虚飾性アリス
鳴河 千尋
汚濁の渦
序幕
「物事は唐突に始まるものだよ」
目の前にいる得体のしれない生き物が言っている。
一見兎に見えるが、猫のようなしっぽをゆらゆらさせている。
サイズは兎とほとんど変わらない。
全体はふわふわと、白い毛皮に覆われており、床にペタンと座っている。
宇宙の深淵より深い瞳の先には少女がいる。
少女が『ねこうさぎ』と呼んでいるそれは、少年のような声で言う。
「日常は砂城のように脆く崩れるの」
少女はよくわかっていない様子で首をかしげ、黒炭ようなセミロングの髪を揺らす。
髪が窓から差し込む夕日照らされて、真っ黒な髪が茶髪に染まって見える。
その光景はノスタルジアを感じさせる。
「そのときになったら嫌でもわかるよ」
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