「じゃあ、お言葉に甘えて。色々と聞きたいことがあるんです」

「どうしよっかな…」

「おいっ、今さっき!」


「冗談、冗談」

元ミス渋柿、バチンと火花が飛び出す強烈なウインク。

つ、疲れる…。


「いえね、条件があるってこと」

「条件?」

「へっへっへ、旦那。うちも商売ですからね、分かってくだせえよ」


「どこの情報屋キャラだよ。まあ、分かったよ、交換条件ってことですね?」


使い捨てのスマホ充電器は買ったとはいえ、明日以降のことを考えると、アダプタ式の充電ケーブルは必要だ。

それに、日中の食料、飲み物。


それなりに調達するものはあるだろう。

「いいとも。その条件、のった」


「じゃあ、決まりね。あたし、こう見えても村の情報通だから。何か一つ買ってくれるごとに一つお話しするということで」

「え? い、一個ずつ? そんな細かいの?」

「不況の世の中ですからねえオホホ」

「むぅ…足元見やがって」


「嫌ならいいんですよぉ」

「ぐ…え、えげつねぇ! 元ミスなんちゃらのくせになんて腹黒いんだ!」

「黒いのは腹だけじゃないわよぅ。見・た・い?」

「は?」


「いまのはオ・フ・レ・コ。サービスするから、ナイショよ」

「おい、なんの店だよここは!?」


「さ、おふざけはここまでね、マサ君」


どっちがふざけているんだろう、と思いつつ、真人はうなずいた。


元ミス渋柿は悪びれた様子もなく、商品棚のスペースに移動する。

「何かお探しのもの、あるのかしら?」

「じゃあ、とりあえずスマホの充電器というか、電源ケーブルあります?」


彼女はどこの棚からか、あっという間にケーブルのパッケージを持ってきた。

「キャリアは全部あるから、お好きなのをどうぞ」


「こんなところの店で、よく全キャリア置いてるね?」

「白琴洞に行く前の最後の店だからね。観光のお客様向けに、抜かりはないのよ」

「ここが最後…」


「ところで、今の質問が充電ケーブル購入の分ということで?」

「へっ?」

「では、次の商品をお選びくださいまし~」


「お、おい、そりゃない……」

言いかけた真人だったが、元ミス渋柿の強烈な眼力の前にあっさり降参した。

この迫力は横綱級だ。生命に関わる。


「ふう…。分かった、分かった」

ここから先は充分に注意しよう。このオバハン、ふざけているように見えて意外に抜け目がない。


「じゃあ、飲み物…。ペットボトルのミネラルウォーターあたりをいくつか…」

言いながら真人は立ち上がって、今度は自分で探そうとした。

負けていられない。こっちもペットボトル一本ごとに質問一つぐらいの対抗手段に出よう。


「あら、それなら持ってきたところよ。はい、どうぞ」

真人より速く、ペットボトルがテーブルに並んだ。五百ミリリットルが三本。


「これだけあれば一日もつでしょお? さ、質問を『おひとつ』どおぉぞおぉ」

「ぐぬぅ…」

やられた。

真人の狙いはよまれていた。


やはり彼女は、おちゃらけているように見えて、実はかなり切れる。


娘の佳澄もこの親譲りだとしたら、案内所にいたときのふざけた発言に、実は何か意図があったのではないかと疑いたくなってくる。


「ふう…。分かったよ。じゃあ、質問」

「どおぞぉ」


「俺はこの辺…蛇窪の出身らしいけど、あなたはそれを知ってるのか…あ、あ、あわわいやいや待った、今のは質問じゃないぞう~ええと、俺がこの辺出身なのを知ってるようだけど、俺の住んでた所が具体的にはどこなのか、そこまで分かる?」


「なんだ、そんなこと? 元町だから、ここから白琴洞に行く道沿いね」

「もとまち?」


「白琴洞に行く道沿いが元町。その裏手が表町と裏町。それで、通り沿いのこの辺りが横町。昔からそういう屋号でしょ」

「屋号ということは、名字とは別に、住んでるところによっても名前があったってことか。で、俺の本多家は元町さんだったってか」

「そういうこと。やだわ、そんなことも忘れちゃって」


「ん? てことは、よこまちストアって、横町さんの店ってこと?」

「その通り。よく分かるわね」

「分かるわっ」


まったく、この渋柿家の一族にはどうも調子が狂う。


「でも、もう本多さんの家は別の人の家よ」


真人の両親が亡くなり、美奈子と東京に出たのだから、元の家は当然、誰かに譲られたのだろう。

「昔、戸籍の附票からなんとなく辿ったことがあるんだけど、蛇窪にはなってなかった。三桁の地番だけでさ。どのへんなんだろう」


「蛇窪は字の名前だから、住所とは一致しないのよね。まあ、マサ君の家ぐらいは、交換条件なしでいつでも案内できるけど。元町にある杉山っていう家がそう。道沿いに青い屋根の平屋だからすぐ分かると思う」


「そうか…ありがとう。美奈子…水谷美奈子、つまり俺の叔母さんの家も分かる? そこも誰かの家になってるんだろうけど…」


彼女は奇妙な反応をした。動きが止まり、顔面が恐ろしく険しくなる。元々険しいが。

「それを…訊きたいの?」


「…?」

真人は眉を吊り上げた。

何がある?


「知ってるのか?」

「そりゃ知ってるけど…どうしても知りたいの?」

「もちろん」

「どうなっても知らないよ」

「望むところだ」


「仕方ないのね、そこまで言うのなら」

すっと手のひらが真人の前に差し出された。

「?」


「質問一つに一つ、お買い上げですぜ、あんさん」

「…そ、そこはそう来るのか。厳しいなあ。じゃあ…」


今度の真人は、リクエストは口に出さず、自分で動いた。

確実にあったほうがよいもの、あって困らないものを慎重に考える。


「このバランスフードと…チョコを」

携帯フードと板チョコをテーブルに置く。

さすがにこれを分けて一つずつにするほど真人はセコくない。たとえ相手がどう来ようと、自分は誇らしく生きたいものだ。


「ふうん…。もしかしてマサ君、バレンタインにチョコもらえない口かな? そのトラウマでチョコ好きに…?」

「どんだけチョコ飢えてんの。もっとずっと実用的な理由ですよ」


「ふうん。というと?」

「最近、ちょっとしたブームで敷居が下がってますけどね、意外と洞窟や廃墟ってのは危ないんですよ。特に俺がよく行くような整備が充分じゃないようなのは。もっともここは、これから観光地としてメジャーになるのかも知れないけど」


「そうね、白琴洞は未踏の洞も多いから。公開されているのなんて、本当に観光目的のほんの一部だけで」


「そうでしょ? ちょっと間違えたら怪我したり滑落したりするような危険があるものなんです。だから、洞窟に入るときは、チョコか飴かバランスフードか、そういうものを必ず身に付けるようにしてるってわけで」


「経験者語る、ね」

そうつぶやく彼女の笑みは意味ありげだった。

「賢明だと思うわよ。白琴洞の支洞は、お山の地面の下そこらじゅうに広がってて、戦時中は防空壕にも使われたり、とにかく底が知れないわけ」


「ふうん…」

うなずきながら、真人はほくそ笑んだ。何も頼まずとも勝手に喋ってくれた。よしよし。


「じゃあ、今の話で、このお買い上げ分ね。それで? 美奈子のことだっけ。そっちは何を買ってくれるのかな」

「あ、あら…。くそう、そんなに甘くはないってか」


真人は商品棚をもう少し眺めてみることにした。

パソコンやデジカメはもちろんあるわけがないが、何か、買っておいて損にならないようなものは他にないだろうか。


飲食物はいったんオーケーとして、土産物とおぼしき雑貨コーナーへ。

どこの観光地でもありそうなグッズが、寂しげに並んでいる。


「あ」

真人は、白琴洞のものとおぼしき冊子を見付けた。大きさは文庫本程度、カラー表紙の薄い本だ。


「それは、観光協会で作った、白琴洞と阿賀流の観光紹介の冊子ね。地図と、スポットの紹介と、写真がたくさん載ってるのよ。うちのアカリ丼も紹介されてるんだから、イチオシの一冊」


「阿賀流観光ならこれ一冊、か」

キャッチコピーを読み上げて、真人はうなずいた。

宿探しもある。この手の広く浅くな一冊はあっていいだろう。

見ているうちに、吊り橋やよこまちストアのように記憶をかすめてくれるものもあるのかもしれない。


「じゃ、この本買うから、質問」

冊子をテーブルにポンと置き、真人は訊ねた。

「姉ちゃん…水谷の家は、どこに?」


「もちろん、ここに決まってるでしょう」

「は?」

「うちが譲り受けたのよぉ。美奈子ちゃんが東京に出るときにね」


「そ、そんだけ?」

「ええ」

「あ、あんな、思わせぶりだったのに?」


けろり。

「く、くそう」


「うちの兄様が、水谷さんとずっと付き合いがあってね。そんな縁もあってここを継いだのよ」

「へえ。それで俺の小さい頃も知ってるんですか」


彼女は口を開きかけて、またすぐつぐんでニヤニヤした。

「危ない、危ない。つられて喋るところだった。なかなかおぬし、やるのう」

「ちっ」


「じゃあ、次はそれ? マサ君のことでいいの?」

「いいよ。ちょっと待ってくれ。買うもの決める」


陳列棚を物色しながら真人は悩んだ。だんだん買い物のレパートリーも思いつかなくなってきた。

「まるで靴下一足しか脱いでくれない野球拳だなこれじゃ」


真人の愚痴を聞き付けたか、オバハンが笑う。

「なんならあたしとホントの野球拳する?」

「い、いや、いいです。ボクお化けとか苦手なんで」

「なんか言った?」

「いえいえ…じゃあ、これ」


真人は土産物の中から、十徳ナイフをつまみ上げた。LEDライトも付いていて、少しは実用性がありそうだ。


「ペンライト付ナイフで、マサ君のことねぇ。どこまでかな…」


真人はその間にもすでに棚を再び見渡していた。

なんだかすぐに次が必要になりそうな予感だ。


「それにしても、野球拳といえば、だねえ」

「何がです?」

「いや、思い出してね。マサ君と、佳澄と、真緒ちゃんと」

「…?」


「これも覚えてないの? 野球拳ごっこ」

「野球拳ごっこぉ?」


「あんたら三人で、あれはいくつの頃だったか…。バカやってるのをあたしが見付けて、たっぷりマサ君を絞ったら、佳澄と真緒が今度は泣き出してね。マサ君は悪くないって」


真人はひきつった顔で苦笑いするしかなかった。そんな幼い頃から何をやっていたんだ愚かな自分よ。


「それ、そんな小さい頃の話ですか? 俺が阿賀流にいたのって、小学校入る前までぐらいと思ってたけど…」

「分校に入ったばっかりの頃で、引っ越していく直前だね」

「はあ…分校…。じゃあ、小一とかそのぐらいですか…」

「そうね…かれこれ二十年以上かしら。ミス渋柿が始まる前だもの」


真人は必死に思い出そうとした。

小学低学年。分校。真緒。佳澄。よこまちストア。吊り橋。阿賀流。


少しずつ、断片的だが阿賀流のことを覚えているらしい記憶が頭をよぎるようにはなってきた。

しかしあくまで、空っぽだったアルバムの中の写真が何枚か見付かった、と、その範囲だ。


小学校に入るかどうかの頃の記憶なんて、そんなものかもしれない。

これからも、阿賀流を散策しているうちに少しは思い出していくこともあるだろう。


ただ、記憶喪失者でもない真人にとって、何かが決定的に記憶の奔流を呼び覚ますようなことはなさそうだ。

地道に、根気よくたどっていくしかない。

阿賀流と真人の間には確かに因縁があるようなのだから。


「それにしても、自分で言うのもなんだけど、どうして野球拳ごっこなんかしたんだろう」

真人はつぶやいた。


追加の質問になる以上、答えは期待していなかったが、意外にも返事があった。


「服を脱がせていくのを真似っこしたんだって、真緒が言ってたね。真っ赤な顔して、とにかくマサ君のせいじゃないって、一生懸命説明してたっけなぁ」

「…」


「何か、幼心に強く印象が残るようなことでも見たかしら」

「まさか、誰かの本番見たりしてないだろうな。トラウマになるっていうし」


「どうかしらね。脱がせるところの印象が強かったみたいだから、それはなさそうにも思えるけど」

「うーん。参ったな。そんなことまるで忘れてるじゃないか。でも彼女は覚えてたのかもなあ」


まさか、その騒ぎで「キズモノにされたから責任とってくださいね」なんて結末になっていた…のだとしたらどうしよう。

バカなそんなわけあるかい、と自信をもって否定できないのが真人の弱いところだ。


「何か思うところでもあったのかな? あたしとしては、今のは少しサービスだったから、そろそろ次の質問へいきたいんだけど」

「あ、ああ…。分かりましたよ」


訊ねたいことはまだまだあるが、買い物をするネタがそろそろ尽きてきた。

白琴洞は観光洞だ。本格的な洞窟ではヘルメットにライトに防水服、足元も大切だが、そういうレベルではない。


何か考え付くとしても、あとひとつか二つがせいぜいだろう。


質問内容を厳選しよう、と真人は顎に手を当てた。


あとでまた来ることも出来る。そのときには別の買い物も思い付いているだろう。

したがってここでするべきは、優先順位が高い質問、つまり真人がいま、切実に知りたいと願っていることに絞らなくてはならない。


彼女は真人の小さい頃を知っている。

美奈子や真人の両親のことも。


カネにはがめついかもしれないが、彼女はそれ相応にきちんと真人の問いに対して答えているように思える。


より高い収穫を得られる質問は何か。


真人がここまでやってきたのはなぜだったか。


直接はよこまちストアのレシートがきっかけだが、根本的には美奈子の失踪だ。今に至るまで自分の重しになっている。


それに、そもそも美奈子が伏せていた、真人の両親のこと。阿賀流で何があったのか。

美奈子が怯えていたことに関係しているのではないか。

そして、ここに来て真人を襲う、青服の者達。あれは白琴会なのか。


真人は無言で考え、やがて一つの質問を決めた。


土産物コーナーから、適当にキャラクターストラップを拾った。

「これで。たぶん、時間もそろそろ昼時になるだろうし、一区切りを」

「いいわよぉ。じゃあ、ご質問、どおぞ」


「俺の、両親…」

「うん」

「つまり、本多浩太(ほんだこうた)と本多小百合(ほんださゆり)ですが…」


「本多浩太。本多小百合」

オバハンは、そうおうむ返しにした。


「美奈子さんは、俺の親のことをほとんど何も教えてくれなかったんです。何かトラブルがあった、としか知らない。でも、お墓もこっちにあるんでしょう?」


ぴくっと反応あり。

慌てて真人は補足して話をつなぐ。


「あ、あわわ、もちろんいまのは質問じゃありませんよ。で、そのトラブルだか事故のことが、何か美奈子さんにも関わりがあって、今、俺にもつながってきているんじゃないかって、そう思えるんですよ。つまり俺が訊きたいのは、俺の両親のことなんです。どうして死んだのか、まずはそれだけでも知りたい」


一気に喋り、真人は口を閉じて待った。


「そう。美奈子ちゃんからは、事故って聞いてるのね。それ以上は聞いていない、と。それならそのままのほうがいいのかも」


「いやいや、いや。何かあるんです。そのために俺はわざわざこうして戻って来たんです。何かご存じなんでしょう? 俺はこのとおり立派な大人で、子どもの頃は分からなかったようなことも、もう受け止めて理解出来ますよ」


「う~ん。あたしが知ってることなら話してあげてもいいし、それについてまで交換条件出そうとまでは思わないんだけど…」

「けど…?」


「長話になるし、佳澄達がいるほうが、いいのよね。関係なくはない話だから」


「佳澄…ミス渋柿が…?」

真人は新旧ミス渋柿夢の共演、ダブルミス渋柿を少し想像した。


「うおっぷ」

「?」

「い、いえ。…あれ? 今、『達』って言いました?」


「佳澄と真緒さ」

「真緒…? 彼女も?」

「もちろん。あんたのことなら、あの娘達が両方いないとね」

「両方…」


あのわけのわからない栞から始まり、過去を知るために思いきって阿賀流までやってきた。


それは間違いではなかった。

真人は網に囚われている。

自分でも知らない網に。

釈迦の手の上でもがく孫悟空よろしく。


白琴会という組織がそれにからんでいるという疑惑。

そしてあの怪電話はなんと言っていたか。真人には敵と味方がいる、と。


仮に、白琴会が敵だとする。

このミス渋柿グループは味方なのか?


それとも、他にまだ真人に接触してくる連中がいるのか…。


いずれにしろ、ここはどうしてもリスクをとるしかない。

ロジカルに考えては結論が出ない。

直感も大切だ。

彼女達は、少なくとも今のところは、敵とは思えない。


「分かった」

真人はうなずいた。

「それは機会を待とう。でも本当に、その機会が来たら、交換条件なしでたっぷり話してくれますね?」


「もちろん。マサ君、今朝ここに来たってことは、まだ白琴洞も行ってないんでしょう?」

「ええ、まあ、はい」

「それじゃあ、なおさらね。せめて白琴洞には行ってからじゃないと、かえって話もしにくいから」

「はあ…」


「やってる~?」

陽気な声がして、三人組の男達が入ってきた。見るからに工事現場の作業者らしき身なりだ。

男達はもうひとつあるテーブルにつく。


「あ、いらっしゃ~い。今いきますから」

オバハン、立ち上がり、さっと電卓を叩いた。

「ごめんねぇ、ちょっと早いけど、かきいれ時になるから」


「ああ、いえ…」

時計は十一時半を指している。

頃合いか。


「白琴洞をゆっくり見れば、移動も入れて二、三時間そこらはかかるから。終わったら戻っておいでよ。そのころにはあの子達も仕事切り上げられるだろうし」


「はあ…。分かりました」

真人はため息をついた。

収穫がゼロだったわけではないし、次にはつながっている。まずは、よしとしておこう。


いつしかテーブルに山と積まれていた購入物を前に、彼女が電卓を叩いた。

「はい、お支払い額」


会計を済ませ、とにかくここまでの礼を言おうとして、いまさら真人は気付いた。

「お話、ありがとうございました。えーと…すいません、今更ですがお名前をまだ聞いてませんでしたね」


「あら…そう」

彼女は不思議な笑顔を浮かべた。

穏やかだが少し気遣いがその眼差しから感じられた。


「そんなことまで。本当に…。あれもこれも忘れたのね」

「自慢じゃないですが、阿賀流に来た理由の一つは、それを取り戻すためですから」


「寛子。清水寛子。昔みたいに寛子おばさんでいいよ」

「寛子おばさん…」


反芻したが、記憶にピントは合わなかった。

小さい頃に会っていた誰かなのだろうが、二十年以上経っている姿と合うようなビジョンは、名前を聞いても浮かんで来ない。


「そのうち、思い出すこともあるさ。じゃあ、またあとで寄りなさいね」

そうして寛子は、次の客対応に戻っていった。

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