ソーラー・イン・グラス 〜修道女に眼鏡を渡されて掛けたら適合が一致して転校した僕!〜
三太
シスターに渡された眼鏡‼
プロローグ
「なんでだよ……」
僕は怯え、震えていた。自分と同じ年頃の少年が立っている。炎の勢いで屋敷は火の海に。
無数の人間が血まみれ状態で絶命している。鋭い刃物の凶器で斬られたのか切り刻まれたり、胴体と首を
「なんで……こんなことをしたんだよ……」
「……」
少年は無言のまま。
ヨシノオオウチはこの星の有名な資産家・オオウチ家の御曹司である。祖父の100歳誕生日パーティーで悲惨な事件がおきた。出席していた人たちとオオウチ家の家族が巻き込まれ、誕生日パーティーは殺戮の場と化したのだった。
床には首や腕や足などがバラバラになっている男女の死体があった。その中には僕のお父さんとお母さんの無惨な姿もあった。
刀を持った黒縁メガネを掛けた少年がこちらに近づいてくる。
僕は恐れ、ビクビクと怯えた。その少年は……父が養子にした僕の義理の弟だった。弟の右手には刀が握りしめられ、体は返り血を浴びていた。
そう……目の前にいるのは僕の弟、こいつが父さんと母さんを殺した。
「どうしてだよ! なんで父さんと母さんを殺した! お前の事を大事にしてくれたのに、なんで!」
「それは僕の本当の親じゃないからさ。彼奴ら全員僕を見下していたから……だけど兄さんは特別だから……でも、偽物の父さんと母さんはいらないんだよ!」
弟は手の血を擦るように顔を拭く、弟の言ってる事は本当だ。父さんが養護施設から引き取った子供だった。
しかし、祖父母と親戚は赤の他人である弟の事を毛嫌い、弟に嫌がらせをしていた。僕はそんな弟を毎日ずっと必死に守っていた。
地獄は訪れた。弟は昨日問題を起こしてしまい、家の手伝いの者に無理矢理何も使われていない部屋に閉じ込めてしまった。
父さんと母さんはショックを受けたが、祖父母に他人の子供にはもう関わるなと無理矢理引き離されてしまった。しかし僕は弟のしたことを信じてはいなかった。
昨日は僕と弟は一緒に居た。誤解だと話したが、祖父母には信じてもらえなかった。
「だからって殺す事はないだろう! それにどうして僕だけでなく、他のみんなの親まで殺すの!」
若い男女の死体の近くは何十人の子ども達が泣いていた。
「パパ……起きてよ……」
泣きながら父親をユサユサと動かす子ども。
「ママー! ママー!」
母親が殺され号泣する少女。
「お父さん……お母さん……」
「なんで……なんで……」
仲が良かったミヤ姉とヨシカが、両親の死体に抱きついている。
「それに兄さんは大事な家族だから……それに僕を助けなかった事に罰を与える……」
「え……?」
弟がボクに向けて右手に持っている刀を振った。痛みを感じた。目の前に赤い液体が流れてきた。それは……自分の血。
「アーーーーー!」
「僕は兄さんを傷つけた。だから僕と同じ苦しみを……」
弟はニヤリと笑った。オデコ辺りに切り傷を負った僕は大量な流血を両手で押さえながら倒れ込む、足をバタバタしながら激しい痛みを感じた。
すると弟は何かまた話しを続けた。
「兄さん……僕はここを出ていく……このソレール系は何かを隠している」
「隠している!?」
弟の訳のわからない言葉は世界に隠している言葉、一体ソレール系の秘密とは。
弟は黒いマントを羽織って、特撮の悪役の幹部みたいな格好で出口の方へ向かって行く。
「待てよ……どこに……行くんだよ……ハルターーーーーー!」
「目的は言えないよ、兄さん……いつか会える時は……」
「お前……を……見つ……け……」
義弟・ハルタは後ろ姿で振り向くように僕を見ながら立ち去ろうとした。僕は怪我の痛みを耐えながら勢いよく声を挙げた。
「お前を絶対見つけ出す! ハルターーーー! お前を見つけ出して」
この時……炎の渦に飲み込まれハルタ立ち去っていった。僕は頷くように倒れて気を失った。
しばらくすると駆けつけた消防レスキュー隊と警察隊に無事に保護された。生き残ったのは僕を含む子どもだけでたったの数十人だった。
気を失った僕は目を覚ますと病室みたいな施設。どうやらあの事件から三日ずっと眠っていたらしい。
身寄りのいなくなった子どもはそれぞれ親戚に引き取られ、僕だけが施設に残った。友達も作らずにずっと一人で部屋に引きこもった。
事件から半年経って引き取り人を名乗る女性がやってきた。すると病室の自動ドアが開いて引き取り人女性はいきなり言った。
「へえ……おでこの切り傷の痕が残っているな……相当やられたな……」
「これは僕の治らない汚点だ……」
容姿は黒い褐色美肌と腰まで伸びた長い緑色の長い髪、エメラルド色の瞳としたくりっとした目、桃色の唇で凄惨な美女。スラリとしたモデル体格、胸がかなり大きい。
僕の引き取り人はジュピター星人。
「そんなエッチな目で見ないでくれよ。坊やに思春期は早すぎる……」
「僕は変態じゃない!」
顔を赤く染める引き取り人は、胸を両手で隠しながらはずかしげに話しかけてきた。
「ところで坊や……」
「坊やじゃなくてヨシノ、名前で呼んで!」
僕は彼女に言った。
「わかったヨシノ」
「お姉さんの名前は?」
「それは秘密!」
「ずるい!」
彼女は自分の名前を言うのがイヤなのだろうか。名前を言うまで僕は文句をいったが、途中で彼女は話しを変えようとしていった。
「今日からお前の親代わりだ、頭脳と身体を強く立派に育ててあげるから感謝しなさい!」
「頭脳と……身体?」
「人間は強く生きなければ……いけない!」
「分けわからない……」
強く生きると意味がわからない、彼女は黒ジャンのポケットの眼鏡ケースを取り出した。
ケースを開け彼女はティアドロップゴールドフレームのサングラスを取り出し、彼女はそれを掛けた。
「なんでサングラスを掛けるの?」
「いいじゃない……これはただのグラサンじゃないわ! ソーラーグラス、いわゆる眼鏡型端末兵器だ」
「ソーラーグラス?」
「あちゃー! 子供にはわからなかったんかい!」
何を言ってるのかわからない。そのジュピター星人の美女が話しを進めるように人差し指をたててニッとするようなスマイルでこう告げた。
「アンタはアタシの子供だから……弱い物を守る最強の人間になってあげるわ!」
「最強……? 何それ?」
それが、僕とお師匠様の出会いだった。
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