第11話 食は基本
ウィル・オー・ウィスプの薄明かりを頼りに、カトーが二羽のシャモキジを切り分けている。
ミトラは、まだ首をかしげていた。
「シャモキジが鳥でもあっとは知らんかったばい。ばってん、なんか納得いかん」
「なにが気に入らねェんだよ」
「シャモキジってわかりにくいけん、シャモキジトリって言うべきじゃなかか」
スキピオはあきれて、
「食いもんの好みは人好きずきだがよ、名前が気にいらねェってやつァ初めてだぜ」
「それも食うまでのことじゃ。いっぺん口に入れたら、すぐに気にいるけえ、冷めんうちに食べんさいや」
カトーは包んでいた葉を皿がわりにして、三分の二羽に切り分けたシャモキジを乗せた。
「ほれ、ちょうど三等分じゃ」
「……お前さ、食うことになると妙に几帳面っつうか、マメマメしいとこあるよな」
「食は基本じゃけえの」
カトーは自分のぶんを引き寄せつつ、
「書は読むのも、剣を振るのもええ。ほんじゃが、なんぼ賢うても強うても、食わんにゃ死んでしまうんよ」
「まァな。そうだけどさ」
「じゃけん、食だけは誰にとっても平等でなかったらいけんのじゃ」
首をかしげて聞いていたミトラは、おずおずと自分の葉を引き寄せた。
そのまま、しばらく躊躇していたが、とっくにかぶりついているスキピオを見て、意を決したように手を伸ばして、
「熱ちっ」
まだ余熱が残っていたのか、掴みかけた肉片を落としてしまった。
「あっ……」
「いくら冷めんうちに言うても、いきなり掴んだら、そりゃー熱いじゃろ。ほれ、ワシのと変えちゃるけえ、ようフーフーしてから食べんといけんで」
「フーフー?」
「こうじゃ、こう」
と、カトーはやってみせてから、代わりに転げおちた肉片を拾いあげた。
「でも、そっちは……」
ミトラは悲しげな顔をして、
「ばっちくなって……しもうたばい」
「土がついたら払えばええんよ。死にゃーせんわい」
と、手羽元あたりにかぶりつく。
それを見ていたミトラは、今度は慎重に息を吹きかけ、おそるおそる口先でかじって、
「う、うまか!」
と、目を丸くしたのだった。
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