第62話 魔王「法王様?」

魔王(助けようとしていた親類や家族に…裏切られる)

魔王(勇者さんにそんな過去があったなんて…)

魔王(実の家族がそんな事をするなんて…)

魔王(魔王城では父上や妹の魔王姫も他の魔族もみんなみんな優しかったから、知らなかった…)

魔王(そんな凄惨な状況が、魔王城から少し離れれば普通にあったなんて…)

魔王(僕は…僕は、本当に世界と言う事を知らなかった…)

魔王(何とか勇者さんの力になってあげたいって追いかけて来たけど…)

魔王(そんな苦労や酷い体験をした事がない僕何かに、そもそもそんな事を言う資格なんか無かったんだ…)

魔王(封印される前はただ静かに平和に平穏に花や植物を育て…)

魔王(毎日父上や魔王姫と歓談し)

魔王(そして戦中は何も知らず眠っていただけ…)

魔王(そんな僕が勇者さんに力になってあげよう…心の悩みを解決してあげようなんて…)

魔王(何ておこがましかったんだ…)

魔王(この手を血で一度も汚した事が無い僕に…何も…言う事は出来ない…)

魔王「く…」

魔王(でも悔しいよ…)

魔王(何かしてあげたいのに…何も出来ないなんて…)

魔王(…本当に僕に出来る事は無いのだろうか?)

魔王(…何もないのか)

魔王「…」

魔王(いや…諦めちゃ…ダメだ)

魔王(確かに僕は酷い目にあった事なんて一度も無い、世間知らずでダメな魔王だ)

魔王(だから…そんな僕が勇者さんのためとかおこがましいのは分かっている)

魔王(でも…それでも友達のために何かしてあげようってこの気持ちが正しくないなんて思えない)

魔王(だから考えろ! 世間知らずでも酷い目にあった事が無くても)

魔王(そんな僕でもきっとちゃんと考えれば…少しでも何か…きっと何か出来る事があるはずだ)

魔王(何か無いか何か…)

魔王(そうだ…まずは勇者の事を良く考えて見よう…)

魔王(とりあえずうまく言えないけど…そんな過去を持っていた勇者さんは)

魔王(口では恨んでないって言ってもやっぱり魔族は恨む、恨んでいる対象だったんだ…)

魔王(例えそれが妖魔将軍一人がやった事でも、当然だけど魔族全体を恨む理由になってたんだな…)

魔王(だから勇者さんは会ったときからあんなに魔族を恨んでいたのか…)

魔王(…でもそれだと何で…魔族子供♀さんだけには心を開いてたようにしてたのだろう?)

魔王(…う~ん…)

魔王(よく分からないけど…とにかくせっかく魔族子供♀さんと仲良くなったのだから……)

魔王(それをきっかけに魔族を許してほしいって流れになって欲しいとまでは思わないけど…)

魔王(勇者さんと魔族子供♀さんは仲良くし続けて欲しいなって思う…)

魔王(だって…上手く言えないけど勿体無いよ…せっかく仲良くなれてたのに…)

魔王(でもこう思うのもまた僕の身勝手な願いなのだろうか…)

魔王(魔族子供♀さんも、怒りはしない…とは思うけど、角を切られた苦痛…そして一生角を失ってしまったと言う恥辱…)

魔王(やっぱり仲良くなれば良いなんて…簡単には言えない問題だよな…)

魔王(ああ~僕はどうすれば)ブンブン。

魔王(気を使うのも間違ってると思うし、かと言ってほっとくのも…違うような気がするし)

魔王(何だこれ…これしか選択が無いのに、どっちも間違っているような気がして選べない…でも他に選択は無い)

魔王(何だこれ…何だこれは…!)

魔王(分からない…何も思い付かない…うう…気持ち悪い)

魔王(こんな事初めてだ…前なら何でも誠心誠意やれば分かってくれるって思ってたからガムシャラにやってたけど)

魔王(今回の事は…下手に手を出すと、とんでもない方向に話がいってしまいそうで…そ、それが恐い…)

魔王(間違った選択をしちゃうともう勇者さんとは、これまでになってしまうような気がする…)

魔王(何とかしてあげたいけどそれが恐い…)

魔王(ああ、でもそんな事気にしている僕も、僕みたいじゃ無くて何か嫌だ…)

魔王(ああ~本当に僕はどうすれば良いのか?)

魔王(考えれば考えるほど…答の出ない泥沼にハマって行っているようで…うう…もうこんな状況から逃げたい…消し去りたい…)

魔王「破壊したいっ!」

魔族っ子「きゃ!」

魔王「え? あ…魔族っ子さん?」

魔王「どうしてこんなところに…?」

魔族っ子「…」

魔王(そう言えば魔族っ子さんとこうやって会うのは久しぶりだな~)

魔王(何か…最近は忙しそうで…会ってもすぐ何処か行っちゃってたからな~)

魔族っ子「…」

魔王「…? 魔族っ子さん?」

魔族っ子「え? あ、あはい魔王様」

魔王(…? 何か余所余所しいな…)

魔王「…えーと…あのーこんなところでどうしたんですか?」

魔族っ子「あ、はい…その神官妹さんと姉さんがお戻りになれらまして…大至急魔王様に戻って来て欲しい見たいでそれで呼びに来ました」

魔王「え? そ、そうですか…お戻りになられたのですか…それで私を呼びに…」

魔族っ子「はい…まさかここにはいないと思って来たのに…」

魔王「ここにはいないと思って呼びに来た?」

魔王「…? 探しに来たのに、いないと思っていた場所を探しに来たのですか?」

魔族っ子「あ…! いえその…」

魔王「?」首かしげ。

魔族っ子「えっと…その」

魔族「…! 灯台もと暗しと言う事もあるので…一応探しに来たと言う感じです」

魔王「なるほど! それでいなさそうな場所を探しに来たのですね!」

魔族っ子「は、はい」

魔王「それはお手数をおかけしましたね…ありがとうございます」

魔王「では…神官妹さんを待たせる訳には行きません、早く戻りましょうか…」

魔王(…そうだ、ついでに女勇者さんの事も神官妹さんに相談してみましょう…)

魔王(もしかしたら…この問題を解決する糸口のような物が見つかるかも知れませんし)

魔王(仲間として長く勇者さんと一緒にいた神官妹さんなら何かヒントが分かるかも…)

魔王(うん…でしゃばる前に、まずは勇者さんの事をもっと知りましょう)

魔族っ子「…」

魔族っ子 (やっぱり…)

魔族っ子(あれは…あの時の魔王様は…)

魔族っ子(魔王様自身…なの…かな?)ブル。




魔王「どうもお待たせしました…」

神官妹「あ、魔王様ご足労ありがとう御座います」

神官姉「魔王さん…ちゃん! ひ…久しぶり…!」ガタッ。

魔王「あ、神官姉さんもお久しぶりです」

魔王「ってまだ3日も経ってませんが…」

神官姉「私に…取っては…長い…よ!」

魔王「そ、そうなんですか?」

神官姉「そう…魔王…ちゃんの存在は…私に取って…元気…の源!」

魔王「は? な、何ですかそれ…」

神官姉「定期的に…補充しないと…死にます…!」

魔王「そんなにっ!? って親指立てながら何故かとても誇らしげ!?」

神官姉「…後、とりあえず…魔王ちゃんのために…頑張ってきた…ので撫でて…下さい」

魔王「はい?」

神官姉「撫でて…下さ…いっ…!」

魔王「え、えーと…」

魔王「はい」なでなで。

神官姉「♪」

神官妹「はい、話が進まないのでそこまでね」ドカ!

神官姉「きゃん!」

神官姉「うう…妹ちゃん…酷い」

神官妹「それで魔王様首尾についてのご報告なのですが…」

魔王「あ、はい…確か魔界観光行を儲けられるようにしてくれるために色々回ってくれたとか…」

神官妹「はい、何とかそれでたぶんお金を稼ぐ算段は付きました…」

魔王「ほ、本当ですか…!?」

神官妹「はい、百聞は一見にしかず…もうすぐ到着すると思うのでそれでご判断下さい」

魔王「到着…それは?」

神官妹「それは…」

ガヤガヤ…ガヤガヤ。

魔王「? 何やら表が騒がしいような…」

参謀「魔王様…!」

魔王「? どうかしましたか参謀さん? 珍しく慌てた様子で…」」

参謀「じ、実は表に…とにかく来てください」

神官妹「うふふ…さあその答えが分かりますよ魔王様」

魔王「…?」

魔王「…!」

皇帝「ふん…随分辺鄙なところだのう…まあ魔界らしいと言えばらしいか」

帝国側近「全くで御座いますね」

帝国貴族「人が多いな…これじゃ先立って魔界に来た事はあんまり自慢にならんかも」

大公「たいした自慢にはならんかも知れんが…ここに来たのはそれだけじゃないしな…」

共和国指導者「敬虔な創造神信徒なら、来なくてはいけませんからね」

各国の創造神信徒「ガヤガヤガヤ」

魔王「な…何ですかさこの人の多さは…!」

神官妹「恐らくは…街の許容量の10倍は集まったかと思います」

神官妹「勿論お金の方もそれ以上に…」

魔王「し、神官妹さん…貴女は一体何を…!?」

姫「こ、これは一体どう言う事じゃ…!」

商人「…;」キョドキョド。

神官妹「あ~らご機嫌麗しゅうお姫様、まだ借金を返す期日まで日がありますが、今日は一体何のご用で御座いましょうか?」

姫「く…神官妹…貴様何をやりおった…!」

神官妹「何をですって? まあ姫様に聞かれたら、一王国民として答えなければいけませんよね?」

姫「ええいっ! 早くしろっ!」ダンダン(地団駄)

神官妹「まあ焦らず…焦らず」

姫「く…」

神官妹「話は簡単ですよ…法王様にこの街に来て貰えるようお願いしただけです」

商人「…!」

姫「ほ、法王じゃと!?」

神官妹「はい、そうです法王様です」

神官妹「法王様に来てもらい、魔族と人間が仲良くなれるように、世界平和記念式典を執り行ってもらう事にあいなりました」

神官妹「聡明な姫様なら、もうお分かりと思いますが…そんな式典は創造神信徒に取ってはとてつもないビッグイベントっ!」

神官妹「その開催により、国を超えて莫大な信徒数を誇る、創造神信徒たちが王族貴族一般人から一同に会して集まったとそう言う訳で御座いますよ姫様?」

姫「ぐぬぬ」

神官妹「これだけ集まれば…たった7日でもどれだけお金が動くか…オランピックより凄い事になるかも…」

姫「!」

神官妹「まあ…姫様に借りたお金の位は、元金ごと返すくらいは楽々稼げそうですけどね!  おほほ…」

姫「むうう…」

姫「しかし…王国以外は魔界には入れないようにしてたのに…どうして…」

神官妹「はあ、まあ全部の国のお偉いさんが国境付近に集まって、国の者に魔界に行っても良いと言われたら…あのお気が小さい王様じゃ頷くしか無いですよね」

姫「く、国の者じゃと!? 一体誰が…」

神官妹「さあ…話に聞くととても美人だったとか…」

姫「…」

神官妹「…」

姫「とぼける気か?」

神官妹「はて何の事でしょう~?」にっこり。

姫「く…! まあ良い…」

姫「じゃが何故じゃっ! たった3日で何故これだけ段取りを、そ、それに法王様をそんな簡単に動かす事など…」

神官妹「出来ますよ」

姫「!」

神官妹「私たちはお願いの仕方を知っていますから」

姫「…!」

姫「ふん…なるほど、色々な国を旅して回った勇者の一行の顔は伊達では無いと言う事か…」

商人「神官妹っ! 姫様に対して…」

姫「良い…帰るぞ」

商人「は? し、しかし…」

姫「良い…置いていくぞ?」

商人「は、はっ! い、今行きます」

姫(ちっ…奴らの顔の広さを侮っていたわ…)

姫(じゃがまあ良い…今のうちに精々良い気になっておるが良い)

姫(何をやっても最後に笑うのはわらわじゃからなっ!)

神官妹「べろべろばー! ばーかばーかっ!」

魔王「…;」

神官妹「あースッキリした…♪」

魔王「あの…お二人はそれをやるために国々回っていたのですか?」

神官姉「うん…!」

神官妹「そうです、とりあえず法王様にぱぱっと約束取り付けてきて、後は二人で手分けして全部の国に宣伝してきました」

魔王「そんなことを…」

魔王「そ、それにしても凄いですね!」

魔王「魔族なのであんまり詳しくは分かりませんが…法王様と言う、これだけ人が集まってしまうような人物をお願いするだけで動かせるなんて」

神官妹「まあそうですけど…でもそのお願いがちょっと難問ですけどね…あはは」

神官妹「女勇者キレるだろうな…まあ説得する暇なんて無かったからしょうがないけど」

魔王「え…女勇者…さん?」

神官妹「そうです。そう言えば女勇者は何処に言ったのかしら」

神官妹「お願いには、女勇者が必要なのですが…」

魔王「女勇者さんが…」

魔王「く…」

神官妹「…? どうしました…?」

魔王「女勇者さんは…」

神官妹「?」


続く

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