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福永 護
Act.01 砂漠と海
Phase01-00「悪魔の塔」
人類の文化創造は、争いとともに生まれてきた。今我々が使っている文明の利器のほとんどがそれに当たる。戦いにおいて大切な事、それは相手よりも高い位置に陣取ることである。そのために人は飛行機を生み出し、宇宙開発を進めてきた。
その過程で生まれたのが飛行機やロケットをより正確に飛ばすために生まれたシステムで、それを流用して多くの道具が生まれた。
例をあげたらキリがない。今生きる現代において、空は誰のものでもないという論理は通用しない。誰かが人工衛生を用いて、地上を撮影している。今私がこうしている姿でさえ見えているかもしれない。
二十一世紀から大分後のこと。今危惧されている資源問題が過去のものとなり、人々は太陽光を資源として電力を得ることに成功した。大気圏外太陽光発電施設及び送電システム「アトゥム」は全世界の賞賛の声のもと産声をあげた。
ま、それまでにいくつか超えてきた壁があるのだがそれはまたの話としよう。全世界で起きていた資源争奪の戦争は意味を失い、ひと時の安息が訪れたように思えた。
もちろん“ひと時”なんて表現をするのだからこれは覆されることになる。西暦で言うと大体二千百年位の出来事である。
アトゥム着工から二十年、完成から十年経った年だ。それを祝うための式典が世界各国で行われていいた。
「世界は変貌を遂げた。資源の争いは必要なくなり、全世界への電力供給率は八十パーセントを超える勢いで広がっている。我々統制軍の活動の幅も、戦闘から各国のインフラ整備の協力や災害援助などにシフトしている。世界が戦争を終えてから十年、この日を祝う言葉を送ろう……」
現代において最も大きな軍隊、統制軍。そこの大元帥の言葉だ。アトゥムの完成は彼らの助力の賜物である。世界はそれを賞賛し、彼らは正義となった。正義があるのなら当然それと相反する悪が存在する。
―――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン
空から閃光が走り、元帥が演説を行っていたアトゥム一号機は無残に崩れ落ちた。それに耳を傾けていた民衆は絶望した。平和の象徴とも言われたアトゥム一号機、それは天空からの一撃により無残にも崩れ落ちたのだ。
実際、一号機は試作機だったため現在は外装を残して中身のほとんどは三号機へと移植されていた。だが大気圏外にまで及ぶ巨大な建造物だ。その塩蔵のインパクトは計り知れない。元帥は保護され無事だったが、一号機の残骸は周囲の人々を襲い数万の被害がでた。
それから四時間後、反抗勢力からの声明が発表された。
「人々よ、お前たちはアトゥム神の怒りをかった。我々は神の声に従い、粛清を開始する。その忌まわしき塔は我々を空へと追いやり、多くの同胞を殺した。悪魔の塔である。神の名を冠するなど無礼千万、我々こそ『アトゥム』神の名のもと我々は攻撃を開始する。」
それが、十年続いた平和の終わりだった。世界の報道機関は軍と手を組みこれを必死に隠そうとした。だが戦火が広がるにつれ、それはできなくなっていく。アトゥムサイドの戦力はこちらの想像をはるかに超えていた。巨大な塔を一撃でほぼ全壊させることができる兵器を持つ連中だ。それは容易に想像できる。
さらに統制軍は十年という間、まともな戦闘を行っていなかった。そのブランクは大きく、シミュレータで高い成績を残した兵士でさえ次々と玉砕され、戦闘はジリ貧となっていった。
そして、この戦争も新たな技術を生み出すことになる。『アーマード・トルーパー』これはアトゥムが主力とする人型兵器の総称で、あちらはカンデンと呼称している。これは脚部に搭載されたヒールローラーにより地上戦における機動力は戦車のそれを凌駕していた。唯一、機体の構成により単体での飛行ができないというデメリットを除いては現代最強の兵器と呼ばれた。
アトゥムが量産しているATへの対策として、統制軍も同様の機体を作り出すということが急務とされていた。多くの技術者、科学者を導入し完成されたのが機体名「シーク」である。これにより戦況は一変し、両者の戦力は拮抗した。これにより、世界は2大勢力による戦争に走ることになってしまった。
アトゥムのメンバーも、彼らをバックアップする組織も公表されないまま一年もかからずこの構図は完成してしまう。それから数十年にわたってこの争いは続くことになる。
能書きが少し長くなった、ここからが本題だ。
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