天使な悪魔 ❤ の文明論

平 一

第1話 可愛い悪魔サタンちゃんの魔法陣?(笑)

1 文明要因図について


 “Lucifer”では、美少女悪魔のサタンちゃんが世界を救うために使う、ぜひとも図解で説明したい文明論(文明理論)を書きました。


 サタンちゃんは本当は、ヘタレだけど一番神様に忠実で心優しい天使です ❤。


……すみません。突然ですがメルヘンちっくなファンタジー風に表現してみたくなりました。天使といっても銀河帝国の一員をなす、量子頭脳に人格群を移植した異星種族ですが、少なくとも私の心の中では、そんなお話のつもりです(←ある意味もっと問題?[笑])。


 その図形とは六芒ろくぼう星(✡)、いわゆる『籠目かごめ紋』や『デビデの星』と呼ばれるものです。古代イスラエル王国のソロモン王が、悪魔達を使役して国家を繁栄に導いた後、その封印に使った紋章だという伝説もあるそうです。


 ファンタジー物語で悪魔を召喚する時に使われる『魔法陣』も連想させますが、あちらは正しくは五芒ごぼう星、特にそれを逆立ちさせた逆五芒星なので、これとは違います(恥ずかしながら私も、フレドリック・ブラウンの短編『あたりまえ』を読んで知りました)。


図:https://19084.mitemin.net/i398818/


 まず、正三角形を書きます。真上の頂点に①(文明内外の)自然・社会環境、右下に③人的資源、左下に⑤物的資源と書きます。これらが環境条件です。


 その上に重ねて、逆三角形を書きます。右上の頂点に②科学・技術(社会的な事実認識、知る)、下に④経済・社会活動(社会的な現実行動、行う)、左上に⑥制度・政策(社会的な意思決定、決める)と書きます。これらが文明活動です。


 この六芒星(✡)が、文明に関わる全ての要素を表した図となります(芸術・スポーツなどの文化活動や、警察・軍事活動など行政の実施活動も、経済・社会活動に含まれます)。



2 文明とは?


 文明とは、都市を作る土木技術や、国家を営む組織技術など、高度な技術を伴う知的生命活動の様式です。それは、人類をここまで発展させてきた高度な知性の所産であり、特にこれからは、全ての人々が知って活用することが可能、かつ必要な考え方だと思います。


 人類は『万物の霊長』と言われるように、高度な知性、すなわち知的生命活動能力をもつ生き物です。知的生命活動とは、発達した脳神経系により、環境の違いや変化に応じて行動を制御し、よりよく自己保存や種族保存を行うことができる活動です。


文明と似た言葉に文化というものがありますが、これはもう少し意味が広く、必ずしも高度な技術を伴わない知的生命活動の様式です。メソポタミア文明に対して縄文文化などというときは、この意味であろうと思います。サルのイモ洗いなども、文化であるといわれたりします。


 ちなみに文化にはもうひとつの意味があり、高度な技術を持たない時代から存在する、美術や儀礼など、生存に直接必要ではないが、知的生命活動においては必然的、かつ有益な生活様式をさすこともあります。


 文明とは人々に共通する活動様式なので、個々人ではなく、社会としての活動のあり方です。個人の知的生命活動は、『どうなっているかを知り、何が欲しいかに照らしてどうするかを決め、実際にそうする』という、認識・決定・行動といった過程プロセスからなります。そこで、文明活動もまた同様に、社会における認識(科学・技術)、決定(制度・政策)、行動(経済・社会活動)に分けることができます。


 ただし、社会的な意思決定である制度・政策は、社会全体における個々人や集団の活動が集まった、社会的な現実行動である経済・社会活動の中から、試行錯誤や合意形成を経て生まれてくるので、変化の順番は決定と行動が逆になります。


 文明は、人間と他の生物を分けてその生命活動を説明する、最も大きな区分です。また、そのなかで科学・政治・経済・社会・文化など、全ての人間活動を分類したうえで、相互の関係を洗い出し、全体の成り立ちを理解することにより、社会的な活動の改善に活かせる、便利な考え方です。


 すなわち文明とは包括的で分析的・総合的な概念コンセプトなので、人間の活動やそれに関する様々な物事を、モレなく、ムダなく、バランスよく考えるのに役立ちます。


 文明という言葉は『文明の衝突』や、『我国の○○進出は人類文明の発展に貢献する』などのように使われてしまうこともあるかもしれません。しかし、一番大きな意味で使えば、基本的には特定の活動や地域、組織に囚われない無難で最大公約数的な概念を示す用語であり、これなら万一宇宙人が来ても、安全な共通の話題にできるだろうと思います(笑)。


 今、人類は地球というひとつの自然環境的な限界に到達し、社会もひとつにまとまりつつあります。人々の生活は豊かで便利になる一方、新しい課題や希望も次々と生まれてきています。我々が仕事や生活の中で、何を考えたり、行ったりするにしても、『我々人類とは何か、どこからきて、どこへゆくのか、その時どうするべきなのか』を、総合的・全体的に考えてあたるべき場合が増えているのではないか、と思います。その時、この『文明』という考え方はとても役に立つのではないでしょうか。



3 各要因の、長期的な現象面の潮流トレンド


 6つの文明要素は全てが相互作用の関係にありますが、長期的な現象面で見ると、頂点から始まって右回りに文明活動が変化し、あるいは環境条件が課題となります。 


 つまり人間は、すでにある①自然・社会環境の中で、②科学・技術(始めは経験的な技術)を獲得し、③物的資源に具現化して、④経済・社会活動を豊かにします。


 しかし、経済・社会活動は豊かになると共に拡大し、複雑になり、変化も速くなっていくので、様々な問題を予防・解決できるよう、⑤人的資源を育成・確保することにより、⑥制度・政策を改善していく。


 そしてまたその制度・政策が、①自然・社会環境の影響(恩恵や制約)のもとで、次なる②科学・技術を開発・普及していく……以上が、長期的な現象面の流れです。


 科学・技術が発達すると、経済・社会活動は豊かになると同時に大規模化し、複雑化・加速化します。特に人々の仕事においては、肉体労働から頭脳労働への移行が進みます。


 そこで、必要とあれば大勢が動くが、それに当たっては衆知を活かし、経済・社会を健全に保ち続けられるよう、制度・政策も高度化し、また巨大化と同時に分権化してゆきます。国家の成立と発展から国際化、グローバリゼーションと共に、政治の民主化、経済の自由化、地方分権、様々な差別の撤廃などの人権保障も進展してきました。



4 各要因の、時々刻々リアルタイムの実体的な働き


 また、時々刻々リアルタイムの実体面で見ると、科学・技術は自然環境に働きかけ、自然からの富の生産(獲得)を増やして、経済・社会生活を豊かにします。一方、制度・政策は社会環境に働きかけ、人間同士の富の分配(再分配・再投資)を調整することで、経済・社会生活を健全に保ちます。


 右手の技術は社会を豊かにし、左手の政策は社会を健全に保つというわけです。逆に言えば、全ての人々が営む、文明活動の本体である経済・社会活動を豊かにし、健全に保つため、そこから専門分業化した活動が、科学・技術や制度・政策だったのでしょう。


 ところで、科学・技術の多くは物的資源に具現化されないと、経済・社会を豊かにすることはできません。制度・政策も、それを考え、支え、受けて活かせる人的資源を育成・確保しないと、実現して経済・社会を健全に保つことはできません。そこで、右ひじや左ひじにあたる、経済・社会活動に近い文明の内部環境に物的資源や人的資源を作り出し、活用していきます。


 もっとも、科学・技術の研究・開発や普及には、沢山の人材・資材・資金や人々の理解が必要です。また、制度・政策を実現するためには、人的資源を教育し、組織的に活用するための技術が必要です。そこで、科学・技術と制度・政策は、技術的政策や社会工学でお互いに助け合いながら、文明活動の本体たる経済・社会生活を豊かにし、健全に保っているところもあります。



5 各要因の、生物学的な意味


 さて、これらの文明要因は、生物学的にはどんな意味をもつのでしょうか?

生物学では、生物を環境との相互的な関わりの中で考えます。この『生物と環境の相互作用』という視点から見ると、科学・技術と物的資源は、主に経済・社会活動による『環境の操作』に役立ち、制度・政策と人的資源は経済・社会活動の自己制御による『環境への適応』に役立つのではないかと思います。


 なぜ、こうした見方が可能、あるいは必要なのでしょうか?


 まずはそもそも活動の性質から、『ああすればああできる、こうすればこうできる』という『技術』は、直接的には一方的に動かせるモノ、つまり自然を対象とします。人や社会を対象とする場合でも、一定の法則に従う自然的な客体としての部分、いわば人や社会の〝内なる自然〟を扱います)。


 他方、『ああすべきだ、こうすべきだ』という『政策』は、議論や説得の相手とすべきヒト(同等の能力や尊厳をもつ、主体としての人)、つまり人間自身を対象とします。


 『である』論の科学・技術はモノ(客体)としての自然環境や我々自身、『べき』論の制度・政策はヒト(主体)としての我々自身を対象とする、というわけです。


 また、それに加えて時代的な理由もあると思います。それは、環境を『ある主体が活動するさいに基礎となる、全ての要素の集まり』と考えると、『それまでの自分達自身の経済・社会活動』もまた環境要因に含まれ、特に現在では、自然・社会環境に占める『自分達自身の活動』の比重が大きくなっているからです。


 第一は、制度・政策の巨大化です。

国際化さらにはグローバル・ガバナンスといわれるような時代になると、外交においては『我国は他の国々に対してどうすべきか』よりも、『我々は国際社会としてどうすべきか』という視点が大きくなってきます。


 第二は、制度・政策の分権化です。

政治的民主化や経済的自由化、地方分権などの分権化が進み、そうした流れが世界的に広がっていくと、内政における治者と被治者の同一化も進み、『政府は国民をどうすべきか』よりも、『我々の国はどうあるべきか』というかたちで、政策が論じられるようになります。


 社会的な意思決定の巨大化と分権化は矛盾するようにも見えますが、いくつかの社会階層のピラミッドが、ひとつの、より傾斜がゆるやかなピラミッドにまとまるようなものかと思います。

技術の進歩や生活の向上、加速化、複雑化によって、必要とあれば大勢の人間が動くが、それに当たっては衆知を活かして点検や改善を加えることが可能、かつ必要になるからです。


 第三は、自然科学的な工学の発達です。

自然科学的な技術の発達によって、人類の経済・社会活動は、地球というひとつの自然環境の限界に到達しています。かつての自然に対する政策は、いかに自然の脅威に対抗しつつ、開発していくかが問題でした。しかし、今では文明活動が地球全体に及び、地球環境にまで影響するようになって、自然環境はもはや、保護すべき対象になってきました。我々自身が生存のためにどう自己制御を行い、自然と共存を図っていくかが問われています。


 第四は、社会工学の発達です。

医学のような自然科学だけでなく、心理学や経済学のような人文・社会科学も基礎とする社会工学の発達によって、人間は個人や社会の〝内なる自然〟の限界も発見し、制御を図るようになりました。高齢化や生活習慣病などによる、健康水準の低下と社会保障費の増大、若年人口増大による戦争(ユースバルジ仮説)、歳月の経過や技術革新に伴う格差の拡大、経済の不安定化といった問題が語られるようになっています。


 ここでも、私達は 『 環境をどうするか 』 というより、地球の限界を越えて損なってしまわないように、あるいは人間や社会の〝内なる自然〟の限界を克服できるように、 『 我々自身がどうしてゆくべきか 』 が問われているのではないかと思います。


 科学・技術や制度・政策は、自然・社会環境への働きかけにも、経済・社会活動の自己制御にも役立ちますが、『生物と環境の相互作用』という見地からすると、科学・技術は主に『人類による環境操作』、特に自然環境の操作、制度・政策は主に『人類の環境への適応』、特に経済・社会活動の自己制御に関わる文明活動であり、特に現在ではその傾向が増しています。右手は仕事、左手は身づくろいに役立つ、という感じでしょうか。



6 魔法の図形かたち

  

 以上のような、3つの文明活動要因と3つの環境要因の関係を示すのに、六芒星(✡)は本当に便利な図形だなと思います。何だかおまじないみたいで、神秘的なハクもつきますし……(笑)。さすがは世界各地の文化芸術で使われた、人気のある紋様です。


 私も好きなマニアックな資料によれば(笑)、この図形にはそれぞれ6つの角と6つの三角形、中央の六角形の6つの辺が含まれているので、666ということで『悪魔の図形』などとも言われているようです。確かに見ての通り印象的な図形ですが、しかしそれゆえ世界中で使われている、ポピュラーな図形です。また、先述のように、本家『悪魔の図形』(笑)というのは、逆五芒星です。


 しかし、この小説を通じて文明論への関心を広められるなら、きっかけとしては『悪魔の図形』と思われてもよいかと思います。作品中のサタンは、後に天使すなわち、善玉異星人と分かります。


 イスラエルの方、もしお気に障ったら申し訳ありません。でも逆に、物語の主題や背景設定が理解されれば、ありがちな誤解の解消にも役立つと思います。私は日本や南アフリカと並んで、地域の先進文明の拠点となっている御国を尊敬しています。こうした国が手本となって、周辺諸国と良好な関係を築きながら文明の普及と発展に貢献できるかどうかが、今後の人類の発展を左右すると思います。


 もちろん他の地域の方々用には、三日月と五角星や、区切られた下地に星五つのような図形でも表現できると思います。


 ちなみに作中に登場する、新時代を拓く『親和技術』という用語を英訳しようとしたら、“familiar”という言葉が出てきました。しかし、この言葉には『使い魔』という意味もあるようです。何だか怖い符合のような……まあ魔法のように便利なIоTなどは、それに近いものがあるかもしれませんね。これも何かのご縁というか……ええいもう、こうなったら何でも来おおい(泣)!(笑)

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