異世界も程々に
停止中
異世界の廃品回収車
「えー……こちらはぁ、廃品回収車でございまぁす。」
カトブレパスに引かせる荷車の横を、ありふれた売り文句と共に歩く。
趣味が高じてジャンク屋なんて始めたはいいが、赤字赤字で食うにも困る程だったんだが、ついでのおまけ程度に行っていた廃品回収業が、最近すこぶる調子良い。
「ご不要になりましたぁ、古新聞、古雑誌ぃ……。」
ちょっと前までは、ゴミ屋敷の変人扱いだったのに、人間ってのは怖いねぇ。
今じゃあ、いつもありがとう! 頼りにしてるよ! なんて声かけられるし、ガキんちょたちからは、ゴミのおじちゃん! なーんてな……。
誰がおじちゃんだ!? お兄さんだろうが!? あぁ!?
俺は忘れねぇからな!? ゴミが好きならこれあげるよ! って腐った生卵投げてきた事ぜってー忘れねぇかんな!?
「家具に魔道具等ぉ、無料でお引き取りいたしまぁす。」
一緒に仕事してるこいつもそうさ。
目が開く前は、珍しい魔獣だと散々見世物にしたくせに、もうじき目が開くから殺そうだぁ? ふざけた事言ってんじゃねぇよ! 俺が責任もって育てる! 文句あっか!
なーんて、
動きが
こいつと目を合わせたら、即死亡。
目を合わせないよう、慎重に慎重にって世話してたんだけど、長くは続かなかった。
だって金が無いんだもん。
だから最後だと思って、こいつに山盛りの餌ぁ押し付けてさ、目ぇ閉じながら言ってやったんだ。
もう金が無ぇ……だから今からお前の目を見る! 俺が死んだら好きなだけ食って森にでも行け! だけどこんだけ餌やったんだから人間に復讐とかすんな!
これでもかって勢いで
でも俺は死ななかった。
なぜなら、こいつが目を閉じていたから。
友情が芽生えた瞬間ってやつだ。
だが残念な事に、友情じゃあ金は稼げねぇ。
こっからの生活は、別の意味で大変だった。
本業休んであっちこっちで日雇い労働。
収入が良いからと、時々危ない橋を渡っては、何度か死にかけた。
強面のおっさんに、代わりはいくらでもいる……! なんて言われた時はちびりそうになったが、こいつの親代わりは俺しかいねぇ! と歯ぁ食いしばった。
それと並行して、
正式にこいつを飼おうとすると、世の中色々面倒なんだよな。確かに、言ってる事は分かるけどさ。
正直、まともな教育を受けてない俺には、この勉強の方が堪えた。
なんせ読み書きから始めなきゃならなかったからな。
あれちょうだい! それいくら? なーんて、間抜け面であれそれこれどれで生きてきたつけが回ってきたのかもな。
まあでも、その甲斐あって、今じゃこうして相棒やってるわけだ。
矛盾してるけど、良くはないが良い思い出だよ、今となっちゃあ。
こいつの目に食わせてもらってるわけだし。
「又ぁ、ご不要になりましたぁ……。」
さっき人間は怖いなんて言ったけど、俺も含めてって事だからな。
相棒なんて言ってるが、こいつを利用しているのには違いないし、なにより……。
「
人殺しで食ってるんだもんなぁ……。
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