第48話 魔王「魔法使いさんは子供に優しい?」

魔王 (ヘルムシュヴァインセン…)

魔王(愛している人の悲痛な顔を見ながら、その対象者を食べるなんて…吐き気がするほどおぞましい…)

魔王(そんな恐ろしい料理が魔界にあったなんて…今まで知らなかった)

魔王(魔王軍…妖魔将軍は攻め滅ぼした街に対してそんな非道な事をやってたのか…)

魔王(これは許されない事だ…新しい魔界ではそんな風習は禁止しよう…しかし)

魔王「それにしても…」

魔法使い「何だ…」

魔王「その、魔法使いさんは…その後どうやって助かったのですか?」

魔王「妖魔将軍に囚われたのでは?」

魔法使い「…お前、結構遠慮しないで聞いてくるんだな…」

魔王「え、あ、すいません…お辛い過去なのに…」

魔法使い「いや…意地悪した、話に詰まる事が無ければ、それも話すつもりだったから気にするな…」

魔族子供♀「大丈夫?」

魔法使い「ああ…大丈夫だ…」ニコ。

魔法使い「思い出すと今でも辛いのは本当だが…」

魔法使い「…まあこれでも、昔よりは酷くは無くなってはいるんだ」

魔法使い「女勇者のパーティーに入ってから、少しは前向きには考えるようになれたからな」

魔法使い「それを考えれば、女勇者はクズっ!↑ だが…あのパーティーに入った意味は少しはあったかも知れんな」

魔王「クズ…;」

魔法使い「話を続けよう」

魔王「は、はい」

魔法使い「娘を…失った私は生きる気力を失い廃人となっていた」

魔法使い「そして魔族どもに良いように連行されていった」

魔法使い「実は魔族は生かした方のエルフには共通性があった」

魔王「共通性…?」

魔法使い「ああ…みな魔力が充実していた500歳くらいの年齢が選ばれていたんだ」

魔王「500歳くらいのですか」

魔法使い「そうだ、どうやって見極めたかははっきりとは分からんが、恐らく漏れでる魔力の量で分かったのだろう」

魔法使い「そして魔力が多いのが選ばれたのは、魔工(人工)的な魔石を作るためだった」

魔王「魔工ですって!? そんなどうやって…」

魔法使い「エルフから死ぬまで魔力を吸出して、その魔力を圧縮させるんだ」

魔族子供♀「酷い…」

魔法使い「そうだ…酷い事だ、覚えておけ」

魔族子供♀「…うん」

魔法使い「私もその工房に連行される途中だったのだが…」

魔法使い「絶望して意識が朦朧としていた事から運悪く…いや運が良かったのか…」

魔法使い「行く途中の切り立った崖の道で足を滑らせて転落してしまったのだ」

魔法使い「その下は急流の川があって…私は奇跡的に溺れる事なく川岸まで流れ着けたのだ」

魔法使い「それで私は助かり、まあ色々あって創造神に魔法を教えてもらって今の力を手に入れたと言う訳さ」

魔王「魔法使いさんも創造神様に会ったことがあるんですか?」

魔法使い「…? その言い様は…お前も創造神と会ったことがあるのか? 魔族なのに」

魔王「創造神様は万物の神ですから、万物の一つである魔族も、生み出してくれた神として信仰してますよ」

魔王「実際、私が幼い頃魔王城に創造神が来たことがあって大変良くしてもらいました」

魔法使い「今でも幼いじゃないか…」

魔王「一応これでも人間で言えば15才位なのですが…」

魔法使い「なるほど、とするとエルフだと200~300才位になるのか…」

魔法使い「…見えんな」

魔王「よ、余計なお世話ですよ…!」

魔法使い「ふ…怒るな」ガシガシ。

魔王「あ、頭を撫でるとか…さらに子供扱いするのは止めてください!」

魔王(これでも一応魔王何だから…)

魔王(でも魔法使いさん…何かやけに僕たちには優しいな…)

魔王(僕たちは憎むべき魔族なのに…)

魔王(もしかして…僕たちが子供だからだろうか?)

魔王(子供をあんな酷い事で失ったから…寂しいのかな…?)

魔法使い「まあ今日の授業はここで終わりにしよう」

魔法使い「もしも今日聞いた話で少しでも感じる事があったら…」

魔法使い「…そんな事が起きない魔界にお前たちが大人になったらするんだ…」

魔族っ子幼「あたしするっ!」

魔族っ子幼「まほーつかいが、かなしくならないせかいにするよ!」

魔族子供♀「私も…」

魔法使い「そうかありがとうな…」なでなで。

魔族っ子幼「えへへ」

魔族子供♀「…///」

魔王(大人になったらって魔法使いさん、もう僕たちを殺す気は無いのかな?)

魔王(…でも、もしも僕が前魔王の息子って分かっちゃったら…殺されちゃうのかな…)

魔王 (…どうしよう)

魔族子供1「…」

魔法使い「ん?」

魔族子供1「…! け、けっ!」プイ。

魔族子供1「お、俺はお前の言葉なんかに騙されないからなっ!」

魔族子供1「ほんとだぞ…///」

魔法使い「ふ…」ガシガシ。

魔族子供1「あ、頭触んな、ババア!」

魔法使い「じゃあ明日も授業はやるから、今日話した話はしっかり覚えておくんだぞ?」

魔族子供1「けっ、もう忘れました~」

魔法使い「そうか…じゃあ思い出すまで刺激を与えてみようか?」

魔族子供1「あ、急に思い出しましたー! うっす先生! 明日もご指導ご鞭撻の程をよろしくお願いします」

魔法使い「ふ…素直でよろしい」

魔法使い「じゃあ解散だ、村の中は好きにうろついてて良いが、外に出たり、悪いことはするなよ?」

一同「はーい」

魔族子供1「…」

魔族子供1(だ、誰が信じるもんかあんな話…精々今のうちにいい気になってやがれ…)




魔法使い「…さて」

魔法使い「ん?」

エルフ兵士「…」

魔法使い「…どうした?」

エルフ兵士「魔法使い様…失礼を承知で言わせて頂きます…」

エルフ兵士「こんな茶番は止めてください!」

魔法使い「…」

エルフ兵士「これ以上魔族何かに村が汚されるのは私は我慢出来ません…!」

エルフ兵士「それに何をしたって魔族!  こんな事をやっていても無意味です!」

エルフ兵士「きっとやつらは大きくなったら私たちに牙を剥きます」

エルフ兵士「そうならないうちに殺すべきです…!」

魔法使い「ならん…あの子達は私が預かる、この決定に変更は無い」

エルフ兵士「ですが…!」

魔法使い「ならん! 私の命があるまであの子達を傷つける事は禁ずる」

魔法使い「話は以上だ…下がれ」

エルフ兵士「魔法使い様…!」

魔法使い「下がれっっ!!」

エルフ兵士「…! く…」

魔法使い「…」スタスタ。

エルフ兵士「あれは…!」

魔法使い「…」ピタ。

エルフ兵士「あれは貴女の子供じゃ無いんですよ…?」

魔法使い「…」

魔法使い「…」…スタスタ。

エルフ兵士「貴女は間違っているっ!」

魔法使い「…」スタスタ。


~エルフ村外壁~



エルフ門番「…」スタスタ。

エルフ門番「…」キョロキョロ。

エルフ門番「…」スタスタ。

女勇者「よっと…」

女勇者(さ~てと、あいつら生きてるかな…?)

神官妹「何で私まで…」ぶつぶつ。

女勇者「はあ? 今さら何言ってるんだよ…」

女勇者「だいたいこんな事になったのも、お前の思慮の足りない作戦のせいだろうが…」

神官妹「仕方ないじゃない…まさか私たちの行動が商人に筒抜けだったなんて…」

神官妹「魔王を生きて連れ戻せなければ、姫様に魔王を殺そうとした事チクルって言うんですもん」

神官妹「魔王と会談を楽しみにしていた姫様に、合わせないようにする為魔王を殺すなんて完全な反逆罪!」

神官妹「国家転覆を狙ってるとは言え、まだ王国と戦争するにしたって女勇者の力があっても泥沼化は必至!」

神官妹「まだ姫様に逆らうタイミングではないわ…」

女勇者「アタシは戦うのは確定なのかよ…」

神官妹「何よ嫌なの!?」

女勇者「わりと…」

神官妹「…」

女勇者「…」

神官妹「捨てないでっ!」ひしっ!

女勇者「ばっ! 引っ付くなよ気持ち悪い!」

エルフ門番「だれだっ!」

女勇者「…!」

神官妹「むぐ…」

エルフ門番「…」キョロキョロ。

女勇者「…」

神官妹「…」

エルフ門番「むぅ…気のせいか…?」スタスタ。

女勇者「…」

神官妹「…」

女勇者「ぶはー…馬鹿…静かにしろよ…!」ヒソヒソ。

神官妹「勇者だって…!」ヒソヒソ。

エルフ門番「やっぱり誰かいるんだろっ!?」ズサー!

女勇者「!?!?」

神官妹「!?!?」

エルフ門番「…」キョロキョロ。

女勇者「…」

神官妹「…」

エルフ門番「むむ…」

エルフ門番「やはり誰もいないか…」スタスタ。

女勇者(あいつ…わざとやってんじゃ無いだろうな;)

神官妹(無能エルフ…;)

女勇者「まーここからは慎重に行くぞ…とりあえずやつらを探すためにエルフの村に潜伏するぞ」ヒソヒソ。

神官妹「ええ…」ヒソヒソ。

女勇者「…」スタスタ。

神官妹「…」スタスタ。

神官妹「…」ピタ。

神官妹「…ここは村の広場のようね」

女勇者「ああ…」

???「…ちゃん」

女勇者「!」

神官妹「見つかった!?」

神官姉「助け…て…妹ちゃん」

神官妹「…」ジー。

神官姉「私よ…助けて」

女勇者「神官姉!? お前何磔にされてんだよ」

神官妹「何だあんたか…」

女勇者「あんたか…って助けろよ!」

神官妹「え? 何で?」

神官妹「生きてても色々障害になるじゃないこの変態姉は…」

女勇者「いや、そうかも知れないけど…見捨てる程の物じゃ無いだろ」

神官妹「程の物よ…あれ何か立て看板があるわよ…何々」

神官妹「この者、子供に禁忌な気持ちを抱く咎人なり、よって石打の刑に処す」

女勇者「石打ち!?」

女勇者(そう言えば神官姉の体は所々ボロボロだ…まさか今まで石を投げられていたのかっ!?)

神官妹「あら面白そうね私も投げておきましょう。えーい」ぽーい。

神官姉「痛…いっ!」

女勇者「投げんなよっ!」

神官妹「え、何で?」

女勇者「何で? じゃねーだろ、一応お前の肉親なんじゃねえのか?」

神官妹「ふ…時には肉親の方が憎しみが強くなる事もあるのよ」

女勇者「何だよお前、姉の事が嫌いだったのか?」

神官妹「いえ特には強いて言えば…普通?」

女勇者「普通で石ぶつけるのかよ! タチわりいな…ほら大丈夫か?」

神官妹「あーあー助けちゃうんだから…女勇者って変なところじゃ甘いんだから…」

女勇者「うっせ」

神官姉「ありが…とう~…女勇者ちゃん」

神官姉「でも魔王ちゃんは殺らせない…わよ?」

女勇者「ばーか状況が変わって、生きてるなら早くエルフどもから取り返さなきゃいけない事情が出来たんだよ」

女勇者「だからとりあえず殺すとかしねーよ」

女勇者「まー利害の一致? みたいなもんか…」

神官姉「お、女勇者…ちゃんも可愛…い子供守るために?」

女勇者「アタシはそーゆー利じゃないから…つーかそんなんだから石打ちされるんだっつーの…少しは反省しろ」

神官姉「懲りない…のが、私の取り柄」キラーン。

女勇者「そう言うの取り柄っていわねーの」

女勇者「まあいいや」

女勇者「じゃあ面子も揃った事だし魔王を探しに行くか…」

神官姉・妹「おー」


続く。

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