25 クリスマスプレゼント・年の瀬の口喧嘩

【クリスマスプレゼント】


「五月様、メリークリスマスでございます」

「メリークリスマス。ほれ、プレゼントだ」

 五月先生、洒落たクリスマス柄のラッピング袋をメイドさんに渡します。

 昨夜はご馳走とケーキをを食べて、25日にプレゼントを渡すのが五月家の楽しみ方です。


「ありがとうございます」

「バスキャンドルだ。それでゆっくり癒されろ」

 ステンレス製のお風呂にはあんまり似合いませんが……。


「あは。いいにおいです」

「だろ?」

 メイドさんは大喜びです。


「はい五月様、わたくしからもプレゼントでございますよ」

「お、ありがとう。何だろなぁー」


 ガサガサ、ガサガサ……。

 五月先生、長方形の包み紙を外します。


「ま、万年筆!?」

「あい。これでたくさん執筆してくださいましね」

「んーっと、PC使ってるんだが……」

 五月家はアナログが似合います。




【年の瀬の口喧嘩】


「黒豆、田作り、昆布巻。なますにきんとん、下準備っと」

 メイドさん、おせち料理の準備です。


「今年はまたずいぶんな量だな」

 テーブルの上が材料で溢れています。


「五月様、えぇ、暮れにご近所にお裾分けするのです」

「ふーん、何でまた?」

「口コミで、少しでも五月様のお名前が広まればと」

 五月先生の名前じゃじゃなくて、メイドさんの料理の腕が広まるのでは?

 メイドさんの煮物は美味しいですから。


「あーあーいつまでも売れない作家ですよ。悪ーございましたね」

「わたくし別に、そんなこと言ってませんです!」

 あ……なんか嫌な予感。


「ふん」

「ふん」

 ほらね、おふたりともへそを曲げてしまいました。


「大人げなかったかな……。メイド、その健気けなげさに感謝……」

 五月先生、書斎でつぶやきます。

「どうしよう、五月様怒らせちゃった……」

 メイドさん、お台所でつぶやきます。

 大丈夫、もうすぐ仲直りです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る