第2話 願い石



 昼間。

 私室にて、暇を持て余していたアスウェルの元に、休憩時間中の使用人の少女が やってきた。今日はカチューシャをしているようだった。


「アスウェルさんは、願い石って知ってますか」

「役に立つ知識か」

「知らないんですね」


 ベッドに腰かけるアスウェル。

 その前で何故か正座しているレミィが、願い石とやらの説明を始める。


「アスウェルさんは旅人さんですしね。願い石っていうのはウンディで流行っている、特別な石の名前なんです」


 レミィ曰く、その石を持っていると、小さな幸せが運ばれてくるらしい。

 具体的には洗濯物が乾くのが少しだけ速くなったり、

 炒めものの火の通りがよくなったり、

 ……らしい。


「ということですごい石なんです。私も持ってるんですよ」


 と、レミィは自慢げに親指の爪ほどの、透き通った緑の石を見せてくる。


「好きな色を持っているといいらしいんです」


 ということは、レミィの好みは緑ということか。

 カチューシャも、首元のリボンも緑であるので容易にその想像はついたが。


「きっと良い事がありますよ」


 楽しそうにしているレミィ。

 アスウェルはそれに対する正直な気持ちをそのまま伝えた。


「それは気のせいだ」



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