青木ヶ原と言う場所
「……青木ヶ原……やから……? それって……どういう……?」
俺はと言うと、やっぱり意味が解らんで首を傾げるしかなかった。
「そんなん、今さっきタッちゃんと利伽さんが言ーてた通りニャん」
理由を把握してない俺らに、ビャクはやれやれといった感じで話を繋げた。
さっきっちゅーたら、青木ヶ原にはお化けが出るって話しか?
「……青木ヶ原には……霊や化け物は勿論……化身を呼び寄せる力が……あります……」
俺の考えを肯定するように、
俺と利伽が話してたのはあくまでも都市伝説の類いやったけど、近からず遠からずと言ったところやったんや。
「……でも、何で富士の樹海に化身何かが呼び寄せられるん?」
彼女らの答えを無条件に、思わず受け入れそうになった俺の考えを見透かしたように、利伽が至極当然の疑問を口にした。
先入観で、青木ヶ原なら化身を呼び寄せてもおかしくないって考えてもーた俺と違って、利伽は確りと疑問を持ったようやった。
「そんニャん、決まってるニャーんっ!」
「……浅間家が……そこにある理由と……同じです……」
うん、どうやらここ最近では、ビャクと蓬の息はピッタリみたいやな。
ビャクが切り込んで、蓬が補足する会話スタイルが確率されつつあるな。
「……地脈に釣られて化身とか他の霊が寄ってくるって事?」
浅間家が富士の麓に居を構える理由は、正しく地脈の封じ込めも含めて監理する為や。
でもそれが理由やと、俺も利伽もすぐにはピンとこーへんかった。
同じように地脈を監理して封じてるんは、不知火山と八代山も同なじや。
それでも俺達は、ビャクに会うまで化身は勿論、霊にすら会ったことない。
「タッちゃんのとこが今でも平和ニャんは、ぜーんぶ
「……禊様は……僅かな漏れもなく……地脈を封じられていますから……」
俺達の顔によっぽど疑問が浮かんでたんか、ビャクと蓬がすかさず補足に入った。
「それでも浅間家にだって、強力な封印師が居るはずやけどなー……」
確かに浅間家ゆーたら、竜洞会で一二を争う実力の家系や。
「まー……そりゃーただの強力な封印師ニャんか
「……はい……禊様程の術者は……そうそう居られないと思います……」
「うぇっ!? ばあちゃんって、そんなに凄い人やったんか!?」
それはどーやら、利伽も同じみたいで目を丸くしてる。
「そりゃー禊様はうちの
「……私を……一時でも抑え込んだ呪力は……驚嘆に値します……」
まー、ビャクの母ちゃんがどれ位凄くて、蓬がどれ程の力を持ってるんかは知らんけど、二人の評価は高いってのは解った。
「つまり富士の霊穴から漏れ出た地脈の力に釣られて、色んな者が青木ヶ原に誘き寄せられて危険な場所やーゆーことやね?」
利伽がそう締め括ると、ビャクはウンウンと、蓬は小さくコクリと頷いた。
「今回の目的は、化身の退治やニャいからニャー」
「……利伽さんの……身を第一に考えて……私達が護衛に付くのです……」
「まーその辺の雑魚には指一本触れさせへんから、安心しとくニャー」
ビャクは兎も角、蓬まで鼻息を荒くして気合いが入った答えをよこした。
今日のビャクと蓬は、気色悪い程息が合ってる。
何か……あったんかな?
「なぁ……お前ら妙に気合い入ってるけど……なんかあったんか?」
犬猿の仲……とまでは行かんでも、こいつらに馴れ合う様子はなかった。
反目しあうよりは全然えーけど、こうも意気投合してたら気持ち悪い通り越して怪しさ100倍や。
俺の問いかけに、蓬は声を詰まらせ赤面し、ビャクは頭の耳をピョコッと真っ直ぐにした。
「……それはその……利伽さんのお見合いが成功すれば……ライバルが……」
「そんニャん、利伽さんの見合いを成功させてとっとと……いやいや、縁談が進んだ方が良ーニャん?」
……なるほど……利害の一致が二人を協力させてるんか……。
しかし二人とも化身やゆーのに、人間臭いなー……。
「ふ……二人とも、お見合いしたからって、直ぐに結婚っちゅー訳やないんやからね?」
二人の気迫にやや押されながら、利伽がそう付け加えた。
「まーまー、ニャにごともまずは成功させニャいとねニャー」
「……浅間家ならば……嫁ぐ先としては申し分無いかと……」
しかし二人には効果なかったみたいや。
そうこうしてる内に、新幹線は「新横浜駅」に到着した。
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