Phase07-01「お迎え」
「ったく、自分が巻き込まれるとは思わなかったのかよ」
「そうなってもデータはそっちに送ってあったからな。お前らが上手くやっただろ」
そこらじゅう埃っぽい、転がっている瓦礫が行く手を阻む。スーツでここを歩くのは辛いものがある。二人は廃墟と化したアリトリアを歩いていた。
「はー。どちらにせよ、あんたが居なくなったら息子はどうなる?」
「そう、だから私は死ねないんだよ。」
白髪混じりの頭に被った埃を払いながらそういう。
「それにしても派手にやったなぁ。壁に穴ぶち開けるとか何使ったんだよ」
「これはアイツの仕業だよ。」
大破している隔壁を見上げながら茶髪の男が言う。
「ナンバー00?持ち出せたのか、アレを?」
「なんの為に家の下にあれを作ったと思ってる。パイロットも居たしな」
「パイロットって、あんたまさか!」
茶髪の男が振り返る。頭から土埃が飛んでくる。無駄だとわかっているがそれを手で払う。
「シミュレーターで訓練はしてある。アレのテストはアイツがやったんだぞ」
「だけどヘタをしたらどうなっていたか」
「問題ねぇ。衛生画像を見るとなんとかこの区域から出たらしい。ジャミング地帯に入ったせいでそこから追えてないがな。それにしても…」
振り返ると風穴が空いた分厚い隔壁がある。反対側には最外壁、三層構造のため一番外側はしまているがこの軌道だと第一隔壁を突破したので中は空洞だろう。
「ATにPFを積むことでここまでの強度が出るとはな。計算では可能だと出ていたがそれを実行してしまうとは。流石は私の息子と言ったところか」
「五分の確率で死んでたけどな。ホント、親子揃って無謀って言葉を知らないらしいな」
茶髪の男が呆れたように言う。合流地点からようやく車へと辿り着いた。本来ならそこまでのルートは確保されているはずだったが派手に破壊されてそれも叶わなくなってしまった。
「…やっと着いた。」
「あー、当分砂漠も見ることないかなぁ」
二人は車に乗り込むとそのまま街を去った。
これでアリトリアの避難率は本当の意味で完全に達成された。瓦礫と埃にまみれた街は住人を失い、研究都市アリトリアはその昨日の全てを失いそこには巨大な隔壁に囲まれた街だけが残された。
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