045「 妖精さん、豚人間の進化前を知る」
地下室から次々と、戦意に溢れるハムスターマンが出てきた。
ドンと同じ記憶を持った個体が、空中にいるシルバーを激しく睨みつけ、叫ぶ。
「ふざけるんじゃないのぜぇぇぇぇ!!
俺達が何をしたというのぜぇぇぇぇ!!
人間様に歯向かって、ただで済むと思っているのぜぇぇぇぇ!!
今すぐ自害して、殺した同胞に謝罪して地獄に行くのぜぇぇぇぇぇ!!!」
『妖精さん、小声で詠唱している奴らがいますぞ』
『あらやだ、この長は囮だわ!』
シルバーは容赦なく、自動拳銃の銃口を、ドンの頭に向け、引き金を引いた。
乾いた銃声が響き、ドンの頭に穴が開く。
更に破片手榴弾を3個投擲して、ハムスターマンを6匹ほどに致命傷を与える。
『妖精さん、近距離武器で無双している件』
『拳銃で狙撃している時点で、手馴れているにも程がある件』
『豚人間と殺し合いやりすぎて、名ガンマンになってしまったのだな……うむ』
醜い生態を持つ人間(ハムスターマン)を皆殺しにする気満々なシルバー。
ネットの皆に『虐殺行為』の言い訳をするために、地上を蠢く連中に冷たく言い放つ。
「おい、魔法の詠唱をこっそりするのやめろよ。
交渉の場で喧嘩売られたら、買わないといけない立場なんだからさ。
死にたくなかったら、俺の質問だけに答えろ。
動けば殺す、喋れば殺す、逃げても殺――」
『まだ、こっそり詠唱している奴らがたくさんいる件』
ショタ妖精は、ネット通販から破片手榴弾を購入して、何度も投げつける。
また、ハムスターマンが10匹単位で死んだ。もう、残り60匹ほどしか生き残っていない。
「喋るな、詠唱するなと言ったはずだ。
お願いだから、黙ってくれ……ん?」
シルバーは違和感に気づく。
そこに、ハムスターマン達が、言い争っている現場があった。
「長たちぃー!やめるのぜー!
その呪文を詠唱したら!今度こそ世界が滅びるのぜぇー!」
「うるさいのぜぇー!
もう!これしか生き残る手段がないのぜぇー!」
『同士討ち?』
『こんな状況で内部分裂とかwwww親から記憶を継承した意味がないwwww』
手に槍を持ったハムスターマン達が、長の記憶を持つ連中を追い掛け回している。
どうやら、同胞同士で一生懸命、殺し合っているようだ。
外見から区別は付かないが、口調とやり取りでシルバーは、そう理解した。
「長はすぐに死ねぇー!先史文明と同じ過ちを犯す気なのぜぇー!?」
銃弾が勿体無いと思ったシルバーは、見物に徹する。
魔法はある程度、距離を取れば怖くはない。
労力を払わずに、勝手に奴らが殺し合ってくれるのは、好都合だ。
そうやって、ゆったり構えていると、ネットの皆から貴重な警告がやってくる。
『妖精さん、あいつらのセリフ聞いて不安に思わないのか?』
「え?」
『先史文明が、具体的にどういう文明なのかは知らないが……恐らく、核ミサイルを持った人類より科学技術は発展していたはずだ。
妖精さんを構成する細胞だけで、その片鱗が伺えるほどにな』
「あ……っ!」
『奴らは、先史文明を滅ぼした何かをやろうとしている。私にはそう見えるのだが……?』
シルバーは、とんでもないピンチだと気づかされた。
しかし、ショタ妖精が、事態に気づいた時にはもう遅い。
長の記憶を持つ個体、その内の1匹が、全身を槍で刺されながらも詠唱を完了してしまった。
その魔法の名は、日本語名で【全魔力放出】
魔力とは運。運を全て一気に消費したハムスターマンが、どのようなやばい存在になるのか、一般常識だったが故に、シルバーは知らなかった。
「だんて・だんて・だんてぇー!ダァンデェェェェ!!」
長の身体が内側から弾け飛ぶ。
膨大な不幸エネルギーが発生し、細胞を変容。
ハムスターらしい毛皮が、一つ残らず飛び散り、内側から紅い肌が出てくる。
槍で負った傷は、傷口ごと爆発して、新しい臓器と身体が生える。
古くなった手足や目玉が、新品の身体に押されるように、地面へと転がり落ちる。
『なんか見た事ある化け物だお……』
『魔法少女の変身シーンだったら嬉しいのだが……これはグロくて誰得だな……』
『妖精さん!今すぐ変身よ!THE 男の娘』
周りにいるハムスターマンは、元『長』にトドメを刺そうと槍を構え直し、目の前の化け物を刺そうとする。
だが、長の体に触れる前に、ハムスターマン達の肉体が爆発する。
膨大なエネルギーの塊に踏み潰されて、紅いひき肉と化す。
持っていた槍も圧力のせいで、綺麗に平らになり、薄く広がった銀色が太陽光を反射する。
そんな意味不明すぎる殺害方法。それをやった張本人は――
「ガハハハハハ!爽快な気分なのぜぇぇぇぇぇ!!
今なら何でもできそうな気がするのぜぇぇぇぇぇ!!!
俺は先史文明を超越した!最強の戦士になったのぜぇぇぇぇ!!
ドン帝国の始まりなのぜぇぇぇぇ!!!」
豚人間と化した長……ドンだ。しかも殺傷能力の高い能力を持つ『無幻』。
ドン引きしたシルバーは、思わず、問いかけてしまう。
「なぁ……お前、本当にドンなのか?」
返事は返ってこない。ドンは頭を両手で抱えて苦しそうにしている。
「俺はドンなのぜ……?村の長の複製個体……?
ドン……?複製……?
ブヒッ?ブヒィ?」
『頭が可笑しくなった?』
『そりゃ全くちがう種族になったんだから、精神が狂うわな』
まだ20匹ほど生き残っているハムスターマン達は、そんなドンの様子を見て、最後の賭けに出た。
近づけば一瞬で殺されるから、30mほど離れた場所から呼びかけを行う。
記憶が残っている今なら――自害の可能性がある。000.2%ほど可能性がたっぷり残っている。
「お、長!正気を失う前に自害するのぜ!」 「そうなのぜ!死ぬべきなのぜ!」
「俺は……俺は……」
「正気があるなら!今すぐ自害するのぜ!
豚人間になるのは禁忌なのぜ!」
「早く自害するのぜぇぇぇぇ!!」
「禁忌を犯したら死ぬ!それが掟なのぜ!」
必死なハムスターマン達の酷すぎる呼びかけ――その成果は――
「俺はっ……!俺はっ……!
豚人間ブヒィィィ!!
美少女はどこブヒィィ!!可愛い美少女ぉぉぉー!
合体したいぃぃぃぃブヒィー!!!
俺は美少女を孕ませるために産まれてきたブヒィィィィ!!
喧嘩を売ってきた鼠どもは皆殺しブヒィィィ!!!」
ドンは、普通の豚人間に成り果てていた。性欲旺盛に欲情して、エロい事しか考えていない。
説得が無駄だと理解したハムスターマン達は、すぐに村から逃げ出そうとする。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!長が豚になったぁぁぁぁぁ!!」
「逃げるんだぜぇぇぇぇ!!」
「この村はもう駄目なのぜぇぇぇぇ!!」
次の瞬間、ドンが近づいても居ないのに、ハムスターマン達は体中の穴という穴から血を噴き出して、圧縮されて死んでいた。
シルバーはやばいと感じて、空高く上昇する。
地上にいる『夢幻』は、明らかに広範囲の生物を殺傷できる怪物だ。どこまでその効果が及ぶのか検討もつかない。
『妖精さんー!逃げてぇー!』
『いや、近くにお嫁さんがいるから逃げちゃ駄目だろ……』
その言葉に、ショタ妖精の上空への上昇が止まる。村のすぐ近くにプラチナが居て、当然、亜人の女の子が何人もいる。
このままシルバーが現場から離脱したら、全員、子種で子種を洗う陵辱を受ける事は確実だ。
幸い、シルバーは女の子だと勘違いされやすい、可愛いショタ、若い容姿。
これだけ揃えば、豚人間は必ず舐めプ戦闘を行ってくれる。
故にシルバーは地上を見て、ドンの弱点を探すべく、じっくり睨む。
だが、残念な事に――生き残ったハムスターマンは、たった1匹だ。
能力を観察するための実験台としては少なすぎた。しかも、殺される直前だ。
「鼠には興味がないブヒィー!
女はどこにいるブヒィィィィ!!!
早く持ってくるブヒィィー!」
「お、女なら、あっちにたくさんいるのぜ!」
もちろん、ハムスターマンが指し示したのは――ハムスターが大量に実っている木々だ。
ドンが気持ち悪そうな顔で、木を見て――激怒する。
「ふざけるんじゃないブヒィー!
気持ち悪い木なんてこうブヒィー!
女がいない村に価値はないブヒィー!」
一瞬にして、廃墟と化した村にエネルギーが集まる。主観的に一気に爆発した。。
燃料気化爆弾でも使ったかのような膨大なエネルギーが炸裂し、村のハムスターマンはこうして1匹も残らず消えていなくなった。
場に残るは、球形上のクレーター。その真ん中で、豚人間が残虐に笑っている。
もう世界観が違うと言ってもいい、そんな強さだ。
『妖精さん勝てる?』
『さすがに……舐めプ戦闘してもらっても……無理じゃないだろうか……?』
シルバーがここで逃げたら、空を飛べないプラチナが徹底的に陵辱されて、豚の子供を孕むだろう。
エルフィンも、また性奴隷として扱われて、白濁な液体を浴びる日々になる事になる。
ミカドワだって、小さくて可愛いから、慰みものにされて、職人として生きられなくなる。
絶対に負けられない戦いだ。
勝利する以外に、シルバーには生き残る道がない。
嫁を見捨てた人間に、ネットマネーを寄付してくれる地球人がいるはずもないのだ。
「ブヒィー!
美少女はどこブヒィー!
俺のビッグマグナムがビンビンぶひぃー!」
『豚人間の名前の由来って……まさか、人間(ハムスターマン)が豚になるせいだお?』
『そのまんまなネーミングだったのだな……どおして豚人間なのか、ようやく理解させられたぞ……』
『というか、この部下、先史文明滅ぼせる性能あるん?』
『つまり妖精さんは……全世界と戦って勝利するのと同じ偉業を達成しないといけない……?』
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豚人間(´・ω・`)なんと、地球を真っ二つにする、リアル地球割りができます!
妖精さん(´・ω・`)そんなー!?
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