043「 妖精さん、人間の生態に嫌悪感を抱く」

一時間の時を費やした。

だが、シルバーと、ハムスターマンとの間に、妥協点は一つも見つからなかった。

圧倒的に優位なのは、制空権を得たシルバーのはずなのに、なぜか彼らは強硬姿勢を貫いている。

疑問を抱いたショタ妖精は、地上でドヤ顔で笑っているドンに問いかけた。


「なぁ……俺、空を飛べるんだが?

お前らは、どうして怖くないんだ?

一方的に俺はお前らを攻撃できるんだぞ?

地雷と、骸骨で二重包囲しているのに、なんで降伏しないんだ?」


「へへへへへ!

それがどうしたのぜ?

俺達は魔法を使えるのぜ?

偉大なる先史文明の継承者なのぜ?

お前が空を飛んでいても、俺が魔法を唱えれば、簡単に殺せるのぜ?

その点をわかっているのぜ?

どうなのぜ?完璧な反論に何も言えないのぜ?」


『こんな辺鄙な村にいる魔法使いwwww』

『なんかしょぼそうwwww』


「……え、まじで?

というか、魔法を使えるのか?

『夢幻』と何が違うんだ?」


「俺達、人間様はっ!生まれた時に親から記憶の一部を引き継ぐのぜ!

偉大なる先史文明の血を引く俺達はっ!

古来から伝わる最強すぎる魔法をっ!使えるという証なのぜ!

亜人が下等な理由が分かったのぜ?

お前たちは、親から記憶も引き継がない。子供に記憶をプレゼントもできない。

無駄に長生きしているだけが取り柄のゴミ種族なのぜ!」


「いや、不老で長生きって最高だろ……。

知らない事は学習すれば良いし。

この身体、無駄に高性能なんだぞ?」


「もうこれ以上の対話は無駄なのぜ!」


「さっきから、他の連中が呟いている言葉って、詠唱か何かなのか?」


『妖精さん、相変わらず、マイペースでござる』

『このショタ、交渉人としては優れているような……?』


「ちっ!ばれたのぜ!

こうなったらっ!あの世に送ってやるのぜ!」


どうやら、交渉は完全に決裂したようだ。

ドンと対話している間に、呪文らしきものを唱えていたハムスターマンが数十匹いる。

反射的にシルバーは手に持っている拡声器を投げ捨てて、ホルスターから、自動拳銃を出して、連射した。

乾いた音とともに、銃弾がハムスターマンの肉体を貫き、殺す。

全弾を打ち終わった後は、破片手榴弾を放り投げて、地上で爆発。高速で飛び回る破片が、ハムスターマン達を、ハリネズミみたいな外見にして、ただの肉塊へと変えた。


『妖精さんwwww反射的に射殺すんなwwwww』

『うむ……皆が予想するように……やはり、虐殺ルートという事か……。

紛争の解決は難しいな……』


ついでにドンも破片手榴弾に巻き込まれ、出血多量死している。

しかし、不思議な事に、すぐさま、ドンと似たようなドヤ顔のハムスターマンが叫んでいた。

それも1匹じゃない。10匹同時だ。


「「今、やられたのは、長のコピーの一つに過ぎないのぜ!

魔法で殺してやるのぜぇー!」」


「はっ?」


シルバーは、意味不明な事態に呆然とした。

だが、手だけは動いて、次々とネット通販から、手当たり次第、安い順に購入した爆弾を投げて投げまくる。

毒ガス手榴弾、破片手榴弾、ホモ爆弾、ありとあらゆる爆弾が、ハムスターマンに炸裂するが、彼らの戦意は全く衰えない。

まるで、ナポレオンが率いるフランス大陸軍みたいな、無駄に戦意が熱い軍隊のようだ。


(あ、そうか)


ようやく、シルバーは気が付いた。

ハムスターマンは『親から記憶を継承している』

つまり、安定した品質の兵士を、大量生産できる種族なのだ。

この化け物種族相手に、シルバーは優勢なのは、相手の攻撃が届かない位置から、爆弾を落としているおかげである。


『殺しても殺しても、歯向かってくる件』

『うむ……損害度外視で戦える時点で強敵だな……』

『クローン兵だ、SFっぽくてワクワクするぞ!』


「人間様の偉大なる魔法を見せてやるのぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」


ハムスターマン達は、ひたすら詠唱を続ける。でも、魔法を使った個体は、未だにゼロだ。


『詠唱が長い!?』

『魔法がすごくても、これじゃ意味がない!?』


どう見ても、ハムスターマンが使う魔法は、実践向けではない。

だから、シルバーは、戦闘中にも関わらず、ツッコミを入れてしまった。


「なぁ、魔法を使うのに、どれくらいかかるんだ?」


「言う訳ないのぜ?」「10分後にはお前は火ダルマなのぜ!」

「俺らの慈悲に感謝するのぜ!不幸エネルギーが発生しないように頑張っているのぜ!」


『ちょwwww時間かかりすぎwwww』

『明らかにwwww機械とかwww何かの補助ないと実戦に使えんだろwwww』

『不幸エネルギーって何wwwwww?』


このまま、戦いが長引けば、火ダルマにされる。

その可能性を知ったシルバーは、さっさと決着する道を選んだ。


「……これから村の一部を爆破するぞー!

5秒以内に降伏すれば、レンタル料金が3倍程度で済むぞー!」


叫びながら、シルバーは爆破しても良さそうな設備を見る。

家屋は大火事になりそうだ。

ならば残るのは――ハムスターが大量に実った気持ち悪い木。

これなら良心の呵責なく、爆破できそうだ。

ネット通販で、細長い棒状のダイナマイトを購入。

それを地上めがけて放り投げる。地面へと落ちる。

シルバーは銃口の先に、ダイナマイトを見据え、銃弾をプレゼント。

見事にダイナマイトを構成するニトログリセリンに着火。数十本の木々と、5件の家屋を吹き飛ばす大爆発を引き起こす。

もちろんハムスターマンも100匹単位で巻き添えだ。爆風的な意味で。


『このショタ、全く容赦がないお』

『虐殺に慣れてしまっているな……できれば、妖精さんの凶刃が、亜人達に向かなければいいのだが……』


これで戦いは終わった。シルバーはそう確信した。

だが、ハムスターマン達の戦意は衰えるどころか、ますます燃え広がっている。

怒りを戦意へと変え、ドンと同じ記憶を持つハムスターマンが叫び声をあげた。


「ふざけるんじゃないのえぇぇぇえぇぇぇ!!!

よくも生産奴隷を虐殺したのぜぇぇぇぇ!!!

これは膨大な賠償を要求しないと気がすまないのぜぇぇぇぇぇ!!

さっさと自害するのぜぇぇぇぇぇ!!!人間様に歯向かって危害を加えるのはっ!下等生物には絶対に許されない禁忌なのぜぇぇぇ!!」


「え?」


『一体、どういう事なんだ!?』

『うむ……なんいうべきか……妖精さんが爆破したのは、ハムスターがたくさん成っている木だったな……』

『ちょwwww未来世界で人間扱いされている奴らwwww植物になれるのかよwwwww』


今まで、その可能性を全く考慮してなかった。

そう、目の前にいるハムスターマンの生態は――植物と動物の両方を良いとこ取りした、ありえない化け物だったのだ。

自然の進化ではありえない繁殖方法である。


「……ハムスターマンの女は、植物なのか、そうなのか。

な、なんだってー!?」


「『人間様』と呼ぶのぜ!

下等生物が、人間様に勝手な呼び名をつけるんじゃないのぜ!」




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戦闘にかかる雑費は、後で、大雑把なにまとめて計算


ダイナマイト(´・ω・`)強力な爆弾だお。

工事に用いられる便利な爆弾ですそ。


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