作戦会議

 ブラッドとリリーが戻ってくる。二人は可愛らしいデザインのケーキを皿に乗せて席に着いた。白い生クリームが塗られたケーキの上には兎の姿を模した菓子が乗っている。

「ここが本拠地なわけだけど。どうやって叩く? ナイトは他を潰して回るようなことを言ってたな」

 勇者は言葉にして再確認した。人さらい集団を突き止めはしたが、ここまで大きく、そして溶け込んでいる存在をどうすれば良いのだろうか。

「頭を潰すのが一番ね」

 ブラッドはフォークを使って、ケーキの上で愛想を振り撒く兎の首をもいだ。そして頭を口に放り込む。それを隣のリリーが驚愕の表情で見つめている。意見したのはハヤブサだった。

「だがよ、こうも規模のでかい店じゃ、簡単には行かないだろう。まず、どこを狙うかを決めて……」

「代表はバニーちゃんでしょう。前の旅で顔は知ってるから、サッと折って来る? ねえ?」

「……大事なのは裏の仕事を知ってるのは誰かってところだろ。これだけ大きい組織だ、全員が知ってるとは思えない」

 勇者の言葉に他の三人は黙った。

「みんなの言いたいことはわかる。じゃあ、全員確認しますか。なんてことは出来ない。だから、この店、もしくはこの町にある裏稼業の本拠地を探そう」

「そこにいれば間違いないですしね」

 リリーが頷いた。

「まずは聞き込みするのが一番早いかな、出来れば、他の店で」

「他の店? 俺らが固まってたらバレやすいって話か?」

「いや。誰かの悪い所ってのはそいつのことが嫌いな奴から聞くのが一番早い。嘘か本当かはわからないけど」

 勇者は言った。商売敵の黒い噂は重要な武器だ。信憑性に関わらず、もしかしたらと思わせることさえ出来ればいいのである。

「聞き込みだなんて、前の旅みたいになってきたわ」

 ブラッドが兎の残骸を砕き口へ放っていく。たしかに、これまでの旅で町の人間に聞いて回るようなことはほとんどなかった。というよりも、聞いて回るようなことがなかったと言った方が正しい。

「じゃあ、ピィちゃんの親でも探しに行きましょっか」

 ブラッドは微笑んだ。

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