第57話「雨粒」

30歳を過ぎてから、途端に体力の低下を感じた。ふと天井をタッチしょうと飛び跳ねたら……


「あっ!」


天井まで届かなかった。

そして40歳になり雨を見ると……


『良く見えない!』


その時、昔爺ちゃんが言っていた事を思い出したのだった。

僕が小学時代の話しだ。


◇◇◇


「爺ちゃん雨降って来たよ」


小学校1、2年の時の話しだ。当時、僕はよく爺ちゃんと散歩をしていた。


「本当かい?爺ちゃんには見えないなあ」


空を見上げる爺ちゃんは首を傾げていた。雲からポツリポツリと降ってくる雨粒。僕にはハッキリ見えるのに、爺ちゃんには見えないのが不思議だった。


「爺ちゃんのメガネ曇ってるの?」


と、僕が言うと……


「いや、ちゃんと見えるんだが、雨粒が早くて目が追いつかないんだよ」


と、爺ちゃんは言っていた。

空から舞う雨粒たち。いつかは僕にも見えなくなる事があるのだろうか?と思っていた。


◇◇◇


そして40代になり、爺ちゃんの言ってたことがよく分かるのだ。

そうそう、蚊の動きも追えなくなった!突然消えるので、悔しくてたまらない!!


ああ本当に見えなくなるんだなあと思った。


空を見上げると、頬にポツンポツンと雨粒が当たった。爺ちゃんが言って意味が分かった瞬間だった。


おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る