第211話「テントごっこ」

今では空き地に入ろうものなら、不法侵入で通報されてしまうが、昔は空き地はみんなの遊び場だった。

僕の小学時代の話だ。


◇◇◇


ボロ布を何枚か見つけた。一枚は床にし。もう一枚は屋根にした。

6年生の時。空き地で見つけた角材と布で、マントにしたり刀にしたり、ハンモックにしたりしたあと……テントを作った。


一番長い角材を支柱にし、そこに布をかけ、端に石を乗せた。角屋根のテントが出来た。結構、中は広くて3~4人は入れたかな?

はたから見たら……


『なんだあの小汚ないの!』


っていう汚い布のテントだったが、僕らには、『輝くテント生活』だった。秘密基地って、呼んでたかな?何日間かにかけて、この布でテントを作り遊んだ。そうそう終わった後、そのままにしておくのだが、次の日には、片付けられていた。だから、みんなでまた、どっかから角材と布を探して来て作った。


基地の中では、お菓子を食べたなあ。


「じゃあ今度、俺が現地調達に行ってくる!何か欲しい物はあるか?」


なんて言って、近くの駄菓子屋に買い出しに行った。

そしてある日。いつもの様に遊んでいると、知らないオジサンに怒れた。


「こら!お前ら、片付けても片付けても、テント作りやがって~。もう、今日で終わりにしろよ!」


と、言われてしまった。まあ散々、散らかして遊んでたから仕方ないかな~。次の月、工事が入り……


近所でも、大きく広かった空き地には、福祉施設が建ったのだった。


おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る