振ってみた

 水素水スゴすぎるだろ。勇者になっちゃったよ。

 おっさん情報だとなんかめっちゃ強い魔王がいるらしいけど、負ける気がしないわ。

 しかもパワーアップの時間制限とかないっぽいし水素水ヤバいわ。

「ミウナ様。国王がお呼びです」

「くっそ、ここツ○ッターにインできねーし。ビジネスホテル以下か、ないわ」

「ミウナ様……」

「はいはい王様ね。どーせ話してもWi-Fi設置とか無理っしょ」

「は、はぁ……」

「あっ、水素水使えばよくね!」

 あたしは箱からペットボトルを取り出して左手で握りながら右手でスマホをいじってみた。

 電波受信のアンテナマークが3本立っていた。

「はいー、キターキター」

 サインインを済ませて、とりあえず「水素水すげぇわwww」とつぶやいた。

 そのあと王様に会いに行っていろいろ話したけどカット。水素水飲んでないし。

 なんか「1万年に一度の~」とか言ってたけどよーわからん。

 で、とりあえず今魔王討伐の軍勢を送ってるから合流しろとか言われた。めんど。というわけで水入ってる箱を持って出発。マジ水スゲーわ。

 険しい山の中を乗り心地の悪い馬車に乗って進んでると新しいおっさんが出てきた。

「おい貴様、どこへ向かうつもりだ」

「おっさんばっかか。少子高齢化ってやつ?」

「無礼なやつめ。まさか魔王討伐に向かうのではあるまいな」

「あーそれそれ」

「んなっ! 貴様のような華奢な体で魔王に立ち向かおうと? ハハハハッ! おっと、これは失敬。とはいえ、王国も落ちぶれたものだな」

 なんか煽られてる気がするんですけど。

「いや、マジないわ。おっさんモテないわ」

「なんだと? 礼儀を知らぬ愚か者め。たとえ女とはいえここまでコケにされては私も黙ってはいられないな」

 おっさん2は剣を抜いた。あっぶな。

 そろそろめんどくさくなってきたので、あたしも懐から水を取り出した。

「ハァーッ!!」

 おっさん2は剣を大きく振り上げ跳びかかってきた。思ったより早かったからフタ開ける時間がなかった。

「は、ハァーッ!!」

 何となく真似てみた。んであたしは水素水のペットボトルで応戦した。

 ガキン! ガキン!と山に響き渡るその音は、さながら宮本武蔵と……誰か忘れたけどそんな感じの対決っぽかった。

「くそっ! どうなっている!?」

「そろそろ、決着をつけようか」

 ちょっとノッてきたので決め台詞とか言ってみる。あたしカッコイイ、ちょーウケる。

 あたしはおっさんに水素水の脚力で駆け寄ると、水素水のペットボトルを心臓に突き立てた。

「む、無念だ……」

 おっさんは「魔王城はあっちだよ」って言いながら沈んでいった。いいおっさんだった。

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