かけてみた

「カカカカカ! ここを通り魔王城に辿り着きたいのならば、手下であるオレを倒してみな」

「うっわ、したっぱ来たよ」

 見た目が人じゃない……。正直キモイんだけど……。

「な、なんだと! オレは魔王軍幹部のひとりだ!」

「うわやば、スマホ充電切れそ。ってかここら辺、ポケスポット全くないんですけど。田舎かよ」

「おい」

「おなかすいたしおにぎり食べよ。ってか、この世界にも米あんのね」

「おい」

「やっぱいつもより美味いわ。すげぇ」

「いい加減にしろ……! この俺を差し置いて腹ごしらえだぁ……!?」

「はぁ? ごはん大事でしょ。そういうところはしっかりしてるからね、あたし」

 炭水化物ダイエット。食べないと逆に太るし。ストレスはお肌にも悪いし。

「ええい、もう待たんぞ!」

 人外はどこからともなく魔導書っぽいものを取り出して、なんかブツブツ言い始めた。

「深淵より解き放たれし我が……」

「うわキッツ。その歳でそれはキッツ」

 中学の時いたわこういうの。

 空が黒くなってきた。はー、さすが魔法。

 するとドカーンとかバリバリとか音を立てながら、周りの木々がなぎ倒され始めたマジウケるけど森林伐採はよくないと思うわ。

「ハハハハハ!! どうだ!! 重力魔法で貴様も一瞬でぐちゃぐちゃになって……いないだと!?」

「え、なに、そういう感じだったの。じゃああれか、水素水で炊いた米で作ったおにぎり食ってるから効いてないのか!」

「何を意味不明なことを!」

 なんか食べるとどんどん痩せてる気がするし、マジぱねぇ、水素水ぱねぇっす。

「くそっ! くそっ! なぜ効かない!」

「ほー、魔法も防げるってことは、こうしたらどうなるんだろ」

 あたしはさらに1本ペットボトルを取り出すと、フタを開けて人外に思いっきりぶっかけた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 人外はナメクジ、いや藤○竜也みたいに溶けていった。

「さーて、そろそろ行くかぁ」

「ま、待て……」

「ん?」

「1つだけ聞かせろ……。貴様の手にしているもの、それは聖水の類か……?」

「んいや」

「そんなはずはない。生身の人間が俺の重力魔法をくらって立っていられるはずが……」

「ふっ、冥土の土産だ。教えてやろう」

 一呼吸おいて、あたしは言った。

「これは、水素水だよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る