ホラー オムニバス

ユーキチ

ショートショート

くりかえ死

44歳主婦、ユメジ。

家事に従事し約20年。

旦那はいつも帰りが遅く、粗探しの天才小姑に尻を敷かれた生活だった。


4月4日彼女は同じ日を繰り返している。

夢の世界だと彼女は思っている。

夢からさめれば毎度その日の4:44をデジタル時計が表示している。

そしてまたその日も夢となる。それを何度も繰り返してきた。


夢からは必ずあるオチで覚める。

小姑が自殺。

前回は部屋にガスを充満させて自害していた。

初めの頃は小気味よいものだった。

散々小言や陰口に耐えてきたんだ。

憐れなババア。


夢から覚めた時、ユメジは自分がいつも笑っている事に気付いた。

しかしそれはもう飽きた。

目が覚めると死んだはずの彼女が生きている現実が待っていた。

もう、疲れた。






ユメジは姑の手首を掴んでいた。


アパートの屋上から飛び降りようとした所をユメジは発見した。

見送ってやってもよかった。

が、またこの日が夢となり同じ日を繰り返すのはもう沢山。

そう思って彼女が落ちる瞬間に間に合った。

「何度死ねば気が済むのよ。」

「ああ、やっと助けてくれた。」

やっと?

姑を引き上げる。

この人も4:44のループを…?


「ありがとうね。私の代わりになってくれて。」

その時ユメジは彼女に肩をトン、と押された。

そして数秒後には、遥か上空に姑の笑顔が見えていた。

激しい音と共にユメジは何も感じなくなった。



ユメジはあれ以降ずっと、同日4:44に目を覚ます。

自分が不慮の事故にて死んでしまう一日の夢を永遠と。

もう慣れてしまった。


ユメジが死ぬ間際、いつも一人の老婆がこちらを見ていた。




いつも、こっちを見て、

姑が笑っていた。


(繰返死)

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