第149話「二重(ふたえ)まぶた?」

僕のまぶたは、基本的には「二重まぶた」だ。そのことに気がついたのは、小学5年生の時だった。


◇◇◇


当時、僕は塾に通っていて、一つ上の女の子と知り合った。僕はその女の子を「アネキ」と呼んでいて慕っていた。


「ミズキってさあ、二重だよね!」


「えっ?」


当時の僕には、二重まぶたと言う言葉は知らなくて……


「えっ!何?二重って、十二単(じゅうにひとえ)の仲間?」


と、聞いてアネキに大笑いされた。


塾では、長い休みに合宿勉強と称して、別荘に連れて行ってくれた。もやしっ子の子ども達に、少しでも自然に触れられるようにと連れて行ってくれたのだ。

僕が5年生の時は僕とコウタの二人しか生徒がいなくて。6年生は、アネキともう一人の女の子しか居なかったので、5、6年生合同の合宿となったのだ。

二泊三日で別荘に行った。楽しくて、夜も遅くまでワイワイと遊んでいた。そして次の日……


「ミズキって、二重だよね!」


と、言われたのだった。 アネキは僕に、確かめるように近づいてきて……


「でも左目だけ……三重(みえ)になってるよ」


と、言って、アハハハと笑った。笑ったアネキは、自分の手鏡を出してきて・・・


「ほら!」


と、見せてくれた。その時、初めて自分のまぶたが、右が二重であり、左が三重になっているのを知ったのだ。


それからは意識するようになり、よーくまぶたを観察した。どうやら僕は、奥二重ってやつらしく、普段はひとえ風に見えるが、笑ったり、ボケーっとしていると二重になっているのだった。そして、合宿最終日の朝……


「ミズキ!今朝は三重と四重(よえ)だよ」


と、アネキに言われた。鏡で見てみると……瞼の上は幾重にもなっていて、つまりは疲れ目ってヤツになっていたのだった。


おしまい

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