも過ちを犯すもの。過ちを犯したら素直に謝れ。よく、謝ることが自分の価値を貶め、相手につけいるスキを与えてしまうと、これも勘違いしている大人が多いが、それは違うぞ。謝ることはおのれの魂の成長へとつながる、潔くも気高い行為なのだからな」
おばあさんが小学生たちに支えられながら道を渡りきると、おれは車道の真ん中へと空中を移動した。それにつれて周囲の視線も動く。
「さて、この場に居合わせた皆の者にも問おう。お前らの良心は一体どこへ行った? 先ほどおれにはお前らの心の声が筒抜けに聞こえてきたぞ。あの程度ならひとりで起きられるさ、会社に遅れるから無視しちゃえ、声をかけたりしていい子ぶってると思われたら恥ずかしい、エトセトラ……ああ情けない。お前らの心をそのように曇らせ歪ませているものが、何かわかるか。それはな、おのれの体面を守ることしか頭にない、醜い我欲だ!」
あたりはしぃ~んと静まり返った。気まずそうにうつむく人、腕時計を忙しなく見つつも留まってる人、色々な反応があちこちで起きてる。
おれはそんな周囲を見渡しつつ、立て板に水のごとくあふれてくる自分の言葉に、われながら感心していた。よくもまあ、こんな公衆の面前で、堂々と正義の演説をできるもんだよ。考えるより先に言葉がとめどなく出てくるんだもんよ。
――あ、そうか。これ、この鳥人のマスクの力なのだ。
被ると、飛べる上に口の達者なオヤジに変身するというわけか。
おれはここに来てようやく、この不思議なマスクの使い道を理解したのである。
が、次第に頭も冷めてきて、さてこの幕引きをどうしたものかということに考えが向き始めた。
(ヒーローが退散するときって、どうするんだろ……)
威風堂々と腕組みした姿勢を空中で保ちつつ、おれは面の下で、記憶にあるアニメやドラマのシーンを必死に手繰った。やがて無言のおれをじっと見守ってた人々の間に、えっとさすがにそろそろ解放してもらえてもいいんじゃ的な空気が流れ始めた。やばい。
何のアイデアも浮かばなかったおれは、
「……さらばや!」
と、何県出身かわからない言葉で唐突に切り上げ、羽を広げたワシよろしく猛スピードで飛び去ったのである。
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