第12話『VSギルバート、アルバート』

 レオンとミシェルがステージへと上がると待ってましたと言わんばかりに歓声が沸き上がる。

 レオン! レオン! レオン!

 ミシェル! ミシェル! ミシェル!

 そんな中、ゆっくりと風雷坊が目の前に現れる。

 お互い、一定の距離まで移動すると同時に睨み合いが始まった。

「ようやく、この時が来たな!」

 先に口を開くはギルバート。 彼は悪人顔負けの悪い笑みを浮かべながら言葉を続ける。

「俺たちは実技授業で初めてテメェ等に敗けたあの日から努力を積み重ねてきた……。 数々の修羅場も潜り抜けてきた」

 そして! とギルバートは両手を広げる。

「同調率は遂に一〇〇パーセントを達した!」

 この意味が解るか? とレオンとミシェルに問いかける。

 しかし、彼らは答えなかった。

 そんな態度が気に食わなかったのか、ギルバートは軽く舌打ちをして「良いぜ、教えてやるよ」と怒りで声を震わせながら拳を強く握り締めた。

「この俺たちが世界で一番、強いってことなんだよ!」

「これより、ギルバート、アルバートコンビ対レオン、ミシェルコンビの試合を始める。 両者構えて」

 審判の言葉と共に、全員戦闘態勢に入る。

 それと同時に会場全体は静まり返った……。

 今、決勝戦が始まる……!

「始め!」

 戦いの火蓋が切って落とされた。

「『同調』!」

 二組はほぼ同時に同調する。

「サンダー・アロー!」

「ダーク・アロー」

 雷の矢と、闇の矢が衝突し、爆発が起きて煙が上がる。

 ギルバートとアルバートの同調体は煙の中から一気に距離を詰め、電流を纏った拳や蹴りを振るってくる。

 レオンとミシェルの同調体はそれをかわしながら魔法で応戦する。

「どうした!? その程度か!」

 勢いのある双子の同調体の攻撃にレオンとミシェルの同調体は顔色変える事無くかわしては反撃する。

 凄ぇ……。

 これが同調率一〇〇パーセント同士の戦い……!

 次元が違い過ぎる……。

 彼らの戦いぶりに観客席に座る生徒や教員、一般客は手に汗を握りながら固唾を呑み込む。

「レオンさん、ミシェルさん……」

 観客席でレオンとミシェルを不安そうに見守るフィリップ。

「大丈夫、アイツ等ならきっと勝てる」

 隣で座るパートナーのジョニーが不安を和らげる様にそう口にした。

「私たちを倒した人たちですからね」とアンナが微笑みながら言った。

「き、きっと大丈夫……、ですよ……。 多分……」と半信半疑にケイシーは目を泳がせる。

「サンダー・アロー!」

「ライト・シールド!」

 迫りくる雷の矢を光の盾で防ぐレオンとミシェルの同調体。

 その間にギルバートとアルバートの同調体は距離を詰めて「雷拳!」と電流を纏った拳を振るうが華麗にかわされる。

「ちょこまかと逃げてんじゃねぇよ!」

 次々と攻撃を避けていくレオンとミシェルの同調体に嫌気が差したのか、遂には文句を吐き出し始めた双子の同調体。

 そんな彼らを見て、レオンとミシェルの同調体は思い出したかのように口を開いた。

「何でお前は弱い奴らをイジメるんだ?」

「あ?」

「弱い奴をイジメて何になるんだ?」

 同調している状態のレオンの問いに、双子の同調体は「弱いヤツを見ているとイライラすんだよ……!」口元を歪めた。

「ギルバート、お前、二年前まではとても優しい人間だったらしいじゃないか?」

「五月蠅ぇ……」

「正義感に溢れたクラスの人気者だったそうだな?」

「黙れ……」

「だが二年前の事件からお前は変わってしまった」

「五月蠅ぇ、五月蠅ぇ、五月蠅ぇ! テメェに何が解るんだ!?」

 サンダー・ランス! と双子の同調体は雷の槍を精製してレオンとミシェルの同調体に放った。

 レオンとミシェルの同調体は闇の盾を精製して難なく防ぐ。

「弱いヤツはなぁっ! ずっと家で引き籠ってりゃいいんだよっ!」

 双子の同調体はそう言って身体に電流を纏いながら攻撃を仕掛けていく。

「お前、母親を守れなかった自分と弱いヤツらを重ねているだろ?」

 その瞬間、ピタリとギルバートとアルバートの同調体の攻撃が止まった。

 それを機にレオンとミシェルの同調体は「図星か」と握り締めた拳をギルバートとアルバートの頬に殴りつけた。

 強い衝撃により、双子の同調体は後方へと吹き飛び、仰向けになって地面に倒れる。

「正義感の強いお前の事だ。 守れなかった自分が許せなくて、でもどうしようもなくてイラついていた。 そうだろう?」

 悟った様に言ってくるレオンとミシェルの同調体にまるで説教されている感覚を覚え、悔しさ生じて双子の同調体は強く口を噛みしめて勢いよく立ち上がった。

「憎かった……」

 同調している状態のギルバートがゆっくりと口を開いた。

「目の前で死んでいく母親の姿をただ黙って見る事しか出来なかった自分が赦せなかった……!」

 次第に双子の同調体の表情が怒りで歪んでいく。

「そこらで両親と手を繋いで笑いながら道端を歩いている家族が羨ましくて堪らなかった……! あの日、外に出かけなければあんなことが起こらずに済んだのか? って、何度も何度も頭の中が渦巻いて仕方がないんだ……!」

 仕方ねぇんだよぉ……! と終いには涙を流すギルバートとアルバートの同調体。

「だから、弱いヤツらに手を出すのか?」

 レオンとミシェルの問いが癇に障ったのか、双子の同調体は目にも留まらぬ速さで距離を詰めて電流を纏った拳を振るう。

 しかし、レオンとミシェルの同調体はクロスカウンターの形でギルバートとアルバートの同調体を殴り飛ばした。

 驚愕を顔に浮かべながら地面に腰を落としている双子の同調体にレオンは言った。

「この際だからはっきり言わせて貰うな。 ふざけるなよ、馬鹿野郎!」

 レオンは言葉を続ける。

「お前の気持ちは解らなくもない。 だからって八つ当たりをして良い理由にはならない」

「五月蠅ぇ! アルから話を聴いただけで俺たちの事を解った気になってんじゃねぇよ!」

 ギルバートとアルバートの同調体は力強く立ち上がり、これから獲物を狩りに行く獣の様な瞳でレオンとミシェルの同調体に睨みつけた。

「テメェ等に良いものを見せてやるよ……!」

 双子の同調体は電気をパチパチと放電させながら言った。

「魔装!」

 刹那、ギルバートとアルバートの同調体は強い雷と風に包まれた。

 すると、背中には雷神の太鼓の様な電気と、風神の袋の様な風が纏われていた。

 魔装だって!? と同調状態のミシェルが驚愕する。

 観客席に座る生徒や教員たちも双子の同調体の芸当に驚きを隠せないでいた。

 やはりその域まで達していたか。 とレオンは顔色変えずに魔装をしているギルバートとアルバートの同調体を見た。

『魔装』それは属性の魔力を身体に纏うと言う極シンプルな魔法であるが、その難易度は高く、高等部の人間でも使える者は僅かしかいない。

 それを一二歳の少年がやっているのだ。

 ざわつく観客たちの視線にギルバートとアルバートの同調体は不気味な笑みを浮かべながらゆっくりと口を開いた。

「これより蹂躙を開始する……!」

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