第42話「カーテン」

僕は、夏少し前の風が好きだ。ベランダの窓を開けていると、家の中でカーテンがフワッと膨らんだ。その様子を見ていると、僕は記憶は小学時代へとさかのぼるのだった。


◇◇◇


本格的な夏になるまえの、特に授業中、学校の窓から入る風が大好きだった。授業中に教室に入ってくる風は『何してるの?』って感じで、窓から入って来る。


フワッと暖かい風に、包みこまれると、なぜだか安心し、ずっと包まれていたい気持ちになった。

僕は授業を忘れて『この風をつかまえたい!』思った。


手ではさんでみた。

手を振ってかきまわしてみた。

肺の奥まで、吸い込んでみた。


そんな事をしていると、それを見た友達のウッチーが……


「ミズキ、何してるの?」


と、聞いてきた。


「いや、風がつかまえられないかなって思ってさあ」


と、僕が答えると、ウッチーは真顔でカーテンを指差した。


「なるほど!」


カーテンはさっきから風に揺れていた。さっそく、しばってあるカーテンをひろげた。学校の窓は、下に小さな小窓があった。僕は、カーテンを広げると両端を小窓の端にはさんで閉めた。するとカーテンは、帆船の帆のように、バサッとふくらんだ。僕は、船が走る姿を想像した。


日差しに照らされ、やわらかく光るカーテン。僕は……


『風をつかまえた!』


と、思ったのだった。


おしまい

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