弥生

42 桃の節句・雛人形②

【桃の節句】


 メイドさん、食事の支度をしながら歌っております。

「お内裏さ〜まとお雛様〜♪」

「ふーたり並んでふふふふふーん♪」

 五月先生が続きます。


 ポリポリ、ポリポリ……。

「あん五月様、つまみ食いしないでくださいまし」

「ひなあられ好きー」

 五月先生、お供え物の残りに手をつけます。


「もうすぐお夕飯でございますよ」

「恵方巻にいなり寿司ときて、次はちらし寿司か」

「蛤のお吸い物に、桜餅もございますよ」

「ピンク尽くしでいいなぁ」

 桃の節句は華やかですね。


 ガツガツガツ、ズズズズー。

 お夕飯です。


「ヒロシ、もう少し味わいましょ?」

「腹減ってんの!」

「ヒロシくん、よく噛んで食べた方が良いのだよ」

「腹に入れば同じことですよ」

 消化には悪い、胃腸に負担がかかります。


「やったりと桃の節句を祝おうじゃないか」

「五月様、無駄でございますよ。こやつは花より団子です」

「そうだな。類は友を呼ぶからな」

「にゃは?」




【雛人形②】


 次の日です。

「五月様、残ってる白酒飲んじゃってくださいませ」

「ん」

「では、とっとっと」

 二日続けてひな祭り仕様の夕飯です。


「雛人形、片さないの?」

「虫干しにもう少し」

「嫁に行けなくなるぞ」

「お嫁だなんて、わたくしはメイドですから」

 それは職業です。


「わたくし、お嫁に行けるでしょうか……」

「どうかな」

「ですね」

 メイドさん、結婚願望あるのでしょうか。


「あ、ヒロシくんがい……」

「いやです!」

「早っ!」

 そういえば、ヒロシくんはいないのでしょうか。


「俺のこと呼びまし……」

「別に呼んでないから!」

「早っ!」

「残ってるちらし寿司食べちゃって。お汁は鍋の中」

「へいへい」

 ヒロシくん、お台所へ。

 

「ヒロシと一緒になるくらいなら、ここにずっといます」

「いや、それも困る……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る