031「妖精さん、遺伝子を検査する」3章おしまい
太陽が天高く昇った。未来世界でも、太陽は相変わらず、営業活動をしているのだなと、シルバーは感慨深く思った。
「……寝れなかった」
『妖精さんがハーレムベットしたせいで、俺らも徹夜してしまった件!』
『プラチナたんの寝顔は、最高に可愛かったお。縞々パンティーがたまらんお』
『エルフィンたんは可愛いお。オッパイがロマンたっぷりだお』
「お前ら、五月蝿すぎるだろ……。
少しは遠慮しろよ……おかげでエッチィ雰囲気になれないだろ……」
体が若いせいか、夜更しをしても、特に疲労感を感じないシルバーは、窓から外の景色を眺めた。
農民の朝は早い。朝の冷たい空気とともに家を出て、畑仕事に向かう領民達の姿を見かける。
村を24時間、巡回する骸骨戦士達が、勤労労働者すぎて、感動すら覚えた。
そんな牧歌的な光景を眺めるショタ妖精に、ネットの皆が――
『寝れないなら、、顕微鏡で細胞を調べてみないかお?1万円寄付するお?』
『亜人が、人間の子孫なら、染色体の数は23対のはずだ。とっても気になる。
俺は三千円寄付しよう』
『うむ、私も……興味があるな……。
五千円ほど寄付させて頂くとするか……』
『エルフィンたんの寝顔が良かったから、1万円あげるお』
ネットの皆の善意やエロ目的の寄付で、異世界生活が成り立っている以上、シルバーには拒否する選択肢はない。
嫁達のオッパイ包囲網から抜け出し、ネット通販の青い画面を出す。
『顕微鏡』で検索して、安くて性能が高そうなのを探した。すると数千円の顕微鏡があった。
すぐに購入しようとすると――
『待て!妖精さん!それは玩具用の顕微鏡だ!』
『性能の良い奴は、数十万円するお』
『この13万円の顕微鏡はどうだろうか?私もよく使うが、中々に良い性能なのだが……?』
顕微鏡が、意外と値段が高い器具だと、シルバーは思い知らされた。
学生用の顕微鏡ですら、2万円~5万円ほどする。
安い事で有名な中国製でも、プロ用のは10万円ほどする。
今のシルバーには、金銭的に辛すぎた。今まで無駄に散財してしまっただけに。
「……寄付金が足りないなぁ。
ここで顕微鏡を購入すると、豚人間の討伐に支障が出るかもしれん」
『エルフィンたんに、黄色と白の縞々パンティーをプレゼントしたら、1万円出すお!』
『もっと、エルフ娘とイチャイチャしてくれたら、2万円出す!』
『うむ……紐パンはどうだろうか……?五千円追加で出そう』
寄付金はすぐに集まった。
エロは異世界でも、偉大だった。
~~~~~~
13万円の顕微鏡を購入したシルバーは、一通り、扱い方の説明を、ネットの皆から受けた後、自身の表皮を採取した。
細胞は、染色で染めないと、ほとんど見えないから、赤色の染色で染め上げ、細胞を生きた状態で停止させるために、固定と呼ばれる作業を行った。
あとは、顕微鏡のレンズの拡大倍率を上げて、一つの細胞をじっくり観察すれば良い。
まずは40倍の倍率。次に100倍の倍率――この時点で、400個以上の細胞がシルバーの視野に収まる。
さらに倍率を上げて400倍――体細胞が、クッキリ、見えた。
「あれ……?」
『どうだったお?』
『恐らく……ここまで人間に近い外見なのだから、結果は簡単に想像できるな……。
まぁ、空を飛べる時点で、可笑しいのだが……』
「なぁ……細胞って、真ん中に細胞核っていう丸い奴があるはず……だよな?」
『ああ、そうだ。
細胞核が分裂して、細胞がどんどん増える仕様だが、それが何か?』
「俺の細胞核……丸い事は丸いんだが……工場みたいな外見なんだ。
スターウォーズのデス・スターみたいな感じ?」
『惑星破壊できる巨大要塞な外見とかwwww何それすごいwwwww』
『妖精さん、意味がわからん』
『詳細な説明を求めるお』
「普通の細胞核って、ミミズみたいな形に分裂して、細胞をどんどん増やすけど……俺の細胞核。
小さな穴から虫型の機械っぽいものを、大量に出してる。
これって普通なのか?」
ネットの皆は急に黙り込んだ。
それ、動物どころか、植物の細胞だと考えてもありえない構造だからだ。
細胞核は、細胞の中枢であり、細胞内構造物に命令する司令塔であり、生物を構成する設計図の塊。
それが工場みたいな形をしているなんて、ありえないにも程があった。
『妖精さんは、人類の子孫どころか、動物の子孫ですらない件!?』
『もう少し、長く観察するのです!』
「あ、うん。
なんか怖いけど、俺、頑張るよ……」
ホラー映画を見ているような感覚を味わったが、シルバーは観察を続行する。
ネットの皆が飽きないように実況し続けた。
細胞核から、大量の虫型ロボットが出て、それらが細胞内にある設備を修理したり、細胞から飛び出て、隣に新しい細胞核を建造する様子などなどを、述べる。
どうやら、亜人には、染色体は存在しないようだ。代わりに機械化された工場――細胞核(機)とも呼ぶべきものがある。
『ちょwwおまwwwww染色体がないとかwwww
どうやって生物としての多様性を保つ気だよwwww』
『つまり、どういう事だっ……?』
「前……亜人のほとんどが、不老長寿だって、プラチナが言ってた。
老いて死ぬ種族は極僅かだって」
『え?なんだ?』
『どうしたんだ?』
「ほら、細胞って分裂する度に劣化して、テロメアって奴が短くなって、いずれ、限界を迎えて細胞分裂が出来なくなるって、映画でよく言ってるだろ?
クローン人間が出てくるSF映画で、そういう展開をよく見ないか?」
ここまでシルバーが説明した事で、ネットの皆も理解したようだ。
細胞を普通に分裂して増やせば、劣化する。
だが、亜人みたいに細胞を一つ一つ、新しく作る事が可能ならば――
『うむ……細胞を分裂ではなく、毎回新しく作れば……確かに劣化しないな……
なるほど、それが不老の秘密という訳か……』
『超小型ロボットを作れたのにwwww科学文明崩壊した未来世界とかwwwシュールすぎるwwww』
『ロボットはあるのに、備中鍬すらない荒廃した世界だお?』
「プラチナと、エルフィンの細胞も取って、拡大して見てみよう。
ひょっとしたら、妖精だけ……こんな変な細胞なのかもしれないし」
シルバーはそう言って、後ろで眠りこけている嫁達のオッパイから、新鮮な細胞を採取した。
『やだ、このショタ妖精、オッパイ魔王だわ』
『細胞を取るために、オッパイイッパイの刑だな……うむ……羨ましい』
~~~~~
吸血姫とエルフ娘。
結局、どちらの細胞も、細胞の中心を構成するのは――超小型の工場だった。
血液から、恐らく動力源となるエネルギーを採取して、小型ロボットを量産し、新しい細胞を生産し、外敵を排除し、細胞内部の設備を管理する。
亜人は、そんな不思議な細胞で構成された、謎生物だった。
機械人間と言った方が良いかもしれない。
「亜人って、どこから来た生物なんだ……?
小型ロボットって、俺の居た時代じゃ、実現不可能だったろ……?」
ここで、シルバーは思い出す。
ペロペロ党と戦う前。洞窟に入ろうとした時、ネットの皆とした会話を――
~~~~~~
『俺、地球で妖精さんやっているお。
妖精の羽は、魔力の塊だお。
小さくすれば屋内で快適に暮らせるお。
快適ニートライフだお』
「地球にも……妖精がいるのか……?」
~~~~~~
なんと、過去の地球にも妖精さんがいた、そういう事になる。
こんな超科学の結晶体が、21世紀の地球にいるとは思えないシルバーは、恐る恐る、ネットの皆に問いかけた。
「なぁ、お前ら……今、住んでいる時代を言ってくれ。
なんか、凄く悪い予感がする」
『2141年だお』
『2001年だが……どうかしたのか?』
『1988年なのぜ』
『2016年でございます』
「お前ら!?
バラバラの時代からアクセスしているのかよ!?
1988年とか、動画サイトないだろ!?どうやって動画をアップロードしているんだよ!?」
『動画サイトが普通にある時代なのぜ?妖精さんは何を言ってるのぜ?』
「いやいや!?
確かな事は俺も知らないけど、さすがにその時代に動画サイトはありえないだろ!」
『う、うむ……おそらく、色んな並行世界から、アクセスしているのだろうな……』
「え、どういう事?」
『現実の世界は無限に存在するという、物理学の考え方だ。
ラジオの周波数のごとく、色んな宇宙が、無限に存在している可能性があるという』
「……訳が分からん」
『妖精さんがいる世界は、未来世界ではなく……並行世界という可能性もあるという事だ。
厳密には、妖精さんがいる場所は、未来ではなく……違う歴史を辿った地球という可能性がある。
つまり、妖精さんが転生する前の世界に、戻る方法が……あるかもしれない』
3章 おしまい
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顕微鏡13万円
妖精さん(´・ω・`)既に嫁が二人いるから、帰ろうにも帰れない。
ネットの皆(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)読者は、俺らの謎に気がついたかな?
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(´・ω・`)主人公が今まで購入したアイテムは、こっちに全部纏めた。
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Neltuto_tuuhan/Aitemu.html
【小説家になろう】 「俺は砂糖を肥料にして、食虫植物植えて農業チートする!」異世界征服
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