15話
出発してから一時間が経過した。暗闇で山道を走行するジープで窓側の外を見つめていた。
(星空が綺麗だ……)
夜空に浮かぶ数々の星には様々な惑星とビックムーンが出ている。ムーンとは、ソレール系の宇宙にある何もない恒星。それに少し欠けているところもある。昔は旧連邦の本拠地が置かれ、ソレール戦争の最中に戦火で半壊した影響でショックを受ける人も多くいた。
(よく父さんと母さんと一緒に天体観測してたな)
昔はよく両親と一緒に星空を眺めていたな、あの頃の事を思い出す。両親が生きていた頃、みんなと一緒にキャンプで星空と流星を観測した。
その時、ジープは一旦一時停止する。もう到着したのか、僕は運転席に座るゼニガタ先輩に話す。
「着いたの?」
「イヤ……」
「何故止めたんですか?」
「ここからは歩きだ、降りろ」
「そうですか」
僕はシートベルトを取り外し、自動車のドアを開いて降車する。
「辺りは暗いですね」
「ああ……」
周りは暗闇に包まれる山奥、前の車と後ろの車から学生とソーラー・ポリスの職員と特殊部隊の連中が車から降車して準備に取り掛かる。
「ヨシノ、暗闇で辺りが見えないからソーラー・グラスに赤外線に切り替えろ」
「相当便利なところがあるとは」
僕はソーラー・グラスを起動して、赤外線のボタンをタップして赤外線に切り替えた。すると目の前の視線には赤く染まる体温がハッキリと見える。
「さすがソーラー・グラス、便利で使いやすい」
「それはよかったな、それに武器を出しとけ、戦闘に必要だから」
「はい」
ソーラー・グラスの武器の印をタップしてクリックする。次に閃光のように
武器が出現、刀ではなく美少女の姿だ。
「おはようございますヨシノ君……アレ? ここって山奥じゃないですか?」
スマイル顔で挨拶するセーラー服姿の三つ編み眼鏡ッ娘のソーラー・グラスのA.I、彼女が目覚め、山奥の山道を謎めいた顔で周囲をキョロキョロと見渡す。それに周囲の連中は極端な顔つきで、僕のA.Iを見つめる。
「おい見ろよ」
「あの転校生の武器って美少女なのか?」
「チョーうらやましい」
「お前……またその姿なのか?」
「はい。ヨシノ君にピッタリだから気になりましたので、つい……」
彼女はウキウキとした表情でスカートをヒラヒラと動くように身体を回転する。
「それに早く刀に変身してくれ、急いでいるんだけど」
「刀ですか、それに何が起きたのですか?」
A.Iは気になる顔をしながら僕に話しかける。しょうがなく彼女に本当の事を談話する。
「それは……エリスが攫われたから」
「え……? それって、あのシスターさんですか――!」
A.Iは奇妙な生物を目撃した目で驚愕する。
「まさか彼女さんが誘拐! どうして守ってくれないんですか!」
いきなり説教を始めたA.Iはギロリと僕に近づいて、胸元のネクタイを掴まれた。
「それは……怪しい奴を追跡したから……つい……」
「ついじゃないでしょう! あなたは彼氏失格よ!」
「彼氏じゃないし!」
別に付き合って恋愛した訳じゃない、ゼニガタ先輩に罰を受けて、デートをしただけなのに、僕はゼニガタ先輩を睨むように視線を向ける。
「まあまあ、その辺にしなよ……えーと……名前は?」
「名前ですか? アレ……私……なんだっけ?」
「名前ないのか?」
「はい」
そういえば、僕のソーラー・グラスのA.Iには名前がない。生まれたばかりだからしょうがない。
「じゃあ……名前を付けるならヨシノさん、お願いします……ご主人様」
「何故僕が! それにご主人様ってお前……」
どうしてオタクネタを、まさか辞書とネットで調べたのか、すると周りにいる連中が噂を語り掛けている。
「おい聞いたか?」
「今転校生の事をご主人様と呼んだぜ?」
「クソ―羨ましい《うらや》!」
「まさか……奴はアレじゃないか!」
ヒソヒソと死んだ魚の目で僕を見る。僕って悪臭な犯罪者扱いしているじゃないか。
「わかったよ。名前は……えーと……」
A.Iの名前をどう付けるか
僕は頭の記憶から思いつく。昔は読書した神話のマンガで、神様がとある大陸で種をバラまいて人間が誕生する物語を愛読した。人間が種で誕生するシーンがとても気に入った。
「ん……じゃあお前の名前は……タネ!」
「タネ?」
「そうだ。お前の名前はタネちゃんだ!」
「タネちゃんですか~いいですね~」
「いいのかよ!」
A.Iはタネという名前に気に入った。タネはウキウキする表情で子供のように燥ぐ《はしゃ》。少しは落ち着けよ。
「じゃあタネちゃん、刀に変身してくれ、丸腰で戦えないから」
「わかりました。名前を頂いて光栄です」
「どういたしまして」
タネに例を言うヨシノは顔を恥ずかしがる。
「じゃあ変身!」
ポーズを取って、タネの身体は光明に包まれ、人間の形から縮小して刃物の武器に変化する。ヨシノは右手で刀(タネ)を持つ。
『変形完了』
「そうだな、ゼニガタ先輩、準備出来ました。そっちはどうですか?」
「大丈夫……問題ない」
奴らのアジトに向かう準備が整えた。次にゼニガタ先輩はサリアの前に近づく。
「サリア……お前はここで待機だ、本校の増援が到着次第に合流する」
「はい。私はここに残って、応援の人が来られたら、私も応援に向かいます」
「ああ……」
するとゼニガタ先輩は全員に向けて大声を上げる。
「じゃあみんな……出発だ!」
「「「「「はい!!!!!」」」」」
テロリストの奴らが身を隠している軍の廃墟のアジトへ向かった。
「ここがアジトか……」
山道から徒歩数分でテロリストのアジトに到着した。外観は軍の基地で倉庫がある。刑務所のような牢獄の建物もあった。大分傾いて脆くなっている。僕たちは草と木の茂みで身を隠して状況を確かめる。
「見張りはどうだ」
「はい……調べてみます」
ゼニガタ先輩はスクエアフレームの眼鏡を掛けた男子学生に声を掛ける。彼は眼鏡のブロを押す。ヨロイからアンテナが出てくる。赤外線モードに切り替えたのか、外にいる見張りを調べた。
彼のソーラー・グラスはヨロイのアンテナを下げる。その男子がゼニガタ先輩に声を掛ける。
「外の見張りは10人、建物のドアを見張っているのは5人ぐらい……」
「そうか、ご苦労……」
ゼニガタはその男子に礼を言う。次にゼニガタ先輩は全員に声を掛ける。
「みんな……準備はできているな!」
「はい……」
「いつでもいけます」
「準備万端」
「久々の戦闘ですね」
全員武器を取り出す。刃物や重火器や銃器、それから日常品や本などを持っている者もいる。戦う気満々だ。
「全員……突撃ー!」
「「「「「おおおおお――!」」」」」
全員一斉に廃墟のアジトまで全力全開で走る学生とソーラー・ポリスと武装軍の人間たち。
「僕もいきますか」
急いでテロのアジトに向かおうとしたその時。
「ちょっと待てヨシノ!」
「なんですかいきなり」
背後から急に、自分の肩を掴むゼニガタ先輩に止められる。
「少しお前に話したいことがある」
「話……?」
ゼニガタ先輩は苦い表情で、何か話せないのがあるのか。
「お前……昨日の逃亡者は知っているだろう?」
「はい……そうですか」
昨日の逃亡犯である学園の風紀委員を務めたクソイケメン男子の事だ、アイツまさか全惑星の指名手配でもしているのか。
「アイツは……私達と同じソーラー学園の生徒なんだ。彼女は女子生徒だ」
「え……?」
僕はゼニガタ先輩の言葉でポカンとした。
「え……エ―――!」
僕は一斉に驚愕する。僕の通っていた学園に潜んでいたテロリストの仲間であるアイツが美少年ではなく、美少女だったのか。
「ちょっと待ってください。じゃあ僕が通っていた学園の生徒じゃなくて、ソーラー学園の生徒だったのですか、それに男子じゃなくて女子ですか!」
「ああそうだ。彼女の名前はジャンヌ・ダリア、ソーラー学園高等部一年生のスパイクラスだ」
「スパイクラス?」
スパイって、映画やドラマでよくある話じゃないか、するとゼニガタ先輩は真剣そうな顔で話す。
「彼女は2週間前に奴らの残党の調査で潜入捜査をした。出来事が起きる前日、一昨日の連絡が来たが、昨日の事件後に通信途絶状態になった」
「そうですか……それって僕のせいですか!」
自分が昨日の立てこもりのテロリストを一掃したせいで、ジャンヌという上級生の邪魔をしてしまったのかと心から思ってしまう。
「イヤ違う。彼女の意志と決意だ」
「どういうことですか?」
「私は以前、ジャンヌの経歴を調べたんだ。彼女の両親は奴らがヴィーナス星で無差別テロを起こした。ショッピングモール辺りにで、ジャンヌの家族が巻き込まれて死亡した」
「え……?」
スパイであるジャンヌの家族があのテロリストに殺された。彼女にも僕と同じ家族を失った暗い過去が、ゼニガタ先輩は薄暗い顔をしながら話を続ける。
「彼女の目的は……奴らへの復讐だ」
「つまり……テロリストを殺す為に潜入捜査を志願したと」
「そこまでは……詳細不明だ」
ジャンヌの家族を奪った奴らへの報復する気だ、僕は……ジャンヌの連絡が来ないのは心配に及んだ。
「ヨシノ……ジャンヌが無事なら、エリス一緒に助けてくれないか」
ゼニガタ先輩は姿勢を整えて頭を下げる。
「何故僕だけですか? 他の人たちに頼まないのですか……?」
「ジャンヌは誰も友達が一人もいない。彼女は転校してからずっと一人だ。私は彼女の事が心配で放っておけないから」
「……そうですか」
ジャンヌも僕と同じ孤独な学園生活を送っていたとは、家族を失ってからずっと一人。僕はジャンヌの事で頭から離れない。彼女は演技のようにシアの殺そうと脅しの振りをしていたのか、僕はジャンヌも同じ、僕は決心した。
「わかりました。ゼニガタ先輩も一緒に行きましょう?」
「はい?」
ヨシノは急に真剣そう顔付きをする。私に向けて睨むように目で直視する。
「ゼニガタ先輩もジャンヌと友達になりたかったでしょう、それなら一緒に助けて『友達にしてください』と告白しましょう」
「え…でも私は……」
「誓って!」
「はい?」
「誓って!」
「はい……」
ヨシノは真面目そうな顔で凝視する。私は神様の懺悔をする。
『ジャンヌが無事でいられますように……彼女と友達になれますように』
私は心の奥から神様に告げた。これは大昔からずっと、ソレール系の全惑星には、神様を祈りと神頼みなどを恵んだり、懺悔をして捧げるという伝統が広まっていた。
しかし治安の一族であるゼニガタ家には神を祈る事と、懺悔をしない行いが多かった。でも今の私は生まれて初めて懺悔と神様を祈った。
「神様にお願いした」
「したわよ」
「よろしい」
ヨシノはスマイルな顔で、右手にしっかりと刀を握って、アジトの方へ指を指した。
「ゼニガタ先輩……エリスとジャンヌ救出へ行くぞー!」
「おおー!」
私とヨシノは少し気合いを入れるように大声を上げて、捕らわれているエリスとジャンヌの救出する為に、テロリストのアジトへと向かった。
「大変ですボス!」
「なんだ騒がしい! ドアをノックぐらいしろ!」
ドアから飛び出してきた部下の男が、慌てて私の机の前に近づいて敬礼をした。
「報告します! ソーラー学園とソーラー・ポリスの奴らが攻めてきました!」
「そうか……ご苦労、下がってよい……貴様も攻撃に備えろ!」
「ハイ! 失礼しました!」
男は一目散に部屋を出て行った。もうここにもソーラー・ポリスの治安連中と、ソーラー学園のガキどもが攻め込んできたとは、久々に暴れ出したい気分だ。
「クク……これを使う時が来たようだな」
俺様は机の引き出しに、とっておきの秘密兵器を取り出した。それは……眼鏡ケースである。
「これで奴らに復讐出来る……」
手に持った眼鏡ケースを握りしめ、あの
全身の力が
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