Round Around

常磐かがみもち

00.headache

 宇宙への憧れは尽きない。宇宙そのものへの悪魔的な魅力然り、まだ見ぬ惑星、未知との遭遇などなど。昔の偉い人曰く、宇宙は心踊る何かが詰まった風船らしい。

 それはそうと、風船ならいつかは破裂するんだろうか。


 宇宙に行くための手段を考えた。コウちゃんはロケットなどと言い出すので訂正した。ロケットは惑星への渡航を目的とする乗り物だ。宇宙を旅するのは宇宙船の類いで、その中でも一番格好いいのは矢張ユーフォーだろう。

 形状は揉めたが、一般的にイメージされるユーフォー、釣り鐘を平皿に乗せたような"アダムスキー型"と呼ばれるタイプは好かないと頑として譲らなかった。

 結局、ユウちゃんはいつもそうだよねとコウちゃんが折れる形で球型というボールのようなかたちの、当たり障りの無いタイプに着地した。とは言っても、僕が最初に提案した三角型は、住みづらい価格が高い操縦しづらいの三拍子による猛攻撃を受けてあえなく墜落したので、僕の意見が完全に押し通されたわけではないんだけど。

「これはこれで」

 コウちゃんが図案を見て言う。

「旅行って、行くまでが楽しいんだよねぇ」

 置いてくぞ。実際、どこに行くか、どういうルートで何を見て何を買って何を食べ、どこに泊まるかなど、通常の旅行であれば考えることは尽きず、楽しいのかもしれないが、今僕たちが考えているのはまさに命綱についてなのだからそんな甘い考えで云々。旅行プラン立てるのは楽しいよね。


 流石に建造となると素人には難しすぎるので業者に依頼した。近頃は自らのすみかを飛び出すのも、存外手頃な価格であるのだなと感心した。宇宙旅行を希望する人は多いのだろうか。先を越されてしまうと完全なる未知の冒険ではなくなってしまうので、多くないと嬉しい。

 そんなことを考えながら、通された部屋に置いてあったロケットのカタログを見ている。

「ロケットの依頼は最近多いんだけど、ユーフォーってのは珍しいな」

 担当のおじさんはちょっと苦笑いしていた気がする。確かにロケットは色んな種類があるみたいだし、色や内装を自由にできるオプションなどもあった。

 僕たちのユーフォーは全部オーダーメイド。そりゃそうだ。完成まで少しかかるって。

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