第26話 魔王「呪族の王女怖すぎ!」

謎の女「きゃあああああああああああああ!!!」

魔王「ひっ…あ」

魔王(な、何ですかこ、この人いきなり叫びだして…!?)

魔王(こ、恐い…)

魔王「う、うああー!!」ダッ(逃走)

謎の女「…! ああああああー!!」ダッ(追いかけ)

魔王「うわ! 追いかけてきたっ!?」

勇者(よしっ! 良い感じに魔王と戦闘が始まったぽいぞ!)

勇者(予想通り頭のネジ飛んでるメンヘラ女だったな)

勇者(何せ国民全員毒殺するくらいの女だからな…)ウププ。

勇者(よーし…そのまま潰しあっちまいな…って)

魔王「うわーん>< 勇者さんあの人恐いです! 助けてくださーい!」

勇者「は!? ば、馬鹿っ! こっちに来るな!」

謎の女「きゃあああああああああああああ!!」

勇者「うわっ! マジキモ恐っ!」ダッ(逃走)

魔王「あ! 勇者さん待ってくださーい!><」

勇者「だからこっちくんなってっっっ!!」

魔王「うわーん><」タックル

勇者「…!」

魔王が恐怖のあまり、手加減なしに抱きついてしまった為、壁に向かってぶっ飛んでいく勇者と魔王。

ドーーーーーーンっっっ!!!!

勇者「ぐはっ…」

魔王「ううぅ><」ガタガタ

勇者「てめっ…ふざけんな…ゴホゴホ!」

勇者「離せ! バカヤロ…エホッ!」

魔王「嫌ですー!><」ギュウウウ、メキメキ

勇者「ちょ…ま、ぎゃああああっっっ!」

謎の女「…!」

謎の女「魔王…またあんなに美しい女に抱きつくなんて…」

謎の女「しかもあんなに情熱的にぃっ!」

謎の女「許さなぁいーーっっっ!」

謎の女「【呪族の王女】に対して、そんな真似をするなんて許せないぃいーひぃーひぃーっっ!」

魔王「…! やっぱり呪族の王女なのですか?」

勇者「それ以外に誰がいるんだよ…つかは…なせ」

魔王「え? あ、勇者さん一体どうしたと言うのですか!?」

魔王「僕のような弱い魔族の力で抱きつかれただけで、こんなに苦しむなんてっっ!」

魔王「もしかしてどこかに怪我を!?」

勇者「何でも良いから…とにかく離してブクブク」

魔王「え? ゆ、勇者さん!? 勇者さーん!? 大丈夫ですか!?」ガクガク(勇者を揺する)

勇者「あ゛あ゛あ゛って揺するな!」

魔王「あ!良かった勇者さん目を覚まされたのですね!」

勇者「良くねーよっての!」

魔王「え? どうしてですか?」キョトン

勇者(こいつ…今アタシの事を絞め殺そうと…!)

勇者(アタシの企みに感づいたか…それとも遊びは終わりってか…)

勇者(く! どちらにせよ早く魔王に死んでもらわないと身が持たないっ!)

勇者(呪族の王女と早く同士討ちにさせないとっ!)

呪族の王女「何で私を選ばずにぃぃ!!」

魔王「え? な、何言ってるんですか!? ぼ、僕は貴女が求婚した魔王じゃありませんよ」

呪族の王女「きぃえええええええっっ!!」

魔王「ひぃぃ!」

魔王「あ、あの人は何を言ってるんでしょうか!? 僕は違う魔王なのに!?」

勇者「は? 知らねーけど、大方お前の事好きになった魔王と勘違いでもしてるんじゃ無いか?」

魔王「え! そんな事あるんですか!?」

勇者「そりゃ普通は無いけど、流石に三千年もメンヘラやってれば、そうなんじゃねーの?」

魔王「メンヘラ…って何ですか?」

勇者「それは…あの女みたいなやつの事を言うんだよっ!」

そう言うと勇者は魔王を、呪族の王女に向かって投げつける。

魔王「な、何をするですか勇者さんっ!?」

勇者「はあ? 呪族の王女はお前をご所望何だから、お前が相手にするのが当然っしょ!」

魔王「ひ、酷いです勇者さんっっ!><」

勇者「あっははー! 精々頑張れ!」

呪族の王女「…」

勇者「…!」

呪族の王女「ひぇいっ!」

勇者「くっ!」 キィン!

いつの間にか勇者の間近まで迫っていた呪族の王女は、呪力で強化した爪で勇者に襲いかかるも、寸でのところで聖剣で受け止める。

勇者「なんの…つもりだ…このっ!」

呪族の王女「こんな綺麗な顔の女が…魔王に近づくなど…私が許さない!」

勇者「あ、あれ? そうなっちゃうんだ」

勇者「べ、別に…あんなの取る気なんてないから、戦う必要は無いんじゃ無いか?」

呪族の王女「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」グググ

魔王「勇者さん!」

神官妹「勇者!」

勇者「うは、マジ話になんねーな…これだからメンヘラは…」

呪族の王女「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロォーーーースっっ!」

勇者「…の! 調子に乗んな!」

勇者「聖光…浄魔斬っ!」

呪族の王女「…!」

勇者の必殺技により大爆発が起きる。

勇者「はあ…はあ…」

勇者(ちっ! やっちまったか…魔王にぶつけて共倒れさせる作戦だったのに…)

勇者(こうなりゃ仕方無い、また別の手段を…)

呪族の王女「くくく…かような弱き技で、わらわ倒せると思ったか愚かなメスネコよ」

勇者「無傷!? な、何で…あ」

勇者(魔族じゃない呪族だからか…く)

勇者(アタシの技は魔族には強いけど、それ以外は地力の力で戦わないといけない)

勇者(その力で戦って無傷と言うことは…アタシの手段じゃ傷一つ、つけられないって事か!?)

勇者 (く…どうすれば)

勇者(つか…魔王にぶつけて消耗したところを両方殺そうと思ったのに、何でアタシが消耗してるのっ!?)

勇者(それにメスネコって…アタシは魔王を取る泥棒猫って事かよ!?)

呪族の王女「殺すっっ!」

勇者「く! 聖光転身!」ヒュン!

呪族の王女「む…!」

勇者「はあ…はあ…」

呪族の王女「ほう…速さだけは中々の物だな…」

呪族の王女「流石メスネコだけの事はある…と言ったところだのう」

勇者「だからっ! そんなガキ要らないって言ってるだろっ!」

呪族の王女「だがいつまで逃げ切れるであろうな?」ヒュン

勇者「人の話聞けっての…くっ!」

呪族の王女が片手を振ると、勇者が咄嗟に逃げた先の建物の壁が、まるでバターのように易々と切れる。

呪族の王女「ほほほ…ほれ逃げろ逃げろ」ヒュンヒュン!

勇者「く…ぐ!」サッ、ササッ

呪族の王女「メスネコにはお似合いじゃ! ほうれ!」

勇者「…! のっ…!」シュン

呪族の王女「!」

勇者「調子に…乗んな!」ドゴォ!!!

呪族の王女「ぎ…!」

勇者の蹴りを受けた呪族の王女は、その蹴りの圧力でグニャリと体を折れ曲げると、そのまま力の流れにそって吹き飛び、そして物凄い轟音響かせ壁に激突する。

勇者「アタシの技は、何も魔族だけに特化してる訳じゃねえっつーんだよ!」

呪族の王女「ほう…」

勇者「…!」

呪族の王女「力を足に集中させ威力あげたか…」

呪族の王女「少し効いたぞ…少しな」

勇者「…!」

勇者(マジ…かよ、魔族特攻が通じない相手とは言え、アタシが敵わない敵が魔王以外にまだ魔界にいたなんて…!)

呪族の王女「少しとは言え、よくもわらわに三千年ぶりの痛み与えてくれたな! この綺麗だからって調子に乗るでないぞ!!」ヒュン

勇者「…! く!」シュン

呪族の王女「ほほ…」

勇者「…」

勇者「…!」

勇者「な、何だ体に何かが絡んで…これは…糸?」

呪族の王女「呪いの本質は絡みまとわりつく物…さあわらわの呪極焦熱糸(じゅごくしょうねつし)の味を存分に味わってみよ」

呪族の王女「きゃあああああああああああああ!!」

勇者「な、に…!」

勇者「!」

勇者が体の異変に気づいた瞬間、絡み付く糸の部分が焦熱のごどく発熱し、勇者の体を焼いた。

勇者「っああああ!?!?」

呪族の王女「ほほほ、呪極焦熱糸が起こす呪いの熱は味はどうじゃ?」

呪族の王女「まるで内部から焼かれていくような痛みであろ? ほほほ!」

勇者「やめ…ああああああー!!」

勇者が呪族の王女の呪いの技で、苦しみの声を上げる。

しかしその瞬間、突然光が辺りを包む。

勇者「…? 痛く…無い?」

呪族の王女「何…!」

神官妹「く…!」

呪族の王女「ほう…神聖職の解呪魔法か」

呪族の王女「小賢しい真似をと言いたいところじゃが…」

呪族の王女「確かにわらわ呪族の呪いには有効な手段ではあるが…」

呪族の王女「だが呪族の王たるわらわの呪いが、か弱き人間ごときの、神聖魔法で解呪出きると思ったか!」

呪族の王女「思い知れっ きゃあああああああああああああ!!!」

呪族の王女が叫んだ瞬間、呪いの威力が上がり、凄まじい圧力になって神官を襲う。

神官妹「…! きゃあっ!」ドン!

神官妹「う…」

勇者「ちょっと神官妹! しっかりしろし!」

勇者「たったそれだけで、気絶してるんじゃねーよ! もっと頑張れよ!」

神官妹「私はベストを尽くした…ガク」

勇者「ガク…とか死んだふりしてんじゃねーよ!」

呪族の王女「ほほ…待たせたなメスネコ、さあたっぷり可愛がってやろう…」

勇者「ちょっと…待って…あいつ生きてるよ! 何とかしないとまた邪魔されるよ!」

神官妹(勇者! …ちょ余計なことっ!)

呪族の王女「あんな雑魚どうでも良いわ…それよりわらわはお前のその綺麗な顔が歪むの見てみたい」

勇者「な!?」

呪族の王女「一体この愛らしいメスネコはどんな叫びをあげてくれるんじゃろうなぁぁ?」サワサワ。

勇者「ひっ…顔触るなぁ…!」

呪族の王女「ほほほ…何をこれくらいで嫌がっている…また地獄の炎がごとく、焦熱の苦しみを存分に味わうと言うのに」

勇者「ひっ」

先ほどほんの少しの間感じた、呪極焦熱糸の痛み思い出すと、勇者はあの痛みがまた来ることに身を竦める。

そして。

炎に包まれた少女『助けてー! お姉ちゃんーー!』

その熱からか、またあの、炎の中で焼けただれていく少女がフラッシュバックする。

勇者「やだ…」ガクガク

呪族の王女「何?」

勇者「あついのやだ」ジワ

勇者「あついのやだあついのやだあついのやだあついのやだ、やだやだやだやだーーー!」ポロポロ

勇者「私は燃やされたくない! 燃やさないで! 燃やさないで!」

勇者「助けて助けて助けてよぉ!!」

呪族の王女「ほ、ほほほほ…! これは良い反応を見せてくれる」

呪族の王女「どうやらお前は火に関して、よほど恐ろしい思い出があるようだの」

呪族の王女「ほほ…ほほほ! これは楽しみじゃ! 本当に楽しみじゃ!」

勇者「やだやだやだやだ!!」

呪族の王女「良い反応を見せてくりゃれ? ほおれっ!」

勇者「やーーーーっ!」

呪族の王女「む…!」

勇者「え?」

今まさに、勇者が呪族の王女の地獄の業火にくべられようとしていた瞬間。

強大な魔力の光が下から流れてきて、勇者の身を封じていた呪極焦熱糸の糸を切り払った。

そして力なく自由落下する勇者を、地面に激突する瞬間、受け止める者がいた。

それは───。

魔王「ぼ、僕の友達を苛めないで下さい!」

勇者「…魔王」


続く

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