2 鳴き下手あひると灰被り ②

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 スワン先輩。本名、白島湖士郎。

 普段はめったに部室を出ず、ひどいときには授業すらサボって絵や彫刻に取り組んでいるというとても偏屈な人。どういう事情があるのか顔を仮面で隠し、なにがあっても素顔を晒そうとしない。

 誰がどう見たって問題児としかいえない態度だけど、それが今日まで黙認されている理由はスワン先輩の『才能』にある。小学生の頃から神童として美術界に名を轟かせており、その才能に惚れた高名な芸術家や画商から目をかけられ、高校に入る頃には小規模ながら個展を開くほどになっていたとか。揺籃に入ったのもスワン先輩の才能と実績に目をつけた理事会が直々に特待生としてスカウトしたからだ、なんて真偽不明の噂もある。

 聞けば聞くほどすごい人で、実際作品を見ると美術に詳しくないわたしでも圧倒されるような迫力があるけれど……わたしはどうしても彼のことが苦手だった。無口で、ぶっきらぼうで、なにを考えているのかわからなくて――おまけにあの仮面だ。悪い人じゃないとはわかっていても、仮面の下から覗くあの鋭い目に見つめられると身がすくんでしまう。

 だから、こうして二人きりにされるとどうしたらいいかわからない――何か話そうにも相手方はまったく喋ってくれないしこちらにも話題がない。かといって黙っているのも居心地が悪い。クッキーをかじる音と鉛筆が紙を擦る音が妙に大きく響く。

「……あの、スワン先輩……」

「…………なんだ」

 長い沈黙の後、返事が返ってくる。

「えっと……ちょっと休憩しませんか? 紅茶とクッキーもまだ残ってますし……」

「いい」

 即答。この先輩、少しでもコミュニケーションする気はないんだろうか。

「じゃあ、なにかお手伝いすることがあれば言ってください。わたし、なんでもしますから!」

「しなくていい」

 またも即答。そして少し間を置き、スワン先輩はこう続けた。

「新入りにさせるようなことはない。言われた通り、大人しくしていろ」

「……はい」

 冷たい声音にそれまで薄々感じていたものが確信へと変わる。スワン先輩はわたしのことを気に入っていないらしい。知らなかったとはいえプロの道を歩む芸術家の先輩に対し美術部呼ばわりしたことなのか、それとも最初にスワン先輩の言う『美しくない依頼』をしてしまったからなのか、はっきりとした原因はわからないけど……少なくともあの目や態度を見る限り、一緒にいて居心地のいい相手とは認識されていないのは確かだった。人から嫌な目で見られるのは慣れてるつもりだけど、それでも邪険に扱われるのは気分が良くない。

「うぅ……」

「………………」

 半分無意識にため息をつくと、スワン先輩がなにか言いたげに頭をがりがりと掻いた。しかし結局、彼がそれ以上なにか言うことはなかった。

 しかし――なにもするなと言われると一層居心地が悪くなる。先輩方が仕事やら不始末の後始末やらでなにかしら動いているのに、『新入り』のわたしだけがソファでさくさくクッキーをかじっているというのは……せめて少しでもできることはないかときょろきょろ辺りを見回し、先程の清木先輩の言葉を思い出した。

「……汚い」

 上手く客の目にはつかないようにされているけれど、よく見れば紙片やら菓子袋のゴミやら誰かの服やらがそこかしこに散らばっている。隅のほうなんて埃が積もってるし。男所帯だから? 誰か掃除しようと思わないんだろうか……こんなに散らかっていると、清木先輩じゃなくたって怒りたくなるだろう。私だって怒りたい。というか、先生とか生徒会とかに怒られないのだろうか?

「よし」

 片付けよう。先輩達が帰ってくるまで本格的な掃除は無理にしても、ゴミを拾ったりよくわからないものを整理したりするくらいはできるはずだ。スワン先輩もそのくらいのことなら怒ったりしない……よね?

 そうと決めれば善は急げ。紅茶とお菓子にウィザード先輩が置いていった埃除けの蚊帳を被せ(本当に如才ない……)、手始めに近くに落ちていたビニール袋でティッシュや菓子袋を拾い集める。がさがさ鳴る音に気づいたのかスワン先輩が振り向くが、特になにも言わずに作業を再開した。ほっとするのと同時に、あなたも少しは片付けたらどうなんだ、と少し苛立ちが湧いてくる。スワン先輩のアトリエとなっている区域の散らかり具合も気になるけど、とりあえず今日は諦めよう。

「この服は……」

 落ちている服はワイシャツがほとんどだったが、中には見覚えのある服も混じっていた。この警察衣装、前にビースト先輩とキング先輩が着てたやつじゃ……まさかと思ってワイシャツ群を調べてみると、裏地のタグ部分に豪快な筆跡で『黄堂』と書かれていた。こんなところに服を脱ぎ捨てて、あの人いつもどうやって家に帰ってるんだろう?

 紙片はどうやらスワン先輩のスケッチだかクロッキーだかのようだった。さすがにこれは捨てていいのかどうかわからない……床に落ちていたからゴミだと思ってしまうけど、前に落ちていたクロッキーをビースト先輩が踏んでしまって喧嘩になったのを見たことがある。とりあえずゴミ袋とは別にひとまとめにしておこう。

 そうこうしているうちにだいぶ片付いてきた。こうなると隅に溜まった埃もなんとかしたくなる。この教室、掃除用具入れはないんだっけ? 確かどこかにそれっぽいロッカーが…………あった。箒とちりとりくらいは入っているはずだ、とロッカーの扉に手をかけるが、なにか引っ掛かっているらしくなかなか開かない。諦めて掃除を中断して先輩達の帰りを待つべきだったのかもしれないけれど、意固地になっていたわたしは力任せに開けようとがたがたロッカーを揺らした。結果――

「開いっ……わああああああああ!?」

 扉が開くのと同時に、中から大量の紙束が落ちてくる。めいっぱいぎゅうぎゅうに詰め込まれていたのか、紙束の雨はなかなか終わることなくわたしに降り注いだ。思わず尻餅をついてしまう。

「い……いたた……」

 頭や腕、落ちてきた紙束に当たったところが痛む。床は紙が散らばりさっきの倍は散らかっている。大失敗だ……先輩達が戻ってくる前に早く片付けないと。

「……おい! なにしてる!?」

 ――スワン先輩の怒鳴り声がした。キャンバスも鉛筆も放り出したスワン先輩が驚いた顔でこちらにやってくる。

「こ、これはその……」

「………………」

 いらいらしたように頭をがりがりかきながら、スワン先輩はわたしと散らかった紙を見比べる。視線が冷たく、痛く感じた。

「……そんなところに座るな。立て」

「つっ……」

 乱暴な手つきで腕を掴まれ、立たされる。強い力で掴まれたせいか、引かれた腕が痛い。

「大人しくしていろ、と言っただろう。言うことも聞けないのか、お前」

「………………」

「だから言ったんだ。右も左もわからない奴が役に立とうとするな。誰もお前に期待なんてしていない」

 言葉の一つ一つが棘となって突き刺さる。スワン先輩の言葉が正しく、それに従わなかったせいでこうなったのだから――返せる言葉などあるわけない。

「ご、ごめんなさっ――」

「いい」

 即答。お前の言葉など聞きたくない、と言外に言われたような気がした。

「……おれたちの言うことを聞くのが嫌なら、無理にここにいる必要はない。おれも、あいつらも。誰もお前を引き留めたりなんてしない」

「…………!」

 はっきりとした通告だった。わたしは美学部に必要ない、と。先輩の支持も聞けないのなら出ていけ――と。当然だ、どんな部活にしろそんな後輩が必要とされるわけがない。なにが「わたしはナルシストじゃない」だ。わたしは充分すぎるくらい思い上がっていた。

「……おい、待て!」

 ――気がつくと、わたしはスワン先輩の腕を振り払って部室を飛び出していた。これ以上スワン先輩の言葉を聞くのが怖くて、恐ろしくて――自分のどうしようもなさをつきつけられるのが惨めで。

 わたしはどうしようもなく美しくない人間だった。



 ◆



「灰庭くん!?」

 プリンスこと青星幸邦は、部室から飛び出してきた影がよく見知った後輩であることに気づきぎょっとした。しかし彼女は彼の言葉に振り向くことなくそのまま走り去っていく。まるで彼らの姿が見えていないかのように。

「えっ、ちょっとどうしたの!? ……スーくん!?」

 部室ではスワン・白島湖士郎が呆然とたたずんでいた。床には紙片が散らばり、なにか只事ではない出来事があったことを匂わせていた。

「スワン……これはいったい」

「あいつ、泣いてたぞ」

 と、文字通り首に縄をかけられ引きずられていたキング・黄堂楽土が口を開いた。

「お前が泣かせたのか?」

「………………」

 沈黙。それが肯定を示していることをこの場の誰もが理解した。

「灰庭さんへの対応も管轄外だ――なんて言うつもりじゃあないですよね?」

「ビースト!」

 と――どういうわけか再び部室にやってきたビースト・宍上紅蓮が呆れたように他部員たちへ視線を投げる。

「演劇部は?」

「部長のいつもの気まぐれで打ち合わせが無くなったんです。で、こっちの様子を見に来たらこのザマですか」

 ビーストは鼻で笑いながらスワンを見た。ぎ、と仮面の下で奥歯を噛みしめるスワン。

「まったく……いつかこんなことになるとは思っていましたが……今度こそあの子、この部に愛想尽かすんじゃないですか? こんなどうしようもないグズと一緒にいたくないでしょうから」

「ちょっと、ビーくん……」

 ビーストの毒舌がいつも以上に辛辣になっている。やんわりと止めるウィザードを無視し、ビーストは続ける。

「なに拗ねた顔してるんです。後輩を泣かせておいて自分が膨れっ面ですか。これだから嫌なんですよねえ、自分が被害者だと思ってる加害者って。自分はこうだから、駄目な人間だからって言い訳して、やるべきことを放棄して。自分で動きもせずに世界に変われだなんて傲慢もいいところですよ」

「………………」

「だんまりですか。羨ましいですねえ、そうやって拗ねていれば先輩や青星君が勝手になんとかしてくれるんだから。ああ、今回も彼らになんとかしてもらったらどうです? そうやってあなたは永遠に置物になっていればいい」

「ちょっとビーくん、言い過ぎだよ!?」

「言わなきゃわからないんだこのグズは! このどうしようもない不細工は――」

「やめるんだビースト!」

 いつになく激昂し、さらに続けようとしたビーストを止めたのはプリンスの言葉だった。

「……青星君」

「もうよしてくれ……これは私の責任だ。誰にだって向き不向きがある。人見知りするスワンと灰庭くんを二人きりにしてしまった私の考えなしがいけなかった……」

 言いながら、プリンスはまるで自分のことのように泣きそうな顔になる。それを見たスワンの目が仮面の下で揺らいだ。

「あなたはまたそうやって……」

「おい、湖士郎。その手どうした?」

 と、キングがビーストを遮り指差す。スワンの右手の平には血が点々とついていた。

「怪我してるのスーくん!?」

「……これは」

 もちろんスワン自身は怪我などしていない。思い当たる節に仮面の下で表情を歪ませる。

「と、とにかく灰庭くんを追おう! スワンは保健室へ……むぎゅう!?」

「お前が行け、湖士郎」

 混乱したまま指示を出そうとするプリンスの頭をわしづかみするキング。

「なにをするんだ!? 背が縮んじゃうじゃないか!」

「ハッハッハッ、縮め縮め。そして可愛らしさに拍車をかけてしまえー」

「私は美しいんだ! 可愛くなんかないぞ!」

「……黄堂」

 迷いで瞳を揺らすスワンに対しキングはこう続けた。

「どれだけ時間をかけてもいい。言いたいこと、言わなきゃいけないことはちゃんと言え。後悔は美しくないだろ?」

「……ああ」

 頷き――意を決したスワンは部室を飛び出す。それを愉快そうに喉を鳴らして笑いながら見、キングはあべこべに部室に入った。

「ハハ、今日も色々あって疲れたな! 寝るか!」

「寝るなよ! 今日のは半分くらいお前のせいだぞ!?」

「スワン……ひとりで大丈夫なのか……?」

 心配そうにスワンの後ろ姿を見つめるプリンスの横でビーストがつまらなそうに鼻を鳴らし――



 3



 ……逃げてしまった。

 大失敗したくせに謝りもせず逃げ出すとか普通に最低だ――そんなのスワン先輩じゃなくたって嫌いになる。

「はぁ……」

 だから、階段の陰でため息なんてついている暇があればさっさと謝りに戻るべきなのだが……あの散らかり具合やスワン先輩に再び向き合わなければならないのかと思うと身体が動かない。本当に、どうしようもなく最低だった。

「これも返さなきゃいけないのに……」

 握りしめていた紙を見て再びため息が出る。無意識に拾ってしまっていたのか、ロッカーから落ちてきた紙を何枚か持ってきてしまっていた。……というか、なんでロッカーにあんなに紙がしまってあったのだろう。そもそもなんの紙なんだ……? なんの気なしに改めて紙を見て、思わず息を呑んだ。

 スケッチブックから切り取ったものらしい――走り書きのようにラフな鉛筆画のカットがいくつも描いてある。モデルはおそらく、美学部の皆だ。リアルなデッサンだったり、漫画のようにデフォルメされていたりと画風は様々だが、どれを見てもはっきりと誰が誰だと認識できる。物憂げに肘をつきながら台本を読むビースト先輩、ソファにふんぞり返るキング先輩にお茶を入れているウィザード先輩、高いところの物を取ろうと背伸びするプリンス先輩……そして、ソファで借りてきた猫のように縮こまっているわたし。

「スワン先輩……」

 それが誰が描いたものかなんて考えなくともわかる。絵に唯一描かれていない人物、美学部一絵が上手いであろう先輩。しかし、でも……あの人がこんな絵を描くなんて。迫力のある彫刻や飲み込まれそうなほどリアルな風景画しか見たことなかったから知らなかった……こんなに優しい絵も描けるなんて。あんな怖そうな人が……そこまで考えて、はっとする。

「……同じじゃん、わたしも」

 見た目や第一印象で勝手なイメージを持ってこんな人だと決めつける。自分が散々悩まされていたくせに、結局わたし自身も同じことをしていたんだ。思えば、怖い人だって決めつけて、スワン先輩のことをちゃんと見ていなかった気がする。彼が本当にわたしを嫌っているのか、ならばなぜ嫌われたのか、確かめもしないで思考停止して。

「本当に最低だ……」

 つくづく自分が嫌になる。体育座りして膝を抱えると、彼に掴まれた腕がずきんと痛んだ。

「――ああ、最低だ」

 突然聴こえてきた声に驚き顔を上げた。息を荒げたスワン先輩がわたしを見つめている。

「……先輩……」

「……おれは、最低だ」

 言いながら、スワン先輩は先程のようにわたしに腕を伸ばす。反射的に身を引くと、先輩はがりがり頭をかきながら呟く。

「腕を、見せろ」

「腕……あ」

 言われて、掴まれたほうの腕に小さな傷ができていることに気がついた。落ちてきた紙に切られたものらしい、小さな切り傷だ。既に止まっているが、血の跡がついている。

「……行くぞ」

「え……ちょっ、どこへ!?」

 逆の腕を掴み、わたしを立たせてどこかへ行こうとする先輩。戸惑うままについていくと、保健室が見えてきた。……保健室!?

「消毒と、手当てだ」

「そ、そんな大袈裟ですよ……もう血も止まってるのに」

 消毒液の匂いに思わず立ち止まると、スワン先輩は怪訝そうに目を細め、わたしの傷を見た。

「……大丈夫、なのか? 本当に?」

「大丈夫ですよ! だ、だから保健室はちょっと……」

「………………」

 沈黙のあと、スワン先輩はまたもがりがり頭をかいた。しばらくそうしたのち、ぎゅっと閉じていた目を開いて、こう呟く。

「……悪かった」

「え……」

「その……全部おれが悪い」

 頭をかきむしりながら、言葉を探すように目を泳がせるスワン先輩。「あー」とか「うー」とか唸りながら、しどろもどろに言葉を続ける。

「おれは……話すのが苦手だ。どう言ったらちゃんと伝わるのか、よくわからん。お前みたいな女子の後輩と話すのも初めてだ。どういうふうに話せばいいか、わからなかった」

「先輩……」

「だから、その……もっと、ちゃんと、お前にわかってもらえるように考えて、話すべきだった。お前のことを考えずに、お前の気持ちを考えずに……そのせいで、お前が怪我をした。お前を、傷つけてしまった」

 スワン先輩はひどく不器用に言葉を紡いだ。しかし、それが彼の言う「ちゃんと伝わる」ように話そうとしている結果なのはちゃんと、しっかり伝わった。

「……謝るのも、最低なのも、お前じゃなくて、おれだ。だから……その……おれが悪くて…………」


「……ごめん。本当に」


 ぺこり、と、スワン先輩は不格好に頭を下げる。わたしは……どうしたらいいか、どんな言葉を返せばいいかわからず、しばらく無言のままでいた。

「『わたしも考えなしでした、こちらこそすみません』……なんて言っておけばいいんじゃないですか?」

「ビースト先輩!?」

 いつのまに!? 背後に立っていた長髪の美男子の声に跳び上がる。皮肉っぽく笑うビースト先輩を顔をあげて睨むスワン先輩。

「宍上……」

「やればできるじゃないですか。あなたみたいな人もちゃんと成長するんですねえ」

「ああ、私は感動したぞ! きみの美しき成長に!」

 と、ひょっこりビースト先輩の後ろから顔を出すプリンス先輩。ひょっとしてさっきまでのやりとり全部見られてた? なんだか恥ずかしくなって顔が熱くなる。

「そして灰庭くん! きみのコードネームをついに思いついたぞ! きみの輝かしく美しい新たなる名前をぜひ部室で発表したいと思うのだがどうだろうか!?」

「え、えっと……」

「ま、その前にあなたが散らかしたところを片付けてほしいんですけどね。あんなに紙だらけじゃお客も入れられませんよ。……どうしても嫌なら、引き留めたりはしませんけどね?」

 嫌味な言い方でウィンクするビースト先輩。そんな彼に舌打ちしつつ、スワン先輩が少し不安そうにわたしを見た。

「灰庭……」

「……はい。ぜひ、教えてください」

「いいんだな!? やったあ! さすが我らがシンデレラ! ……あ」

「早速ばらしてどうするんですか、この馬鹿王子」

 嬉しそうに笑ってくれたプリンス先輩になぜだかほっとした。わたしは美しくないし、お姫様じゃない。でも……ちゃんとここにいていいんだ。いてほしい、って言ってもらえるんだ。

「まったく、誰がロッカーなんかにゴミなんか詰め込んだんでしょうねえ? 片付けも満足にできない人が芸術家だなんて……」

「宍上、お前……!」

「うわあああああ! 喧嘩はよしてくれってば! 争いは醜いぞ、美しくないぞーっ!」

「シンデレラ……か」

 やっぱりなんだか恥ずかしい名前だけど、ちゃんと仲間として認められた証。貰った名前のお姫様みたいに美しくはないけれど、ちゃんとそれに見合うくらいに胸を張って頑張ろう。

 わたしも美学部の一員なんだから。

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