弱い仲間
女王と姉を残し、三人が洞窟の前に到着すると、入り口にハヤブサが立っていた。ハヤブサは三人には気付かずに洞窟の中を睨みつけて身構えている。
「大丈夫……入れる……入れる……オロチの時を思い出せ……」
ハヤブサは肩を上下させながら息を切らしている。勇者はハヤブサの背中を見て、まるで洞窟に欲情しているようだと思ったが、さすがに口には出さなかった。
「ハヤブサ、どうした」
勇者が声を掛けると、ハヤブサくるりと向き直る。顔色は悪く、瞳孔が開ききっていた。
「お、おお。勇者か。元気そうだな、よかった」
「ハヤブサ、どうした」
勇者が同じ言葉をぶつけると、ハヤブサは見る見る表情に陰を落として行く。
「役に立たなかったから……洞窟を克服しようと……」
ハヤブサの顔は真剣だった。勇者はゆっくりと近付いて彼の肩を叩く。
「ドラゴンが村を出て、お前は何もして来なかった。この一年間で克服することが出来たんじゃないのか? それでもしなかったのはお前だ」
勇者の言葉にハヤブサは驚きを隠せないようだった。
「優しい言葉をかける流れじゃねぇの……?」
「あの洞窟でどれだけ地獄を見たと思ってるんだ」
「いや、でもよ……」
二人の様子を見たブラッドが笑い掛ける。
「ピィちゃん。今から私たち、その洞窟の中に入るの。特訓だと思って一緒に行きましょう?」
「ブラッド……」
「苦手なものは誰にだってあります! 頑張りましょう!」
「リリーちゃん……!」
「洞窟ではお前は無能だという自覚を持つべきだ」
「優しい言葉をかける流れじゃねぇの!?」
ハヤブサは声を荒げた。勇者は舌打ちをならしてハヤブサの背中を叩く。
「優しい言葉をかけるのはお前が挑戦した後だよ、ほら、行こう」
勇者は笑って洞窟に入って行く。それにブラッドとリリーが続いて行く。その際にハヤブサに頷きかけた。
ハヤブサは力強く頷き、勇者を呼び止める。
「勇者! ……手を繋いでくれ!」
勇者は洞窟の奥に走り出した。
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