第67話 魔王「妖魔将軍を生き返らせた者?」
魔王「いたっ…」
魔王「う…く、な、何この赤いの…」
魔王「血…僕の…血…?」
魔王「う…く…」ガクガク。
神官姉「魔王…ちゃん!」
女勇者「魔王がダメージを受けた?」
女勇者「嘘だろ…あれだけ聖剣で攻撃しても傷一つ付かなかった奴がどうして…」
神官妹「妖魔将軍、一体何どうなっているんですの!?」
妖魔将軍「おっと魔王様…これは失礼しました…」
妖魔将軍「魔王様は頑丈と聞いてたので、これぐらいなら何ともないと思いましたが…」
妖魔将軍「ちょっと小突いただけで、そのようにお血を流してしまうとは…見た目通りの可愛らしい反応でございますな」
魔王「う…」ブルブル。
妖魔将軍「くっくっく…その顔堪りません」
妖魔将軍「俺は他が恐れ恐怖する顔を見るのが何より楽しみ」
妖魔将軍「だからもっと小突けば良い反応を見せてくれますかな…くはは…」
魔王「ひ…」
魔王「う、うあああっ!」バタバタ。
妖魔将軍「逃げても無駄ですぞ!」
神官姉「魔王…ちゃん!」
神官姉「は…!(結界魔法)」
妖魔将軍「ぬ…」ガキン!
魔王「神官姉さん…!」
神官姉「魔王…ちゃんに…手出しはさせない…!」
妖魔将軍「ふん…神官の神聖結界か…」
神官姉「例え…お前が…協力な…力を持っていても…魔族である限り…簡単には…破れない…!」
妖魔将軍「ふん…魔族ねぇ…」
妖魔将軍「ふん!」
バリーンっ!!!
神官姉「…! きゃ!」
神官姉「ぐ…」ドサ。
妖魔将軍「大した事は無いなぁ?」
神官姉「な、何故…」
妖魔将軍「答える義務はねえなっ!」ドカッ!
神官姉「ぎゃ…!」
魔王「神官姉さん!」
妖魔将軍「さあ…お待たせしました魔王様…先ほどの続きをやりましょう…くっくっく!」
魔王「ひっ…!」
女勇者(くそ…何だか良く分からないけど魔王はダメだ!)
女勇者「おい神官妹、アタシの傷を早く直せ!」
神官妹「え? で、でも…魔王も敵わないのに…ど、どうするつもりなの?」
女勇者「言ってる場合か! とりあえず戦えるようにしてくれっ! 早くっ!」
神官妹「わ、分かった…」パアアア。
女勇者(このまま魔王を殺されたら…本当に打つ手が無くなる…)
女勇者(だからアタシが何とかしなくちゃいけないんだっ!)
神官妹「良いわ!」
女勇者「さんきゅーっ!」ダッ!
魔王「ゆ、勇者さん!」
妖魔将軍「む…? この死に損ないがっ!」
妖魔将軍「今度こそ動けぬ体にしてやる! 妖魔殲滅断!」
女勇者「…!」
妖魔将軍「お前の貧相な防御結界では防げぬぞっ!」
女勇者「…ああ、確かに防げないけど…」
女勇者「聖光転身っ!」シュン。
妖魔将軍「ぬ!?」
女勇者「こんなトロい技なら当たらないっつーの!」
妖魔将軍「な、何だっ、このスピードは!?」
女勇者「ああ…アンタにはまだ見せてなかったっけ…?」
女勇者「アタシはこう言う事も出来るんだよっ!」
妖魔将軍「ぐ…!」
女勇者「はあっ!!」
ズバズバズバっっっ!!
妖魔将軍「ぬお!?」
女勇者「へっ…」
魔王「斬った…?」
妖魔将軍「…」
妖魔将軍「確かにスピードだけは大した事はあるが…効かんなぁ~」
女勇者「まあそうだろうな…」
魔王「勇者さんっ!」
女勇者「この馬鹿っ! 勇気を出せって言っただろっ!?」
魔王「え!?」
女勇者「僕やります! とか意気込んでた癖に、ちょっと鼻血たらしただけで逃げてんじゃねーよっ!」
魔王「で、でも本当に痛くて…」
魔王「…ううう」グス。
女勇者「…」
女勇者「はあ…」
女勇者「…」ガリガリ(頭をかく)
女勇者「とにかく泣くなっ!」
魔王「え?」
女勇者「今はお前の力が必要何だよ…」
魔王「え? いや僕の力なんて何も役に立ちませんよ…」
女勇者「良いからっ! アタシが隙を作るから…あんたは自分が持ってる全魔力を込めた力であいつを殴るなり魔法を使うなり攻撃してくれるだけでいいんだ!」
魔王「そ、それだったら、やっぱりそれは魔法使いさんとか、そちらに頼んだ方が…」
女勇者「うるせえなっ! 良いからお前は私の言う通りにしてれば良いんだよっ!」ダッ!
魔王「ゆ、勇者さん!?」
女勇者「良いか!? 攻撃しなかったら絶対に許さねえからなっ!」
魔王「ちょ、ちょっとそんな勝手な…!」
妖魔将軍「くくく…女勇者良い度胸だな!」
妖魔将軍「仮にあの魔王の攻撃がして、確実に俺を倒せると本気で思っているのか?」
女勇者「うっせ! お前には関係ないっ!」
妖魔将軍「せっかく忠告してやってるのに…魔族の忠告は素直に聞くもんだぜ?」
女勇者「誰が聞くか…!」
女勇者「聖光転身!」
妖魔将軍「またそれかっ!」
妖魔将軍「だが早くなったところで、所詮は通じぬ攻撃…魔王に俺を攻撃される隙は作らせないぞ?」
女勇者「ならこれならどうだ…!」
妖魔将軍「何!?」
女勇者「聖光転身…速度UP!」
妖魔将軍「まだ早くなると言うのか…だが…」
女勇者「…」ニヤリ。
妖魔将軍「…!」
女勇者「速度UP! 速度UP! 速度UP! 速度UP! 速度UP!」
妖魔将軍「な…これは…女勇者が増えた!?」
妖魔将軍「い、いや…これは超スピードの残像か…」
女勇者「「「「はあっ!」」」」
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュっっっ!!
妖魔将軍「うおおおっ!?」
妖魔将軍「あらゆる方向から斬撃が…! ぐお…おおおおおおっ!?」
妖魔将軍(…攻撃は痛くも痒くも無いが…ここまで全方向に攻撃されたら、身動きが取れん…)
女勇者 (よし…これで…!)
女勇者「魔王…今だっ!」
妖魔将軍「く…!」
魔王「あ…あ…」ガクガク」
女勇者「…!」
女勇者 (くそ…!あの馬鹿っ!)
妖魔将軍「…!」ニヤリ。
妖魔将軍「隙あり!」ドカッ!
女勇者「ぐはっ!」ズサー!
魔王「ゆ、勇者さん!」
女勇者「く…」
魔王(…! ぼ、僕が攻撃しなかったから…お、怒られる…!)
女勇者「…もう一度」
魔王「え」
女勇者「もう一度だけ…あいつの動きを止める…今度はちゃんとやれ…」
魔王「勇者さん…僕は…僕は…」
女勇者「話し合いしている時間は無い…」
女勇者「次ダメだったら…たぶん魔族子供♀はもう駄目だ」
魔王「!」
女勇者「…」
女勇者「アタシはあいつに謝るって決めたんだ…!」
女勇者「角を斬ってごめん」
女勇者「痛い思いをさせてごめんって…」
魔王「…勇者さん」
女勇者「だからアタシは絶対魔族子供♀を助けだして謝る」
女勇者「…アタシは性格はネジくれてるかも知れないけど…一度決めた事は石にかじりついてでもやるタイプなんだ」
女勇者「だから最後まで全力でやる」
女勇者「例えそれが泥臭くても、みっともなくても…あたしは魔族子供♀を助ける」
魔王「…」
女勇者「でも、それでもアタシだけじゃ助ける事は出来ないんだ…」
女勇者「だからあんたの力が必要何だよ、魔王…」
魔王「勇者さん…でも僕は…僕なんか…」
女勇者「…」
女勇者「魔王」
魔王「は、はい?」
女勇者「あんたほアタシより遥かに強い…」
魔王「え?」
女勇者「強いんだ…だから、だから心配するな…」
女勇者「あんたは、アタシの言った通り、ただ思いっきり…あの野郎を殴るだけで良い」
女勇者「それだけで充分力になる」
魔王「ゆ、勇者さん…」
女勇者「アタシはお前の強さを信じる…だから頼んだぞっ!!!」ダッ!
魔王「ま、待って…」
女勇者「聖光転身っ!!!」シュン!
魔王(ぼ、僕の強さを…信じる)
魔王(僕の…)
魔王「勇者…さん」ぐっ(拳を握る)
女勇者「はあああああっ!!!」ザシュザシュザシュザシュっっっ!!
妖魔将軍「がははははっ! またそれかっ!」
妖魔将軍「あの魔王に攻撃させるのは…中々良い目の付け所かも知れんが…」
妖魔将軍「あの腰抜けは攻撃なんぞ出来んぞ!」
妖魔将軍「集中力が切れたら今度こそ終わりにしてやるっ!」
女勇者(腰抜け…かも知れねーけど)
魔王「う…う…」
魔王(ゆ、勇者さんは僕を信じてくれたんだ…だったら僕も!)
魔王「うあああっ!」ダッ!
妖魔将軍「な、何…あの腰抜けが向かって来ただと!?」
女勇者(まあ変なところで義理堅いからな…)
妖魔将軍「く、まあ…驚いたが、向かってくる方向が分かれば…身動きが取れなくてもそちらに集中すれば良いだけだっ!」
女勇者「…!」
魔王「え…」
妖魔将軍「ふんっ!」ドガァ!
魔王「あがっ!」
女勇者「く…」
妖魔将軍「残念だったな女勇者っ!」
女勇者「いや…」
妖魔将軍「何…?」
魔王「う…う…」ポタポタ。
魔王「うお…おおお!」グググ。
妖魔将軍「な、何ぃ!」
女勇者(こいつもアタシと同じでこうと決めた事は曲げないからな…)
女勇者「意外とこいつ根性もあるんだよっ!」ニヤリ。
妖魔将軍「こ、この力は…やはり…く」
魔王「ううう…うあああっ!!!」ドゴォっっっ!!
メキメキメキっっっ!!
妖魔将軍「ぐはぁっ!」
妖魔将軍(このパワー…同じになっても、元より決定的な差があると言う事か…)
妖魔将軍(なるほど…力を与えても…好きにはさせないと言う事か…くくく、面白い…)
妖魔将軍「ごはっ…さ、流石に大した力だ…だが…俺を倒すにはまだまだパワー不足のようだな…」
魔王「え…?」
妖魔将軍「お前…俺を殺さないように手加減したな?」
魔王「ぼ、僕はそんな事は…」
妖魔将軍「ふ、まあ良い…腰抜けな性格で命拾いさせて貰ったからな…」
妖魔将軍「女勇者…どうやら勝負は俺の勝ち…」
女勇者「そいつはどうかな…」
妖魔将軍「何っ…?」
パキ(妖魔将軍が持つ魔石が割れる)
妖魔将軍「なっ…魔石が…いつの間にっ!?」
女勇者「お前が魔王に殴られた瞬間、最大速度の聖光転身で近づいて斬った」
シュウウウウウ…(魔族子供♀を取り囲んでいた火が消える)
妖魔将軍「き、貴様…最初から魔石の方を…」
女勇者「簡単な話だ…お前を倒せなければ、魔石の壊しちまえば良い」
女勇者「絶対の自信があって言ったんだろうけど…」
女勇者「魔石を破壊しても魔法を止められる事を言ったのは、舐めすぎてたな…」
妖魔将軍「だ、だが…魔王がもしも攻撃しなかったら、どうしてたつもりだ…!」
女勇者「まあ、そこは少し賭けになったが…魔王は別に攻撃しなくても、お前に向かうだけで良かったから、賭けのハードルは低かったさ」
妖魔将軍「何だと…?」
女勇者「お前の気が魔王に向けば良いだけの話だっからな…」
女勇者「ちょっとでも注意が逸れれば、スピードではアタシが遥かに上回ってるんだ、隙をついて魔石を斬る事なんて簡単さ」
女勇者「まあ殴ってくれたのは、予想外のラッキーだったけどな…」
魔王「…」
魔王「え? 僕の強さを信じるって…」
女勇者「あーわりぃ、あれ嘘、お前は根っからヘタレだから安心して」
魔王「え…? じゃあ僕はただの囮…?」
女勇者「うん」にっこり。
魔王「酷っ! 勇者さん酷いっ!」
魔王「全く…本当に僕は実は強いんじゃって一瞬思ってしまいましたよ…」プンプン。
女勇者(ヘタレって言ったけど、弱いとは言ってないけどな…)
神官妹「ともかくやりましたわ!」
魔法使い「ああ…少し熱に当てられてる感じだが、魔族子供♀は無事だぞ!」
女勇者「そっか…」ほっ…。
魔王「やりましたね!」
魔王「囮にされたのは…ちょっと納得いかなかったけど…まあ魔族子供♀さんが無事で何よりです!」
妖魔将軍「おおっと、まだ安心するのは早いんじゃ無いか?」
一同「!?」
妖魔将軍「結局俺は倒せて無いんだぜ?」
妖魔将軍「倒す手段が無ければ、直ぐに元の木阿弥じゃないのか?」
魔法使い「それはどうかな?」
妖魔将軍「あん?」
魔法使い「恐らく今まで攻撃が効かなかったのは…エルフの凝縮魔石のお陰であろう?」
魔法使い「魔石を失った今のお前なら…攻撃が通るんじゃ無いのか?」
女勇者「そ、そうなのか?」
魔法使い「確かでは無いが…あれは数百人分のエルフを犠牲にして作った、エルフの魔法の叡智を授ける大いなる力を持った魔石」
魔法使い「そんな効果があってもおかしくない…」
女勇者「そ、そっかなるほど…」
女勇者「だったら今までの怨みも返せるって訳だな…」
妖魔将軍「く…調子に乗りやがって…」
神官妹「調子に乗ってるのは貴方の方ですわ…!」
神官妹「観念して昔の見たいにまたミンチになって墓場に行きなさいっ!」
女勇者「って事だ覚悟しろ妖魔将軍っ!」
女勇者「お前には飽きたから、拷問するのは勘弁してやるぜ!」
女勇者「はあっ!」ダッ!
妖魔将軍「…!」
カッ!
女勇者「うわっ!」
魔法使い「な、何っ!?」
魔王「妖魔将軍の周りが光に包まれて…」
神官妹「え…この光って…」
妖魔将軍「この光は…くそ…俺はまだ…っ!」
フッ。
女勇者「消え…た?」
魔王「な、何がどうなって…?」
魔法使い「消えたように見えるが…空間転移の魔法のようにも見えた…」
女勇者「空間転移!?」
女勇者「あいつの魔法か?」
魔法使い「いや…魔石の力であいつは魔法を使えていたのだ…」
魔法使い「だから別の何かだと思うが…」
女勇者「別の何かって…?」
魔法使い「これはあくまで憶測だが…恐らくは妖魔将軍を復活させた奴だと…」
女勇者「妖魔将軍を…復活させた奴…!?」
魔法使い「ああ…お前らが殺したと言うなら、生き返らせた奴がいる…それが妖魔将軍を助けたのだと思う」
女勇者「ちっ…そう言う事か…しかし誰だ…あんな悪趣味な野郎を生き返らせたのは…」
魔法使い「分からん…何にしても、また妖魔将軍はまた襲って来るだろう」
魔法使い「気を付けんといかんな…」
女勇者「ああ…」
魔王(妖魔将軍生き返らせた人物…それは一体…)
神官妹(あの…光は…まさか)
続く
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