強い仲間たち

 勇者様の元へ洞窟にいた三人が顔を出す。包帯を巻いているが、全員がいつもと変わらぬ動きをしている。

「勇者様、よかった!」

 部屋に入るなり、リリーが嬉しそうに声を上げた。

「リリーちゃんこそ、大丈夫?」

 勇者が声をかけると、リリーは頷いた。彼女の魔法には助けられた。しかし、嫌な思いをさせてしまったかもしれない。そんな気持ちからか、勇者は思わず目線をずらしてしまう。

「ブラちゃんは?」

「大丈夫大丈夫。心配されるなんて久々だわ」

 ブラッドは照れ笑いを見せる。前衛で戦い続けてくれた彼女がいなければ勝てる戦いではなかった。

「お姉さんは」

「アタシは元気です! 洞窟ではロクな活躍もできずに面目無い……」

「そんなことはない。あの時、助けられなかったら死んでたよ」

「やっぱり? まあ、ね。アタシは優秀なので!」

「お姉ちゃんったら、調子良すぎるよ」

 フィーとリリーは笑顔を見せる。勇者も特に突っかかることなく姉妹のやり取りを眺めた。今回で、妹に対する自責の念を少しでも軽くできていれば良いのだが。全員の顔を見ながら勇者は言葉を漏らす。

「みんなの助けがあったから、あの魔術王とかいうやつを倒せた。というか、俺はほとんど何もしてないしな……うん、何もできなかった」

 勇者は自分の言葉に心を痛めてしまう。結局は戦神の力で事なきを得たに過ぎない。今はただの、強い仲間たちの同行者でしかない。黙る勇者を見た女王が口を開く。

「あの戦神様に気に入られるということは、とても珍しいことです。先代の勇者様は声を聞くこともなかったといいます」

「そうだ、礼を言いに行かないと」

 勇者は立ち上がった。しっかりと自分の足で立てることを確認すると、女王に頭を下げた。女王は微笑み頷く。

 何故、力のない自分に問いかけ、そしてさらに力を貸してくれたのか。勇者は戦神に聞きたいことを頭でまとめながら部屋の入口まで歩いた。

「ハヤブサは?」

「落ち込んでるわ」

「そうか。じゃあ、仕方ないな、洞窟に行こう」

 勇者はそう言って部屋を出た。ブラッドもそれに続く。

「あ、案内しますね!」

 リリーも2人を追いかけて部屋を出る。

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