no title No.00735
01
元は音楽を聴かせることのできた電子機器よ。音が出なくなってから使用者の老人、かつて若者だった老人は、数十年それに彼が世界から聞く音を聞かせて、時々彼の声を聴かせた。彼のやったことは電子機器の構造的にはおかしな話でもないのよ。あとは信念の話。
そうして作られた何層かの重みがあれを守っているの。それでようやく0.1joule。この階層に留まれる最低限の数値。
「あなたは?」
735joule。
ああ、私も頭が体に先行した存在よ。
ひとのかたちはしているけれど。
02
あと23分後に7つの起動式が同時に交差する箇所があるわ、そこなら力を借りて移層できるかもしれない。
機器自体は演算をしたり記録をしたりするものなのだけど、元の持ち主がその機器に触れなくなってから一定時間経過したら自動的に起動するように予め言いつけておいたのね。
まだ質量のある何かとあの類の電子的な記録が切り離せなかった時代で、当然実存媒体は消えてしまっているわ。「起動する」という式自体の持つ使命感だか意志だかが面白い形で残ってしまうのね。
母数がそれなりだから2、3の同時発生は時々見かけるけれど、7つ分重なっているのは珍しいわよ。期を逃さないように急ぎなさい。
A-1
「あらホントね、これから先になのかここまで既になのかはともかく、普通の数値じゃないわ。でも不思議ね近くにいても重さはそれほど感じなかった。」
A-2
「あなたこそ一体どうやってここへ。あの子と同じ単位が通じるからあの子と関係があるのは間違いないようだけれど。」
A-3
「ごちゃごちゃした概念がフラットになっているのがここと今の私よ。教える活かすは考えたことが無かったから、相談相手にはなれないと思うわ」
----本文ここまで----
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