17話 

「エリス―‼」

「ヨシノさーん‼」


 私は喜びの末、ヨシノさんに向かって、駆けつけるようにジャンプする。


「生きていて光栄で―――す‼」

「グホッ!?」


 私は泣きながらヨシノさんに抱き着いた。


「アレ……? ヒャ~!」


 私はヨシノさんと一緒に転倒してしまう。


「痛ーい、ヨシノさんったら、急に倒れないでください!」

「エリスが飛び掛かってくるのが悪いんだろー! それに背中怪我してるから丁重に扱え‼」

「すみません…」


 私はすぐ様にヨシノさんを謝罪した。私が抱き着いたせいでしょうか、それにヨシノさんの背後からゼニガタ先輩も一緒だった。


「相変わらず……ピンピンしているな、エリス……」

「ゼニガタ先輩! なんでここに?」

「それはお前と……ジャンヌを救助に来たから……つい……」


 ゼニガタ先輩は、頬を赤く染まり、恥ずかしがるそうな顔で横を振る。


「それにジャンヌ、無事でなりよりだ」


 ゼニガタ先輩はジャンヌに声を掛ける。するとジャンヌはゼニガタ先輩に視線を向けて驚愕する。


「あなた……ゼニガタじゃない?」


 エリスの次に牢屋から、露出度の高いボロボロの服装を着た美少女が出てきた。ソーラー学園のスパイクラスに所属するジャンヌ・ダリア、彼女は正真正銘の女である。


 イケメンと勘違いするほどの顔立ち、桃色の唇に、金色の瞳、ボーイッシュの金髪、服装はボロボロ状態で巨乳が丸見えだ。しかもこんなにナイスバディな身体を持っている。


「ヨシノさんのエッチ……」

「ちが……違うよ! これは……なんでそんな目で見るんだよ!」


 エリスが不謹慎な人間を見た目で僕を睨む。


「取り合えず、ヨシノさんは後ろを向いて目を閉じてください」

「はい……」


 エリスの言う通りに、あっちを向けて逸らすように目を閉じた。


「どうしてあなたがここに?」

「それは……さっき言った通り、あなたを助けに来たから……」


 ゼニガタ先輩はまた顔を背ける。まさかツンデレと言うべきだろうか、オタクネタを生で見るのは初めてだ。


「それにこれを着ろ」

「え……いいの?」

「ああっ……こんな姿で、外を出歩けないだろう」

「あ……はい!」


 ゼニガタ先輩のお気に入りの茶色いコートをジャンヌ先輩に渡して、彼女はすぐに羽織った。


「ヨシノさーん! もういいですよ」

「わかった……」


 僕はようやくジャンヌが着替えを終えて、僕はすぐに振り向いた。コートを羽織ったジャンヌは、少し変態みたいな恰好をしている気分だ。


「それにヨシノ君じゃない、どうしてあなたも!」

「まあな、別に助けに来たわけじゃないからな! 馬鹿どもを制裁しに、ここにやってきた!」

「おっ……お前、デレデレしてるな、まさかジャンヌの……」

「ゼニガタ先輩も! いい加減にしてください!」


 どうして僕を変態呼ばわりされるんだよ。


 ヨシノは顔を赤くなり、手をブンブンと振る。アイツもツンデレ気質ならいいけど、少しはからかい過ぎたかな。


「全く、それにエリス……お前の忘れ物を届けに来た!」

「忘れ物?」


 ヨシノさんは上着の右ポケットを突っ込むように取り出したのは、銀縁の丸眼鏡、それは……私のソーラー・グラスだった。


「これは……私のソーラー・グラス! どうしてヨシノさんが持っているの?」

「それは……お前がドジだから、奪われた物を取り返したから、お前の為に……」

「ドジってなんですか! ドジって‼」


 いきなり逆切れされた、僕は必死の苦労で取り戻したのに、酷い仕打ちだよ。


「でも……ありがとうございます……」


 しかも、恥ずかしがるそうな顔で礼を言われた。エリスは丸眼鏡を手にする。


「どういたしまして……」


 僕もエリスのお礼の挨拶を交わした。


「それからゼニガタ先輩も、ジャンヌにソーラー・グラスを」

「わかった」


 ゼニガタ先輩は、スカートのポケットからアンダーリムの眼鏡を取り出した。ゼニガタはジャンヌのソーラー・グラスを手前に渡す。


「これ……お前のソーラー・グラス……」

「どうしてあなたが私のソーラー・グラスを持っているの?」

「それは……お前が……」

「何が言いたいの?」

「嫌々、これ《ソーラー・グラス》がないと何も出来ないから持ってきただけだから、私は風紀委員だからね!」


 ソーラー・グラスをすぐにジャンヌを渡すゼニガタ、引っ込み思案は限りない。


「ありがとう……ゼニガタ……」


 ジャンヌは小声でゼニガタに礼を言う。


「それにジャンヌ、終わったら……話がある」

「話……? どんな……」

「いたぞー! あそこだ―!」


 突然なから怒号の声が聞こえた。向こうから武器を所持した数人のテロリストが現われた。


「あらら……見つかっちゃった!」


 すぐにテロリストを遭遇し、いい場面が台無しだ。


 それにさっきの監視室にいたサターン星人の二人組も、他の仲間と思われる人間と一緒に拘束しに来たのか。


「こんな時に!」

「ヨシノさん、また捕まるのはゴメンです!」

「早く逃げないと!」

「待ってください!」

「「え?」」


 ジャンヌはテロリストに立ち向かい、手元に持っているソーラー・グラスを掛けようとしている。


「ここは私に任せて!」


 ジャンヌは手に持っているアンダーリムフレームのソーラー・グラスを着用した。


武器ウェッポン変換チェンジ


 ソーラー・グラスを掛けた途端、突然ジャンヌの手から炎が出現し、炎の勢いが収まると、ジャンヌの武器である太剣が現われた。


「君に謝らなければならない。昨日の出来事で、あなたのクラスメイトを酷い事をしてごめんなさい!」


 今更謝罪するのか、後でいいじゃないか、それにジャンヌが女の子だと、被害に合ったシアにどう説明するのか考えないと。


「まあ……演技ならいいけど、怪我をしてる身体で大丈夫なのか?」

「少しは……痛むけど……」


 ジャンヌの顔には殴られた痣が残っていて、身体中に鞭で何かを打たれた傷跡もあった。満身創痍状態で大丈夫だろうか。


「貴様ら、逃げられないぞー!」


 テロリストは真っ先で、こっちに向かってくる。


ファイヤー防御プロテクション


 太剣から渦巻うずまきの炎が現出げんしゅつし、ジャンヌはこちらに追いかけてくるテロリストの方へ大剣を振った。


「ウワ―! なんだ!」

「あちち! クソ―炎のせいで道が、これじゃあ通れない!」


 ジャンヌの使用した必殺技の【ファイヤー防御プロテクション】のおかげで、テロリストは火の海と化した道を通れず、立ち往生状態になった。


「炎が消えるまでは時間が掛かる。今のうちに早くここから逃げないと!」

「でも……出口は何処に……」

「待って! 地下牢獄には、確か……非常用の脱出階段があったはず、地下の警備室にあったわ!」

「わかるか?」

「ここに潜入して、何か月もいるから」

「安心ね、早くそこへ行きましょう!」


 ジャンヌの案内で、非常脱出階段がある地下警備室へと向かった。









「ここか……」

「入ってみましょう」


 警備室に辿り着いてドアを開いた。辺りは荒らされ、周囲には襲撃しゅうげきされた痕跡こんせきが残されている。しかし僕らが目にしたのは、


「駄目だ! 非常階段のドアが塞がれている」

「なんですって!?」


 外に繋がる非常脱出階段の扉が瓦礫で塞がれていた。この収容所は何十年前にも老朽化が激しく、崩れたに違いない。


「どういう事なの、最初から非常階段の扉は影響がなかったのに!」

「まさか、さっきので崩れたんじゃないでしょうか?」


 ジャンヌの説明によると、潜入調査で地下牢獄の警備室に立ち寄った事を扉は正常だった、しかし今はとてもドアが通れずに開けない状態だ。


「ジャンヌの言うことは本当だな……」

「このままだと、奴らにまた捕まってしまいますわ!」


 ソーラー・グラスを使用した必殺技には、制限時間があるため、数十分で炎が効果が自動的に消える仕組みになっている。


「ほほう……派手な客人とは、貴様らか……」

「「「「!?」」」」


 その時、僕らの4人以外に誰かの声が聞こえた。


「誰だ!?」


 警戒しながら周囲を見渡すと、僕ら以外に人の影と姿など誰もいない。耳元から野太い男の声がした。


「幽霊じゃないでしょうか?」

「そんな訳あるか!」

「あの声には聞き覚えが……」


 ジャンヌが慌てるような顔で、大剣を構え、警備室の周囲を警戒した。次の瞬間、


「グハッ!?」

「ゼニガタ先輩!」

「イリス!」


 突然イリスが、誰かに殴られた衝撃で吹き飛ばされるように転倒する。


「みんな気を付けて! これは奴の仕業ーガアッ‼」

「ジャンヌ!」

「ジャンヌさん‼」


 ジャンヌさんがトラックに跳ねられたかのように、吹き飛ばされて、壁に激突する。


「気を付けろ! 他に誰かいる! 透明で見えなくしているに違いない!」

「ヨシノさんの言った可能性は高いです!」

「どうすればいいんだ!」

「今ソーラー・グラスで赤外線モードに切り替えてください!」

「わかった!」


 僕はすぐに、ソーラー・グラスのボタンで、赤外線モードに切り替えた。レンズ越しの視線から、体温がわかる熱探知がすぐにわかる。


「あっ! 見えましーギャア!」

「エリス!?」


 目の前にいるエリスが突然、宙に浮かぶように、誰かがエリスの胸辺りに掴まれている、赤外線の視界から見ると、赤い熱には、エリスと透明人間と思われる奴が映し出されていた。


「エリス! 待ってろ!」


 僕は襲われているエリスを助け出そうとした。


『ふん!』

「キャー! 避けてくださーい‼」

「まさか、投げる気か!」


 透明人間は、エリスをボールのように、僕の方へ投げてきた。


「エリス! 危なーグホッ!?」

「グハッ!」


 助けようとしたところ、僕はエリスにぶつかり、ボールのように転がってしまう。


「貴様らにはいい度胸があるようだ」


 その時、透明人間が霧みたいに姿を現した。


「透明人間の正体はお前か!」

「ああそうだ……」


 透明人間の容姿は、2メートルに近い大男、体格はガッチリした筋肉、、腕まで破れた半袖はんそで、緑色の迷彩の長ズボン、黒いブーツを履いていた。顔と腕辺りが痕が残っていて、それから奴の顔に掛けている丸いサングラスを着用していた。しかもレンズにはカラフルな色が鮮やかに輝いていた。


「お前も適合者だったのか?」

「だとしたら……俺が適合者と言いたいのか?」


 コイツの身体中に傷跡が残っている、軍隊に所属していた元兵士、あるいは傭兵だと思う。奴にはソーラー・グラスみたいなサングラスを掛けている、自分の姿を消せる透明な能力を発動しているのか。


「ヨシノさん、大丈夫ですか!」

「大丈夫、早く退いてくれ?」

「すみません、本当に……」


 エリスは慌てて立ち上がり、僕らを襲った相手の男を、応戦しようとした。


「気を付けて! ソイツの掛けているのは……ソーラー・グラスじゃ……ない」

「エッ?」


 ジャンヌが奴の掛けているソーラー・グラスを話した。相手のサングラスがソーラー・グラスじゃない? 一体どういう事だ。


「やはり貴様らにはいいことを教えてやるぞ!」

「何をだ!」


 大男は嫌な嘲笑をした顔で、奴の掛けているソーラー・グラスを話した。


「俺の掛けているのは、お前らと同じソーラー・グラスじゃない」

「何!?」

「なんですって!」

「これは……人工ソーラー・グラスだ!」

「人工!?」

「まさか……違法物のですか!」


 エリスは畏怖いた顔で仰天する。


 人工ソーラー・グラス、修業時代にお師匠様から聞かされた事がある。人工ソーラー・グラスは、とても危険物で違法に製造している特殊兵器、適合者でない人間が掛けると、同じように能力と武器を具現化するが、でも実際に暴走する可能性が高い、犯罪行為をする輩も多く存在する。


「これで私も怖いものなしだ! ガハハハッ!」

「貴様―!」


 僕は奴の嘲笑う態度が気に食わず、許せない、僕は大男に向かって突撃した。


「遅い!」

「ガハッ!?」


 大男は素早く交わした、すると僕の顔面の右頬から、鉄の味がしたように痛覚を感じた。


 目の前に大男の拳で僕の顔面を殴った。自動車に跳ねられるように転んでしまう。


「ヨシノさーん‼」


 エリスは不安そうな顔で、僕に向かって駆けつける。


「来るなエリス! コイツは……」

「おっと、おしゃべりはここまで……」

「グハッ‼」


 今度は腹を蹴られ、奴は瞬間移動を出来るのか。


「ヨシノさ……」

「そこの小娘! 黙ってろ!」

「キャア!?」


 大男は一瞬でエリスに接近し、拳でエリスの顔面に直撃し、エリスは殴り飛ばされる。


「エリスー!」








「あーあっ……こんな出来事になってしまうとは……」


 僕は奴のアジトに、何やら騒動が発生するのを目にして、おもしろいから向こうのがけで見物していた。


「これで、奴らの目的はここまでだな……」

「なんだ? 君もいたのか?」

「ええ……」


 僕の背後から10代前半の大きな丸眼鏡を掛けたゴスロリドレスを着た美少女が現われた。


 彼女はクロウ、僕の仲間である。彼女は何等かの事件で、僕と同じ黒髪に変貌し、旅先で彼女と出会った。僕は自分の黒髪を搔き上げながらクロウに話した。


「それに様子はどうだった」

「外にいる連中は、全員ソーラー・ポリスに捕縛された」

「それで、中にいるアイツは?」

「それが、例の物を使って戦闘中、相手は赤髪と白髪のハーフで、あなたと同じ年齢の少年よ」

「赤髪と白髪のハーフ、僕と同じ年齢の少年?」


 クロウが言ったハーフの少年、赤髪はアリス星人と、白髪はプルート星人のハーフとは一体。


「どんな少年だった?」

「ソーラー学園の生徒、赤い丸眼鏡のソーラー・グラスで応戦している、それに顔のおでこ辺りに傷跡が……」

「傷跡!?」


 おでこの傷跡、赤髪と白髪をしたハーフの少年、もしかしたら僕の知っている人物は彼しかいない。


「まさか……こんなところでヨシノ兄がいるとは……」


 大事な唯一の家族であるヨシノ・オオウチ、僕の義兄である。


「どうしたの、ハルタ?」

「なんでもない」


 私の大事な黒髪少年のハルタは、オクタゴンフレームの眼鏡を押しながら嘲笑う顔で、奴らの基地を眺めていた。


「兄も適合者になるとは」





 












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