WEB小説の女神
ある日、WEB小説に勤しむワナビ達の間に奇妙な噂が広がります。何でもどこかにある森の泉にはWEB小説の女神がいて、ワナビ達の望みを叶えてくれると言うのです。
大抵のワナビは都合が良過ぎるとこの噂をまるっきり信じませんでしたが、物好きな3人のワナビ達は噂を信じ女神を探す旅に出ました。
女神を探す旅は困難を極めたものの、やがてある善良な村人の手引で3人は件の森へと到達します。みんなそれぞれの希望と野望を胸に抱きながら森の中心部にあるとされる泉を目指して歩を進めるのでした。
その泉はWEB小説のワナビにしか辿り着けないとされており、それ以外の人は霧の中で方向感覚を失い、いつしか森の外へと誘導されてしまうとされていました。
しかし今回は3人が全員ワナビだったため、あっさりと泉はその姿を現します。
「貴方が欲しいのはPVですか?評価ですか?」
3人が泉に到着すると、すぐに女神は姿を現し彼らに質問しました。この質問を受けたのっぽのワナビはすぐに自分の望みを口にします。
「私は、PVが欲しいです」
「ならば、小説家になろうの住人になるが良いでしょう」
女神の言葉を聞いたのっぽのワナビはなるほどと納得してその言葉通りにしました。
「私は、評価が欲しいです」
次に望みを口にしたのは眼鏡のワナビでした。彼の言葉を聞いた女神はにっこり微笑むと答えます。
「ならば、カクヨムに行きなさい」
女神の言葉を聞いた眼鏡のワナビはなるほどと納得してその言葉通りにしました。
こうして3人の内、2人のワナビは望みが叶って小説を執筆する為に取り敢えずそれぞれの家に帰って行きました。
残されたのは最後のひとり、ぽっちゃりワナビです。彼は体型通り少し欲張りなワナビでした。
「僕はPVも評価も両方欲しい!」
彼は思いの丈を女神に向かって切実に訴えます。
「あなたはその為にどんな努力を?」
女神は彼に質問をしました。ぽっちゃりワナビは水を得た魚のように調子良く答えます。
「評価の甘いお人好しワナビを見つけては彼らの作品を手当たり次第にお世辞レビュ瀑しましたし、複垢も作りました!2ちゃんでスレを作って宣伝もしたし、ジャンル被りな作品を書いている人を見つけたらある事ない事を書いて評判を下げたりもしました。それでも理想には程遠いんです!」
この時、彼は忘れていたのです。WEB小説の女神が正義の女神であった事を。
「そうですか、分かりました。あなたにWEB小説を書く資格はありません」
女神はぽっちゃりワナビにそう言うとすっと姿を消してしまいました。
望みが叶えられなかったぽっちゃりワナビは憤慨し、不機嫌なまま自分の家に戻ります。この出来事をネタにしようと、すぐに登録していた投稿サイトを開きました。その画面を見た彼は絶句します。
「嘘だろ?何で?」
何と彼のアカウントは使えなくなっていたのです。複垢等の行為は確かにどの投稿サイトも禁止している項目です。
しかし、それまでは運営にバレずに上手い事やり過ごせていたのです。ぽっちゃりワナビはどうしてこうなったのか頭をフル回転させました。
「ああ……っ!もしかして」
そうです、それは女神の仕業だったのです。彼の罪の告白を聞いた彼女は早速その力を行使したのです。
その後、女神の祝福を受けたのっぽワナビと眼鏡ワナビは主戦場のそれぞれのサイトで一定の人気を誇る程になりました。
しかし一緒に旅をしたぽっちゃりワナビだけは女神によって罰を受け、以後、どの投稿小説サイトにも登録出来なくなったと言う話です。
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