第103話「アサガオ」

小学1年の時の記憶だ。

夏休みに入る前の事だ。授業中に、プラスティックの鉢とアンテナみたいなプラスティックの棒と輪っかをもらった。鉢には、ネームシールがついていて……


『〇年〇組 ミズキ』


と、名前を書いた。

それから、棒と輪っかを組んだ。鉢に土を入れ種をまいた。毎日、水をまくと、可愛い芽が出てきた。芽はすくすくと伸び、棒に巻きついて行った。その姿を毎日、記録した。朝顔観察記録だ!


学校にいくと毎朝、朝顔を見ては長さを計かり、成長した姿をスケッチした。あと何日かで咲く、ぐらいになった頃、夏休みに入った。夏休みに入っても、引き続き朝顔の観察記録をつけていった。


朝顔観察は、夏休みの宿題だった。でも、わずか2日目にして観察は終わった。寝坊したのだ!僕が見た時には朝顔は、しぼんでしまっていた。しかたがないから、友達の今朝みたやつを、見せてもらい、スケッチした。その時点で、なんかもう朝顔なんか、どうでもよくなった。図書館行けば、図鑑見ればかけるし、天気や気温は新聞で分かるし……一日、観察出来なかっただけだが、気持ちがショゲてしまったのだ。


まあまた、気が向いたら朝顔でも見るかなあ、の気持ちだった。その後、時々、朝に朝顔を観察して記録しただけだった。結局この夏、朝顔は婆ちゃんが手入れすることになった。なったといえば言葉はいいが……


「朝顔だって生きてんだ。可哀想だ!」


と、婆ちゃんが面倒を見てくれてたのだった。時々、婆ちゃんは、朝、朝顔が咲いていると……


「ミズキ、咲いてるよ!」


と、教えてくれた。

観察記録は、実際に見て書いたのは、飛び飛びで、あとは図鑑や友達のを参考に作りあげていた。朝顔は、ひと夏を過ぎ種をつけた。


2学期になると、また学校に持っていき、種の様子を観察記録をつけた。種がついたのを確認したぐらいに、家に持ち帰った。この頃にまた、朝顔を意識して見るようになるが、種集めもいっときで、朝顔の事はまた、ほっといてしまった。そして気付かないウチに、朝顔はなくなっていた。婆ちゃんに聞くと…


「ミズキに、何度も言いったけど、片付けないから、婆ちゃんが片付けたよ!」


と、言われてしまった!

とうとう僕の朝顔は、机の引きだしの中に、朝顔の種を残した以外は……




跡形もなく消えてしまったのだった。


おしまい


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る