第129話「弓矢」

初めて弓矢を作ったのは、僕が5歳の時。保育園の年長さくら組の時だった。

カミとコウと僕で、小枝に輪ゴムをつけて弓にし、広告を丸めて棒にして矢を作った。放つと……


ビヨ~ン!


と、重そうに矢が放物線を描いて飛んだ。

当たっても、大して痛くなかったが(もう、カミとコウと僕の3人組で当てあって実証済み!)先生から……


「目に当たったら、危ない!」


と、禁止令が出てしまった。

本格的に作ったのは、小学校4年生の時だった。同じクラスのイナと作った。イナは剣道をやっていて、なんと要らない竹刀を持っていたのだ!(この素材は以前から目を付けていて、欲しかった素材であった!)

イナは、手先が器用でないので一緒に作る事で、竹刀を分けてくれたのだった!取り引き成立だ!!

竹刀をばらすと4つに分かれた。その一本を取り出し、その両端に少し切込みを入れて、タコ糸を張ったら出来上がりだ。試しに、張ったタコ糸を弾くと……


ブウンーッ!


と、ヤバいくらいにタコ糸がうなった!

その音に、僕とイナはウハウハした!!イナの家の庭は、結構広かった。(当時だから、そう感じたのかも知れないが)庭に落ちていた、枝で矢を作った。そして、空き缶を的に、射的をしたのだった。弓をしぼり、矢を放つ!


ブンッ!


といって、矢はあさっての方向に飛んでしまった!


「あれ!?」


と、僕たちは顔を見合わせた。

思ったより上手く飛ばなかったのだった。何度かやって、分かった事がある。枝が曲がっていたのと、後ろに、羽を付けるのを忘れていた事だった!だから、枝はスパイラルしながら飛んだり、ヘンな方向へ、急に曲がって飛んでしまったのに気づいたのだった。


僕たちは、なるべく真直ぐな枝を探し、枝の後ろにノートを切って作った羽をつけた!すると……


バシッ!


っと真直ぐに飛び、缶の的を弾き飛ばしたのだった!矢は、真直ぐな枝と羽で安定性が飛躍的に向上した!!何度か、やっているうちに……


「もっと、真直ぐで丈夫だったら、どうかな?」


と、イナが言った。僕は、ピンと来た!


「じゃあ、作ってみる!?缶を突き刺すぐらいなやつを!!」


と、僕はニヤリとして言った。

さてさて、僕らは、「矢」を作り始めた。枝は曲がっていたから、竹刀の竹を割って作る事にした!しかし、竹刀の竹には曲がりがついていたから、ロウソクであぶって、少しづつ、曲げを真直ぐにのばしたのだった!


真直ぐに伸びた、「矢」が出来た!先端は、とんがらかして、さらに硬くなるよう火であぶった。一連のやり方を、イナに見せて教えた。イナも不器用ながら、マネて矢を作った。(仕上げは僕が見た)最後に、矢の後ろに羽をつけると、「マイ・アロー」の出来上がりだった!

僕らは、自分の「矢」で、的の缶を狙った。


ギリギリギリーッ


っと、弓の弦が鳴った。

弓いっぱいまで引き絞り、僕は矢を放った!


カンッ!


と、乾いた音を缶が立てた。見ると矢は……みごと缶に突き刺さっていた!そして反対側にも、ぶち抜いていたのだ!!

それを見て、ちょっとブルッときた。それを見たイナが、ウハウハしている。続いて、イナが矢を射った!


「おおっ!スゲッ」


と、イナは言葉を漏らした。僕らは、目を見合わせ……


「「アハハハッ!すっゲーッ!!」」


と、叫んで大笑いをしたのだった。弓をやり終わった後……


「ヤバいくらい、面白かったね!」


と、僕は言った。イナは……


「うん!ナイショにしないとなあ!」


と、言った。ひと夏のナイショの工作だった。

弓矢は、イナの家の縁の下に隠していたのだが、しかしある日、イナの母ちゃんに見つかり……


「これは危ない!」

と、言う理由で処分されてしまった。それを僕にイナは、すごい済まなそうに話していたのを覚えている。


おしまい


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