第17話
「……っていうか、何でクソゲー耐性テストなんてやるの?」
と言いつつ、アルストロメリアを手にソファに座っている四十八願。それを両サイドから見守る俺達と、真正面でにやにやと腕組みしている大門である。
石川さんはというと、
「ああ、そこの破片をとってくれ。あとここの購買にアロンベータはあるかね?」
「……さあ。美術室にでもいけば?」
不死川と一緒にせっせと床の修復に努めていた。アロンベータを使って修復している辺りに不安しか感じないがどっかのガラスをぶち破ってそのままにしていったオヤジよりはましだろう。
まあそれはさておき、だ。
「ふっふっふ、少し説明をしなければならないようですね。そう、相手はクソゲーで世界を染めようとしている集団……。かつて我々の同胞がエジプトに潜入した際、囚われの身となったのですが……。その時に拷問として使われたのが、クソゲーだったのです!」
「な、何だってーー!?」
そんな残虐な拷問が!? 相手の人を人とも思わないような残酷さがうかがえる。
「三日三晩のクソゲー責め……。その責め苦は想像を絶するものだったのでしょう……。起きてはクソゲー、寝る前にクソゲー! クソゲー漬けのまさに責め苦! その過酷な拷問の果てに、ついに同胞は口を割ってしまい、エジプトにおける我々の行動をより困難にしてしまったのです!」
「く、そんな拷問なら責められねえだろうよ……! 奴らは悪魔か! 鬼か! 鬼畜の所業だ! 絶対に許せねえ!」
「クソゲーの過剰摂取は寿命を縮めるわ! なんて酷い……! 一生ものの傷になるわよ!」
「傍から聞いてるとすっごく下らなく聞こえるんだけど。何で普通に拷問しないのかな」
「だから我々は、実働部隊全員にクソゲー耐性テストを実施! それにより9割以上が配置転換の憂き目に遭いましたが、仕方のないことでした! 万が一の彼らの拷問に耐えられるようにと!」
「それでそんなに人材がいないんだ!? 何かすごく納得した!」
「そのため! 貴女にも、クソゲー耐性テストを実施するのです!」
と言って、アルストロメリアの電源をオンにする。
すると、うわでた。
『たのしい将棋』のタイトル画面。シンプルな画面にタイトルが書かれているだけだが、俺は頭蓋骨が山積みされ、カラスが鳴く、地獄の門を幻視してしまう。
「このゲームを1時間プレイして、怒ったり萎えたり、一定以上の苦痛を表したらアウトです! 途中の休憩は許しません!」
「っていうかゴーちゃんとイッチーにはやらないの?」
「いや、一鬼君はクソゲーのテスターっていうマゾですし、剛迫さんは……わかりますよね?」
「俺はマゾじゃねえよ! 普通に嫌がってるからね!?」
「何で私は濁すのよ!」
「なんか納得した、OK」
「納得するな! 今ので!」
思えば四十八願がゲームをしているのは見たことがない。こうしてゲーム機を持っているのが新鮮な光景だ。四十八願の指がOボタンにかかる。
「絶対に、クソゲーなんかに! 負けたりなんかしない!」
「負けそう」
「即落ちしそうなセリフね……」
「くっ」
「何で全員で!?」
兎にも角にもスタートした。地獄の門は開かれた。
まずはメニュー画面。「指す!」の項目と、「スペシャル」の項目があるが、スペシャルはロックされている。「指す!」を意気揚々と選ぶと、ひげもじゃのおっさんが出てくる。
「出た……!」
「だ、大魔王が出たわ!」
「え、何、この人ヤバいの?」
「やればわかる」
何を隠そう、このひげもじゃのおっさんは、この「指す!」モードの教官的なキャラクターである。
タイトルからもわかるように、このソフトは将棋の基本から学べる……という触れ込みのソフトである。そのため、このひげもじゃのおっさんが色々な授業をしてくれる……というわけなんだが。
『やあ、俺は熊次郎 三郎。将棋を教えてあげよう』
「熊次郎が苗字?」
軽くツッコミつつ、進める。
『まず最初は、駒の動かし方からだ。将棋にはいくつかの駒があり、それぞれ動かし方が違うんだ。じゃあ、実際にやってみよう!』
「な、なんかちょっと大雑把だね……」
そして、盤面が出てきた。
恐怖の土俵である。
画面には「歩」が一つだけぽつんと置かれていて、隣のマスが光っている。この隣のマスまで到着すればクリアだ。
……将棋が分かる方なら、既にこのクソ要素が分かるだろう?
もう一度言う。歩の「隣のマス」にたどり着くのだ。
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