僕の目に映るエクラ
逢湊朶 しろ
【 序章】
暗闇に覆われた空から降り注ぐ雨が激しく地面を叩いている。
静寂と呼ぶにはあまりにも遠く、むしろ耳障りなくらいだ。
雨の影響なのか街は人の気配が少なく、行き交う車ですら疎らである。
そこまで田舎という訳では無いが、都会と呼ぶには些か迷うところ。
こんな夜遅くに、まして一本入った住宅街ともなると雨でなくとも孤独感に苛まれる状況だろう。
そんな中、僕は地面に突っ伏していた。
もちろん好きでこんな体勢になっているのではない。
普通に考えればここはすぐにでも立ち上がって傘を差し、カバンの中からタオルを出して身体を拭くべきなのだろう。
雨に濡れているカバンの中のタオルが無事だとはとても思えないが…
しかし僕はこれらの事を考えるより先にこう口にした。
「早く……行かないと……約束が……」
僕の声は雨音によって飲み込まれ、また僕自身も暗闇に飲み込まれていった。
遠くで鈴の音が聞こえた気がした。
「運命にはやっぱり……逆らえないのね…」
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